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共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

カウボーイズの名TEウィッテンが引退発表

2018.5.8 10:36 生沢 浩 いけざわ・ひろし
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TDパスをキャッチして、エンドゾーンでボールを掲げるカウボーイズのTEウィッテン(AP=共同)
TDパスをキャッチして、エンドゾーンでボールを掲げるカウボーイズのTEウィッテン(AP=共同)

 

 カウボーイズのTEジェイソン・ウィッテンが、15年のNFL生活にピリオドを打って引退を発表した。

 今後はESPNの「マンデーナイトフットボール」のアナリストとして活動することになる。

 

 「アメリカズチーム」と呼ばれて全米で高い人気を誇るカウボーイズのなかで、チームの垣根を越えて多くのファンに愛された選手の一人だった。

 それは必ずしも彼が才能にあふれたレシーバーだったからではなく、彼のひたむきなプレースタイルが多くの人の心を打ったからだろう。

相手のDBと競り合いパスをキャッチするカウボーイズのTEウィッテン(AP=共同)
相手のDBと競り合いパスをキャッチするカウボーイズのTEウィッテン(AP=共同)

 

 

 「よく若い人たちに『どうやったらカウボーイズでこれだけのキャリアを積めるようになるのか』と聞かれるけど、僕の答えはいつも同じだ」とウィッテンは引退会見で述べた。

 「秘訣なんかない。僕は誰よりも優れた能力があるわけでもなく、誰よりも輝いている選手でもない。大切なことはやり遂げようという強い意志を持つことなんだ」

 

 2003年のドラフトで3巡指名を受けたという事実一つをとっても、ウィッテンの能力が高いことは明らかだ。

 しかし、彼の魅力はそこにあるのではない。どんなに激しいヒットを受けてもすぐに立ち上がって次のプレーに向かい、キャッチのためならダイビングキャッチやスライディングもいとわない。こうした「泥臭い」プレースタイルが共感を呼んだのだ。

 

 ウィッテンの引退会見が行われたカウボーイズのチーム施設のすぐ横の通路には、ヘルメットが脱げたままボールを持って走る彼の写真が飾られているという。

 これは2007年の試合中のワンシーンなのだが、これこそがウィッテンの象徴的な姿だ。

 

 通算パスキャッチ(1152回)、パスによる獲得距離(1万2448ヤード)など数々の球団記録を打ち立てたウィッテンだが、連続出場(235試合)や連続先発出場(179)の記録こそが彼らしい。

 

 NFL全体でもパスキャッチ数は歴代3位だし、TEで1000回超のパスキャッチ、1万ヤード以上を獲得したのはトニー・ゴンザレス(元チーフス、ファルコンズ)に次いで史上2番目だ。将来の殿堂入りは間違いない。

 

 ウィッテンとホットラインを形成したのが、同じ年にドラフト外で入団したQBトニー・ロモだった。

 ロモもカウボーイズの歴史のなかで語り継がれるQBの一人だが、ウィッテンがいなければその輝かしい経歴を残すことはできなかったかもしれない。

 そして、ウィッテンは昨年引退して解説者に転身したロモと同じ道を歩むことになる。

 

 ウィッテンに引退を決意させたのはESPNからの打診だったそうだ。カウボーイズは今季もウィッテンが現役を続行すると期待していたし、ウィッテン自身も40歳までプレーすると公言していた。

 「プレーができなくなればコーチになりたい。コーチになることが無理でも、フットボールには携わっていたい」と、ウィッテンは転身に傾いた心境を説明した。

 

 16分間の引退会見で終始晴れやかだったウィッテンの表情がわずかに曇った場面があったという。それはジェリー・ジョーンズ球団オーナーにメッセージを送った時だ。

 「この決断を下すのに最も悩んだことは、もうあなたにロンバルディー・トロフィーを手渡すことができなくなるということだ」とウィッテンは語った。

 

 リーグ優勝を経験せずにユニフォームを脱ぐ悔しさは、ウィッテンが一番よく知っている。

 また一人、スーパーボウルの舞台を知らないままに名選手が去っていく。

記者会見で引退を表明するカウボーイズのTEウィッテン。右はジョーンズ球団オーナー(AP=共同)
記者会見で引退を表明するカウボーイズのTEウィッテン。右はジョーンズ球団オーナー(AP=共同)

 

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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