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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

向き不向きあるHC職 実績次第のNFLコーチ

2015.7.21 13:10 生沢 浩 いけざわ・ひろし
今季ブロンコスに戻ってきたウェイド・フィリップス守備コーディネーター(AP=共同)
今季ブロンコスに戻ってきたウェイド・フィリップス守備コーディネーター(AP=共同)

 フットボールを指導する立場の者なら誰もが憧れるのがNFLのヘッドコーチ(HC)だろう。フットボールの最高峰のリーグでチームを指揮し、スーパーボウル優勝に導く。1年に一人しか味わうことのできない栄誉だ。

 言うまでもなく、世界に32しかないヘッドコーチの座を手に入れるのは至難の業だ。日本のプロ野球では、有名選手が引退して数年後に監督に就任する例が多いが、NFLではこれはありえない。

 NFLにおけるコーチ業は通常、クオリティーコントロールと呼ばれるアシスタントから始める。クオリティーコントロールというのは見習いのようなもので、スカウティングに使うフィルムの編集や整理などを主に行う。

 ここで経験を積んだあとにポジションコーチとなり、さらにコーディネーターを経てHCへと進むのが一般的な出世コースだ。

 もっとも、ポジションコーチからHCに抜擢される例も珍しくない。かつてレッドスキンズで2008年から2シーズンHCを務めたジム・ゾーンは、QBコーチとしての実績が買われた。それまではNFLではコーディネーターを経験していなかったが、QB育成の手腕が高く評価された。

 HCを務めた人物が他チームでコーディネーターやポジションコーチに就任することも多い。降格人事のようだが、フットボールでは必ずしもそうではない。

 例えば、今年からブロンコスのHCに就任したゲイリー・キュービアックはブロンコスの攻撃コーディネーターを経て2006年にテキサンズのHCとなった。13年途中に解任され、昨季はレーベンズの攻撃コーディネーターに就任していた。

 キュービアックもそうだが、コーディネーター時代の実績が評価されてHCに招聘されるケースが多い。ところが、コーディネーターとしては優秀だが、HCでは結果を残せない人が少なくない。

 その代表例がブロンコスの新守備コーディネーター、ウェイド・フィリップスだ。フィリップスは父バムの下でディフェンスを学び、セインツ、ブロンコス、ビルズ、チャージャーズ、テキサンズで強力なディフェンスを作り上げてきた。彼の指導するディフェンスは常にリーグトップ10にランクされる。

 ところが、HCとしての成績は芳しくない。通算成績こそ82勝61敗と勝ち越しているが、プレーオフでは1勝5敗。09年シーズンにカウボーイズのHCとして5度目の挑戦でようやくプレーオフ初勝利を得た。

 しかし、その翌年には1勝7敗と不振を極め、シーズン途中で解雇された。このシーズンのスーパーボウルは地元カウボーイズ・スタジアム(現AT&Tスタジアム)で開催される予定だっただけに、史上初の地元チームのスーパーボウル出場という期待を裏切られたカウボーイズファンの落胆は大きかった。

 解任後はキュービアックの下でテキサンズの守備コーディネーターに就任し、DEのJ・J・ワットを開花させるなどの実績を残した。今回のブロンコス復帰もキュービアックとの縁が理由だ。

 そのカウボーイズでかつて攻撃コーディネーターを務め、1992~93年シーズンのスーパーボウル連覇に貢献したノーブ・ターナー(現バイキングズ攻撃コーディネーター)もHCとしては結果を残せていない。

 これまで、レッドスキンズ、レイダーズ、チャージャーズのHCを歴任した。QBフィリップ・リバース、RBラディニアン・トムリンソンといったタレントに恵まれたチャージャーズでは、有力な優勝候補に挙げられたが、07~09年に3年連続でプレーオフに出場するもスーパーボウルには届かなかった。

 チャージャーズ時代の成績は56勝40敗と大きく勝ち越しているが、通算成績は114勝122敗と負け越している。

 コーディネーターは専門の分野に没頭できるが、HCはチーム全体に気を配り、運営していく義務がある。これに順応できないと、いかに優勝な作戦参謀であろうと指揮官には向かないのだろう。

 フィリップスもターナーもまだHC職には意欲を示しており、チャンスがあればどこかのチームで指揮を執りたいと願っている。

 だが、彼らにはコーディネーターとしてその才能をフルに発揮してほしいというのが筆者の願いだ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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