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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

貴重な経験に感謝 RB教える両チームが対戦

2018.6.21 12:26 中村 多聞 なかむら・たもん
試合前に合同練習する、ノジマ相模原と早稲田大学のRB陣=写真提供・早稲田大学ビッグベアーズ
試合前に合同練習する、ノジマ相模原と早稲田大学のRB陣=写真提供・早稲田大学ビッグベアーズ

 

 ノジマ相模原ライズは、パールボウルトーナメント準決勝でIBMビッグブルーに敗れました。

 もしここで負けて決勝に進めない場合は、早稲田大学ビッグベアーズと試合があるという約束があるのは認識していました。

 でも、まさかの中6日でのゲーム開催とは理解していませんでした。「IBMに負けたら早稲田」とは分かっていましたが、負けた時に備えて早稲田用の練習をしてしまうとチームの士気に関わりますので、その準備を本格的にするわけにはいきません。

 

 なおかつ週に2度しか練習できないという時間の制約が大きい社会人チームでは、IBMだけに的を絞る必要がありました。

 結局、早稲田との試合のための練習は一日のみ。それも試合前日ですので、防具をつけずにセットプレーの打ち合わせだけに終わりました。

 

 一方、早稲田の練習ではノジマの戦い方をビデオで研究し、対策を講じる時間と練習が5日間ありました。

 僕は両チームともに攻撃側のコーチですので、相手の守備を粉砕するのが仕事です。

 

 チーム練習の中で「ノジマの攻撃」を止めるための練習をする必要があり、早稲田のメンバーでノジマの攻撃を再現しなければなりません。

 つまりそれは僕らが普段ノジマで練習している攻撃であり、精密な作戦の内容を熟知しているのです。こんな経験は初めてです。

 早稲田の守備コーチやスタッフが試合を見て「ノジマの攻撃スタイルはコレだ!」と練習が組まれているのですが、ノジマの攻撃とちょっと違うのです。

 

 守秘義務がありますので、それを明かすわけにもいきません。チームの一員でなければ知り得ない情報を漏らすわけにはいきませんので、頭の中がゴチャゴチャになってしまいます。

 

 学生日本一と社会人日本一が戦う「ライスボウル」でしか対戦する可能性がなかったカードが練習試合をすることになるとは。

 この週は本当に厄介でした。でも両チームの皆さん紳士で「あっちの作戦はどうなの?」というスパイ行為を依頼してくることはありませんでした。

 

 東京・東伏見での試合当日。コーチの集合時間が早稲田の方が1時間早く、まずそちらに出席。そしてそのあとノジマの集合に。両チームともランニングバック(RB)陣と少し打ち合わせてグラウンドへ向かいました。

 

 チームの方針で少しずつ違うのですが、早稲田の方はコーチ全員が一カ所に集まり本日のゲームプランを共有します。つまり早稲田の守備方法を具体的に説明される訳です。

 これを聞くわけにはいきませんが、会議中にフラッと出て行く雰囲気でもありません。そこで、周りから聞こえてきた話し声に聞き耳を立てて、守備コーディネーターの話が耳に入らないように努力しました。

 

 ノジマのコーチミーティングは、守備と攻撃で別れて開催されるので守備のゲームプランを聞く機会はありませんでした。

 そして試合前の練習では、両チームのRBが合同で行いました。2チームに対してコーチが僕しかいないので、特例として使用エリアの侵害が許可されていたのでしょう。

 

 試合が始まると、僕は下に早稲田のシャツを着用。上からノジマのシャツを着て、両チームのサイドラインを行ったり来たりです。

 ゲーム記録から調べますと23度、11往復と半分になります。横幅は約55ヤードですので、おおよそ1300ヤードもジョギングした計算になります。体がしんどいはずです。膝の関節内も何だか痛いような…。

 サイドラインの内側での打ち合わせやコミュニケーション、作戦の伝達などが大声で叫ばれていますが、とにかく聞かないように努力し何とかゲームを終えました。

 

 次のバッターにはカーブを決め球にして三振を取ろう。ここはバントのフリしてから打たずにボール球を待とう。野球でも相手の作戦を聞いてしまえば、こちらを有利にすることができますので、全ての時間で作戦が練られ吟味されているフットボールでは、相手チームの考えを知ってしまうと試合が成り立ちません。

 

 僕は作戦の奥行きよりも、選手の心の中や体調を見極めることに関心があるので、管理する選手の数が倍になり、かなりのエネルギーを使いました。

 ちなみに、試合はノジマが20―7で勝ちました。

 単なる日記みたいになりましたが、とてもいい体験でした。両チームのご理解に感謝です。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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