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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

オール三菱がLIXILに善戦した理由 Xリーグが開幕

2014.8.26 17:21
3Q、ゴール前の攻防からオール三菱RB鈴木がTDランを決める=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム
3Q、ゴール前の攻防からオール三菱RB鈴木がTDランを決める=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム

 日本社会人Xリーグは8月25日に開幕、中地区の1試合が東京ドームで行われ、クラブチームとして再スタートしたLIXILがオール三菱に31―28で勝った。試合は第1クオーターにLIXILがQB加藤翔平からWR鈴木謙人へのTDパスで先制するが、オール三菱はRB鈴木康裕が93ヤードを独走してすぐに同点に追いつく。

 後半に入ると、オール三菱はQB谷口翔馬を中心としたテンポのいいドライブで得点を重ね、第3クオーター終了時には28―14とLIXILを突き放した。

 しかし、第4クオーターに入ると消耗で負傷者が続出したオール三菱の守備を、LIXILがパス攻撃で一気に崩してシーソーゲームを制した。

 オール三菱は攻守にわたって善戦したが、クラブチームに移行して初の秋季リーグ戦に臨んだLIXILが、最終的には意地を見せた結果となった。オール三菱がファイナルステージ常連の強豪を苦しめ、好ゲームを演じた背景には四つの理由があった。

 ▽理由その①「チーム作りの違い」

 まず、この試合はリーグの開幕戦であると同時に、対戦相手の情報が最も少ない初戦だ。各チームは昨季や春の試合を基に対戦相手のスカウティングを行うが、メンバーや戦術は秋の本番に変わることが多く、あまり参考にならない。

 さらに、LIXILはリーグ最終節で当たる王者オービック戦に向けてチームを作っているのに対して、オール三菱はアサヒビールかLIXILのどちらかを倒して、3位以内に入ることを目標にしていた。

 つまり、この一戦にかけていたのだ。LIXILの森清之ヘッドコーチは「初戦で動きが硬い選手が多かった」と試合を振り返ったが、開幕戦に向けた両チームの取り組みの違いが、フィールドに表れたと言えるだろう。

 ▽理由その②「一つにまとまったタレント」

 「ライオンズは人材の墓場」。以前にオール三菱の関係者が、勝てないチームについてこう嘆いていた。WR冷水哲やDB長田健をはじめとして、かつては日本代表クラスの選手が在籍していた時期もあったが、孤軍奮闘するか機能せずに、チームとしては中堅のポジションを脱却することはなかった。

 今季のチームはその壁を破る可能性を秘めている。スーパースターこそいないが、各ポジションにちらばった有望選手が、しっかり役割を果たしてチームとして機能しているのだ。

 QB谷口はこう語る。「強豪大出身の新人たちが、負け癖のついたチームに刺激を与えてくれている」。TDパスを捕球した慶大出身のWR吉田幸祐や、明大で主将を務めたRB小形亮介は随所でいい動きを見せていた。

 さらに印象的だったのが、関学大出身のDB高健大だ。LIXILのWRに攻略される場面もあったが、気迫を前面に出して真っ向勝負する姿勢は、これまでのオール三菱ではあまり見られなかった。キックオフカバーでは、ブロッカーをはじき飛ばして猛然とタックルしていた。

 ▽理由その③「走らなかったQB谷口」

 試合を見ていて今までのオール三菱と大きく違ったのが、QB谷口がスクランブルしなかったことだ。走れる場面は何度もあったが、最後はレシーバーを探して必ずパスを投げていた。

 このことについて聞くと、谷口は「今までは(パスを投げられずに)苦しくて走るのがほとんど。今日はWRと息も合っていて、空いている選手を見つけることができた」。今までオール三菱と対戦する守備としては、谷口をスクランブルに追い込んでしまえばさほど恐くないという印象だっただろう。だが、プレーが崩れてからこれだけパスを決められると、なかなか守りにくい。谷口が率いるオフェンスの攻撃の幅が広がったのだ。

 ▽理由その④「LIXIL攻守ラインの不調」

 オール三菱の奮闘はもちろんだが、接戦理由にはLIXILの攻守ラインの不調が挙げられる。

 LIXILオフェンスはゴール前1ヤードの場面が3回あった。その内2回はTDを取り切れず、1回はパスで得点している。ランのトータルヤードも20回のキャリーでわずか26ヤードに終わった。守備では逆にゴール前でランプレーによるTDを許し、パスラッシュでも谷口をつかまえきれなかった。

 オール三菱のラインはサイズが小さく、決して強くはない。LIXILのラインの方に問題があると考えるべきだろう。前兆は春のパールボウルから見られた。準決勝の富士通戦で、完全にライン戦で負けていたのだ。

 特にDLは富士通のOLに手も足も出ないといった感じで、QBキャメロンが常に余裕を持ってプレーしていた。

 LIXILは、OL荒井航平やDL重近弘幸など日本代表の若手も着実に力を付けている。しかし、ユニットとしては確実にオービック、富士通と力の差が開いている。森HCはランオフェンスについては、「OLとRB両方に問題がある」と指摘した。

 いずれにしろ、LIXILはこのまま攻守ラインの完成度が上がらなければ、今後も苦戦を強いられるだろう。

 いよいよ開幕した2014年シーズン。中地区は王者オービックの力が抜けている状況だが、2番手争いではおもしろい試合が続くかもしれない。

1Q、LIXILWR鈴木がTD=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム
1Q、LIXILWR鈴木がTD=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム

2Q、オール三菱WR吉田へのパスが通り逆転TD=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム
2Q、オール三菱WR吉田へのパスが通り逆転TD=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム

3Q、左へロールしながらパスを投げるオール三菱のQB谷口=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム
3Q、左へロールしながらパスを投げるオール三菱のQB谷口=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム

4Q、LIXILQB加藤からのパスを捕ったWR藤森がTD=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム
4Q、LIXILQB加藤からのパスを捕ったWR藤森がTD=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム

3Q、オール三菱QB谷口からパスを捕ったTE祖父江が34ヤードのロングゲイン=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム
3Q、オール三菱QB谷口からパスを捕ったTE祖父江が34ヤードのロングゲイン=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム

オール三菱に辛勝し、観客に挨拶をするLIXILの丸田主将=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム
オール三菱に辛勝し、観客に挨拶をするLIXILの丸田主将=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム

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