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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

どうしたフェニックス 後味の悪さ残した日大―関学大定期戦

2018.5.9 16:35 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
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試合終了後、挨拶に来た関学大の主将、副将に一礼する日大・内田正人監督=5月6日、東京・アミノバイタルフィールド
試合終了後、挨拶に来た関学大の主将、副将に一礼する日大・内田正人監督=5月6日、東京・アミノバイタルフィールド

 

 いつもなら、試合後挨拶に来た相手チームの主将、副将と握手をして、ひと言声をかける関学大の鳥内秀晃監督が、一礼しただけで手を差し伸べなかった。

 ライバル日大の「変質」に、憤りと戸惑いを感じているように見えた。

 

 5月6日、東京・アミノバイタルフィールドで行われた日大と関学大の春の定期戦。昨年12月の全日本大学選手権決勝(甲子園ボウル)の再戦となった定期戦は、今年で51回目になる。

 昨季、27年ぶりの大学王者になった日大が宿敵を迎えた「赤と青」の対決には、約3000人収容のスタンドに大勢のファンが詰めかけた。

 

 好ゲームが期待された一戦は、開始早々不穏な空気に包まれる。関学大の最初の攻撃シリーズだった。

 日大の守備ライン(DL)の選手が、パスを投げ終えて無防備になっている関学大の2年生QB奥野耕世選手を激しくタックル。明らかな「レイトヒット」の反則で奥野選手は立ち上がれず、フィールドを離れた。

 さらに2プレー後、代わってQBのポジションに入った西野航輝選手(4年)にも日大のDLは襲いかかり、2度目のメジャーペナルティー(15ヤード罰退)が科せられた。

 

 この時点で、日大は当該選手をいったんサイドラインに下げるべきだったが、プレーを続行。今度は口論になった関学大の選手のヘルメットを殴り、資格没収(退場)となった。

 21―14で関学大が甲子園ボウルの雪辱を果たした試合は、なんとも後味の悪いものになってしまった。

 

 鳥内監督は学生時代、4年連続で出場した甲子園ボウルのすべてで日大に屈している。

 「あの悔しさがあるから指導者になった」と、「フェニックス」には特別の思いを持っている「ファイターズ」OBの一人である。

 

 試合後、記者に囲まれた日大の内田正人監督は、退場になった選手には闘志が足りないので奮起を促したという趣旨の話をした。

 

 しかし、監督の檄に応えようと張り切りすぎたという範疇をはるかに逸脱したラフプレーは絶対にやってはいけない行為で、敢えて「蛮行」と断罪したい。

 責任は自らにあるとする一方で、退場した選手の行為を容認するかのようにもとれる内田監督の一連の発言とともに、批判は真摯に受け止めなければならない。

 

 奥野選手は終盤に一時復帰したが、試合後は松葉づえをついていた。深刻なけがでなければと願うばかりだ。

 

 日大というチームは、伝統的に反則を何よりも嫌うチームだったはずである。

 「フェニックス」の基礎を築き、強豪としての地位を確立した故篠竹幹夫監督は、反則は未熟さから生まれるものとし、徹底した反復練習で選手を鍛えた。

 

 昨年の甲子園ボウルで「僕にとっての監督は篠竹さんであり、自分は今でも一コーチだと思っている」と話していた内田監督は、名伯楽の教えを誰よりもたたき込まれた指導者であるだけに、今回の対戦相手への配慮を欠いた発言は残念でならない。

51回目を迎えた春の定期戦は、関学大が日大に21―14で勝った=5月6日、東京・アミノバイタルフィールド
51回目を迎えた春の定期戦は、関学大が日大に21―14で勝った=5月6日、東京・アミノバイタルフィールド

 

 

 激しい身体接触を伴うアメリカンフットボールの試合は、安全を最優先に考えて運営されている。

 そうした時代の流れに逆行し、競技としての品位を貶めるような学生チャンピオンチームの姿に失望したファンは少なくない。

 

 試合の翌日、日大OBからこんなメッセージが届いた。

 「日大は最高のヒール(悪役)でかまいません。でも、ダーティーなプレーをよしとするプライドのないチームでは、情けなくて恥ずかしいです」

 「フェニックス」を愛する気持ちが凝縮された文章に、一OBとして深くうなずくしかなかった。

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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