メニュー 閉じる メニュー
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【米挑戦スタート編④】ハリケーン来襲は前途多難の予兆? チームメートと合流

2014.4.22 12:09 鈴木 弘子 すずき・ひろこ
ハリケーンシーズンになると被害を受けることが多いフロリダ州・デイトナビーチ
ハリケーンシーズンになると被害を受けることが多いフロリダ州・デイトナビーチ

 翌朝、コンシェルジュの指示で、ホテルスタッフによってバス停まで荷物は運ばれ、無事デイトナビーチ行きのバスに乗り、その後はタクシーでホテルに向かった。

 当時、モーテル8レベルの安ホテルに泊まったことのなかった私は、古めかしいホテルに戸惑いつつも、キッチン付き、目の前がビーチの条件に気を奮い立たせようとしたが、特有のカビ臭さに気持ちがどんよりした。空も私と同様どんよりとしていた。

 小雨が降る中、カブスの試合に向かう。雨で中止になりませんように…。

 マイナーリーグの試合は予想とは全く違って、神宮球場を小さくした感じ、観客も200~300人程度、入場料もたったの10ドルだった。会場で、チームメートになるおそろいのチームTシャツを着たガタイのいい「お姉ちゃん」たちを探すのは容易だった。

 その中の一人に声をかけると、すぐにキャプテンを紹介された。キャプテンから「日本から選手が来ることはオーナーから聞いている」と言われ、ビザの件で私のことを面倒に思ったオーナーから、私は亡き者にされたのかなという最悪の予想は、幸運にも当たらずに済んだ。

 「きのうオーナーが迎えに来ることになっていたので、オーランド空港で8時間待っていた」と告げると、選手たちが口々に、「彼女はこう言っているんじゃない?」「いや、なんとかって言っているのよ」と私の英語を推理し始めた。

 何人かの推理を組み立てて、私の言っていることは、伝わった。「実はオーナーは、仕事をリタイアして、ミネソタから車でこっちに向かっているんだけど、まだ到着してないのよ」と言う。

 「だったら、代わりの人を迎えによこしてよ」と言いたかったけれど、私の一言にまたあの推理ゲームが始まると思うと言い出せなかった。ホテル代も請求したかったが、何も言うことができなかった。前途多難な日々の始まりだった。

 キャプテンはすごく面倒身が良さそうに見えたし、みんなから信頼を得ているように見えた。アメリカ人、みんな同じに見えて区別が付きづらいけど、彼女の名前と顔だけは覚えなきゃ。

 彼女は私に自分の名前を告げて「メジャーって呼んで」と言った。現役の軍人で、軍ではメジャーという階級なので、みんなからこう呼ばれているらしい。簡単な名前で良かった。

 ずっとキャプテンの隣で野球を見ていたので、彼女の顔だけはしかと覚えた。明日から練習が始まるので、今晩はしっかりと食べたかったけれど、この試合会場で、ホットドックか、チップスを食べるしか他にチョイスはなさそうだった。

 ホットドッグが夕飯だったのは、初めてだった。

 試合後、彼女たちにホテルに送ってもらって、無事ホテルに到着した。

 そしてこの夜、ハリケーンがやって来た。雨が強くなるとすぐに停電になり、波の音も大きくなった。ビーチの目の前の安ホテルを予約したことを後悔した。

 雨、風の音もどんどん大きくなる。周りを見ても停電だから真っ暗だ。避難するべきなのか。ホテルのスタッフは、私を呼びに来てくれるのだろうか。結局一睡もできず、次の日の朝を迎えた。

鈴木 弘子 すずき・ひろこ

名前 :鈴木 弘子 すずき・ひろこ

プロフィール:女子プロフットボール選手。日本の女子クラブチーム・レディコングでアメリカンフットボールを始め、2000年、米女子プロリーグのトライアウトに合格し、日本人初のプロ選手となる。2012年にはサンディエゴサージでチームを優勝に導いた。

最新記事