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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

山本慎治のスウェーデンのアメリカンフットボール事情⑨

2015.7.29 11:45
子供を対象にしたプロモーション行事に参加した86ersの選手=写真提供・山本慎治さん
子供を対象にしたプロモーション行事に参加した86ersの選手=写真提供・山本慎治さん

「王者とホームでの死闘」

 スーパーシリーズでの今季のウプサラ86ersは、4試合終了時点で3勝1敗です。

 カールスタッド・クルセダーズとのホームでの再戦に向けて、チームの士気も高まってきました。そんな中、練習で主力選手の2人が負傷、1人は試合に出場できなくなるという残念な事態も発生しました。

 一方、4月のミニキャンプで負傷して開幕から出場していなかったスウェーデン代表DBは今季初出場できる見込みとなりました。

 クルセダーズの今年のここまでの戦歴は、国内トップリーグ、スーパーシリーズでは3勝0敗、そして、IFAFヨーロッパのチャンピオンズリーグのグループ予選では、コペンハーゲン・タワーズ(デンマーク)、ヘルシンキ・ルースターズ (フィンランド)に対して2勝0敗で、決勝トーナメントに進出しました。ここまで5勝0敗で、前回の86ersとの試合以外は全て大差での勝利です。

 試合前日、町の郊外にあるショッピングモールでの、チームのプロモーション行事に参加しました。ボードの丸い穴の中にちょっと離れたところからアメフトのボールを投げ入れるのですが、これが結構難しい。3回投げて1回入れば明日のチケット、2回入れば去年の大学選手権の帽子、3回入れば86ersの帽子をプレゼントするという企画で、子供だけでなく大人も楽しんでいました。

 また、別の日にはインポートプレーヤー数人が、地域の小学校にいって子供たちと交流しました。

アメリカ人QBウェルシュによると、アメリカ、ドイツでもこのようなプロモーションや交流は今まで何度も経験してきたとのことでした。日本でも、Xリーグのオービック、ノジマ相模ライズなどのこういった交流の写真を見たことがあります。子供たちにとって非常に楽しいふれ合いになると思われます。

 この日のクルセダーズとのホームでの対戦は、自分のスウェーデンでのアメフト帯同経験のなかで最も印象に残る、素晴らしいバトルとなりました。

 第1クオーター、開始7分にパスでクルセダーズがタッチダウン。0―7となりました。

86ersもQBウェルシュからエースRBヴィクストロームに渡ったボールを彼がフォワードパス。この、ハーフバックパスがエースWRステポジッチに見事に通って52ヤードのタッチダウン。しかし、PATキックは失敗して6―7。クオーター終了直前にパスでクルセダーズがタッチダウンを追加して、6―14となりました。

 第2クオーター、ヴィクストロームが12ヤードのランを決めてタッチダウン。しかし、PATはパスで2点を狙うもWRが落球して同点のチャンスを逃し、12―14となりました。

 ここから、王者クルセダーズが二つのランでの連続タッチダウンと一つのPATキックを決めて、12―27となり、15点差をつけられて重苦しい雰囲気となりました。

 しかし、前半残り3分でWRヴィルセンに17ヤードのパスが決まりタッチダウン、PATでパスも成功して20-27。そして、前半残り2分で、パスインターセプションから、この試合が今季初出場のスウェーデン代表DBペッテソンが24ヤードを走っていい位置からの攻撃権を獲得しました。

 QBウェルシュが25ヤードを走ってファーストダウン獲得し、残り26ヤード。ここでステポジッチへのパスはインコンプリート。しかし、次のプレーでもう一度彼へのパスが決まってタッチダウン。PATのキックも決まり、27―27の同点で前半を終了しました。

 第3クオーターは両チーム譲らず得点なく、27―27。

 そして第4クオーターへ。開始6分、12回のドライブで69ヤードを獲得、最後はQBウェルシュがダイブして歓喜のタッチダウンを挙げました。PATキックも決まり、34―27。この試合初めてのリードを奪いました。

 しかしこのまま終わらないのがチャンピオンです。パス2本を通してわずか34秒でタッチダウン。しかし、PATを失敗して、34―33とリードを守りました。

 この時点で残り6分45秒。次のドライブで86ersはファーストダウンを奪えずパント、残り4分39秒でクルセダーズの攻撃がスタートしました。

 ここからのクルセダーズの、時間にして2分46秒の10回のドライブがこの試合の山場でした。クルセダーズ自陣38ヤードからスタート。24ヤードのパスでファーストダウン。さらにQBスニークでファーストダウン。しかし、このプレーの直後に、86ersのLBが、アンスポーツマンライクコンダクトで退場を宣告されました。15ヤードの罰退で、残り11ヤードとされるも、QBをサックして22ヤードまで押し返しました。

 そして次のプレー。エンドゾーンに投げ込まれたパスがインコンプリートとなったのですが、審判がイエローフラッグを投げました。判定は、パスインターフェアランス、手痛いディフェンスの反則をとられました。

 これで残り7ヤードとされ、最後はQBが飛び込んでタッチダウン。PATのパスは失敗するも、34―39と再逆転を許しました。

 時計の針は残り1分51秒。キックオフリターンの距離が稼げず、自陣25ヤードからの86ersの攻撃。残念ながら得点を奪えずこのまま試合終了。またもや惜敗という結果になりました。

 ここで、スウェーデンのアメリカンフットボールの審判員のレベルの話に触れたいと思います。昨年の大学選手権も全試合、スウェーデンの審判員が担当したのですが、そのレベルは、日本のとあるコーチによると、非常にネガティブな評価でした。

 もちろん、リーグで審判教育の講習などはされておりますが、競技人口、試合数から考えても審判員の質と量を確保できるのは難しいと思われます。もちろん、審判団とその判定にリスペクトを欠かさないのがあらゆるスポーツの基本であることはいうまでもありません。

 最後のクルセダーズのドライブ、86ersは2つのペナルティー、1人の退場が響いて、得点を許しました。しかし、この判定に対し86ersが試合後正式に抗議文をリーグに提出しました。

 退場判定を受けた選手に関しては、次試合の出場停止処分が撤回されました。当の選手によると、こづかれたのでこづきかえしたらいきなり退場を宣告されたとのことでした。

 そして、運命を分けたパスインターフェアランスに関しては、ビデオ映像での審判団の再検討の結果、ミスジャッジだったと認められました。オーナーのセーデルベリ氏も、1試合の大事な場面で2回もミスをされ、審判団がそれを認めるのは前代未聞だと言っておりました。これがなければ勝っていたのかもしれません。

 しかし、私が見ていたところ、他のプレーへの判定に対しても、自軍のコーチがサイドラインで直接審判に不満の言葉を何度かぶつけていて、審判の顔色が変わることもありました。問題となった判定も、それらの積み重ねの延長ととらえることもできるでしょう。

 厳しいカンファレンスに入ったため、強敵とのホームアンドアウェーの戦いが組まれ、そして残念ながら2連敗という結果となりました。

 これで3勝2敗。しかし、まだ、残り5試合残っております。9チーム中上位4チームに入ればプレーオフ進出となります。まだまだ希望は残っております。

(つづく)

試合経過、詳細なスコアリングサマリーはネットで閲覧できます。http://www5.idrottonline.se/ImageVaultFiles/id_710774/cf_87178/UPPCC.HTML

山本慎治(やまもと・しんじ)プロフィル

 1969年生まれ。外科医。日本、アメリカの施設で腹部一般外科、臓器移植外科で勤務した後、2005年からスウェーデンに移住、現在はウプサラ大学病院移植外科に外科専門医として勤務。14年の第1回アメリカンフットボール世界大学選手権の日本代表チームに帯同。その後、スウェーデンのアメリカンフットボールトップリーグ「スーパーシリーズ」所属のクラブチーム 「Uppsala 86ers」のチームドクターを務めている。

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