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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

カリスマが後を託した若き指揮官 京大・西村大介監督

2012.10.29 5:11 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
今季から京大を指揮する西村大介監督=写真提供:京都大学ギャングスターズ
今季から京大を指揮する西村大介監督=写真提供:京都大学ギャングスターズ

 隊列を組んだ京大の選手たちが、号令に合わせて整然とグラウンドを一周する。まさに、一糸乱れぬという表現がぴったりだ。

 10月27日、京都の西京極陸上競技場で行われた関西学生リーグ伝統の一戦、久しぶりの全勝対決となった京大‐関学大の試合前の風景だ。フィールドに寝そべり、ゆったりとストレッチングをするチームが多い中で、京大の試合への入り方は、一昔前の映像を見ているようだった。

 京大は今シーズン、長くチームを率いたカリスマ監督・水野弥一氏の勇退に伴い、35歳の西村大介監督にバトンタッチした。

 西村監督は、京大時代は守備ラインとして活躍し、1998年には主将を務めた。卒業後も保険会社に勤務するかたわらクラブチームでプレーを続け、2003年にドイツで開催されたワールドカップでは日本代表に選ばれ、優勝に貢献している。

 専任コーチとして母校に帰ってきたのは06年。「低迷するチームを何とかしたい」という強い思いからだった。京大は95、96年に甲子園ボウルで2連覇を果たして以降、不振が続いている。

 東大と並ぶ最難関校が抱える悩みは、いつの時代も同じ。人材不足である。学生フットボール界のトップに君臨しているころは「京大でフットボールをしたい」という全国の進学校の高校生が、厳しい受験戦争を勝ち抜き入部してきた。しかし、長い低迷で「GANGSTERS」のブランドは、徐々にその輝きを失っていく。

 「コーチに就任した当時は、京大は昔アメリカンフットボールが強かったことを親から聞いたという学生がほとんどだった」そうだが、「最近はまた、京大でフットボールを、という受験生が少しずつ増えてきた」。目ぼしい高校生に、チームとして徹底した受験対策を施す努力も報われつつあるという。

 「ポストカリスマ」を任された若き指揮官は言う。「自分は水野さんにはなれない。だから180度方向転換して、学生と一緒に考えながらチーム作りをしている」。ただ、こうも付け加える。「水野さんが掲げていた『リーダーの輩出』という目的と『日本一になる』という目標は、私が監督をする間は変わることはない。より高い目標を設定することで、社会で通用する人材を育てたい」。きりりとしたマスクに、キラキラと輝く目。「ヘッドコーチ」と呼ばれることを好む指導者が少なくない中で、名門復活の期待を一身に背負う好漢は、オーガナイザーとしての資質も兼ね備え、日本風の「監督」という肩書がよく似合う雰囲気を漂わせている。

 ライバル関学大との全勝対決は7‐27で完敗。立ち上がり、攻撃陣が関学大の守備陣を翻弄する場面もあったが、総合力で及ばなかった。

 すっかり日が落ちたフィールドで、西村監督が言った。「これから大学に戻って練習します」。試合が終わったばかりなのに、である。当たり前のように、全く気負いのない言い方だった。

 この言葉を聞いて、水野氏がこの男にチームの再建を託した理由がわかったような気がした。恩師は彼が「カリスマ性」を備えた生粋のリーダーであることを、学生時代からとっくに見抜いていたのではないだろうか。

2年連続で甲子園ボウルのミルズ杯を受賞し、京大の連覇に貢献したQB東海辰弥=87年、甲子園球場
2年連続で甲子園ボウルのミルズ杯を受賞し、京大の連覇に貢献したQB東海辰弥=87年、甲子園球場

京大出身で日本代表のヘッドコーチも務める、鹿島の森清之ヘッドコーチ(左)と関大の磯和雅敏前監督=09年、ライスボウル記者会見
京大出身で日本代表のヘッドコーチも務める、鹿島の森清之ヘッドコーチ(左)と関大の磯和雅敏前監督=09年、ライスボウル記者会見

関西学生リーグの同大戦で復帰し、選手たちに指示を出す京大の水野前監督(中央)=06年、大阪府吹田市の万博フィールド
関西学生リーグの同大戦で復帰し、選手たちに指示を出す京大の水野前監督(中央)=06年、大阪府吹田市の万博フィールド

京大出身でアサヒ飲料を社会人選手権連覇に導いた、富士通の藤田智ヘッドコーチ(左)と伊藤乃普彦主将=12年、パールボウル記者発表、アンクルハット(南青山)
京大出身でアサヒ飲料を社会人選手権連覇に導いた、富士通の藤田智ヘッドコーチ(左)と伊藤乃普彦主将=12年、パールボウル記者発表、アンクルハット(南青山)

記者会見に臨む京大の水野弥一前監督(現追手門学院高アドバイザー)=06年、京都大学
記者会見に臨む京大の水野弥一前監督(現追手門学院高アドバイザー)=06年、京都大学

法大を破って3年ぶり5度目の優勝を果たし、喜ぶ京大チーム=95年、甲子園球場
法大を破って3年ぶり5度目の優勝を果たし、喜ぶ京大チーム=95年、甲子園球場
宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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