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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

「ギリギリの勝負」が選手、組織を鍛える 自信がつき上達もする

2014.1.24 10:03 中村 多聞 なかむら・たもん
試合終了間際、逆転のタッチダウンを決めるオービックのRB古谷(中央)=2013年、東京ドーム
試合終了間際、逆転のタッチダウンを決めるオービックのRB古谷(中央)=2013年、東京ドーム

 僕は自分が主力選手として出場した試合では点の入れ合い、いわゆる「シーソーゲーム」の経験がほとんどありません。たいていは下のような流れです。

①先取点を入れて逃げ切り

②1度だけ逆転して勝利

③1度もリードせず負け

④逆転負け

 普段は「勝負だ!」「気合いだ!」「集中だ!」とか偉そうなことを書いていますが、実際はそれほどギリギリの勝負をしたことがないんですね。

 前半リードして相手の攻撃がイマイチ進まない時は、ほとんどの場合もう勝ちが決まっていたわけです。そもそも最後に所属していたチームが強かった頃の4年間で負けた経験は年に1度か2度。

199●年1敗(シーソーゲームなし+普通に敗戦)

199●年1敗(シーソーゲームなし+普通に敗戦)

200●年1敗(逆転勝ち1回+逆転負け)

200●年2敗(シーソー勝ち2回+普通に敗戦&逆転負け)

(注)年の末尾はあえて●としました

 強い相手との対戦でも点の入れ合いはなく、ロースコアな我慢大会。これじゃあ、見に来て下さる方につまんない思いをさせていたことがハッキリわかります。

 だが、しかし! ココからが重要です。プレーオフのような高いレベルで勝つか負けるか最後までわからないゲームを経験した選手は、練習500回分(週に2回を1年40週で6年分以上)の上達を果たすと僕は思っています。

 自分達もギリギリ(だと思っていた)の試合を経験していくごとに自信もつき、実際に上達もしました。自分自身もチームメートもメキメキ伸びていく感触を味わったものです。

 ピンチをしのいだ仲間への信頼感も増します。そう、「場数」ですね。緊張しちゃう場面でも、慣れてくると緊張しなくなります。「みんなビビってんのんちゃうかなー?」と思うて、ハドル内の面構えをチェックしたら、どんなザコでも平気な顔で自信満々でした。少し前までは全然そんなことなかったのに。

 強い相手がものすごいチカラで自分達に襲いかかって来るのを、逃げたりカワしたり時には正面から真っ向勝負したり。一瞬たりとも予断を許さない緊張した時間はスリル満点で、とても気持ちが高まる中で選手や組織はググググーっと成長しちゃいます。

 以上のことから、現在独走中である社会人チャンピオンは他の追随を許しません。このままだと、毎年毎年差が開くだけです。おまけにあれだけのカッコ良さですから、学生さんの入部希望者もダントツに多いと聞きます。

 外から見ている以上に「強いチーム」「強い組織」になっていると思います。日本のアメフトファン、スポーツファンが全員注目する試合で勝つか負けるかギリギリの試合をしているだけでドンドン上に上がってしまいます。

 「学生が勝てるのか?」という問題より、この「大横綱」にライバルと認めさせる組織が生まれるかが、今後の鍵ですね。来シーズンも楽しみです。

パスを奪い合うオービックのDB藤本(左)と関学大のWR和田=2012年、東京ドーム 
パスを奪い合うオービックのDB藤本(左)と関学大のWR和田=2012年、東京ドーム 

IBMとのシーソーゲームを制したオービック、QB龍村のメインターゲットとなったWR木下典=撮影:Yosei Kozano、2013年、秋津サッカー場
IBMとのシーソーゲームを制したオービック、QB龍村のメインターゲットとなったWR木下典=撮影:Yosei Kozano、2013年、秋津サッカー場
中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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