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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

NFL、若手が生き残りかけるプレシーズンゲーム始まる

2015.8.18 13:33 生沢 浩 いけざわ・ひろし
コルツとのプレシーズンゲームに出場したイーグルスのQBティム・テーボウ(AP=共同)
コルツとのプレシーズンゲームに出場したイーグルスのQBティム・テーボウ(AP=共同)

 NFLのプレシーズンゲームが本格的に始まった。9月10日のレギュラーシーズン開幕に向けて、各チーム4試合(殿堂入り式典記念試合「ホールオブフェイムゲーム」を行ったバイキングズとスティーラーズは5試合)を消化する。

 プレシーズンで重要なのはチームの戦力を正確に見極めることであり、勝敗が度外視されるのは言うまでもない。ただ、4試合それぞれの位置づけが違うということは意外に知られていない。

 初戦は主に新人や若手を中心に試合が組まれる。レギュラーシーズンで先発する選手たちはわずか1、2シリーズしか出場しないのが普通で、中にはサイドラインにとどまったままのケースもある。日本でも開催されていたアメリカンボウルシリーズ(プレシーズンゲームの米国外開催)はこの位置づけだった。

 特に先発QBはこの時期には、ほとんど出場時間を与えられない。第1週はトム・ブレイディ(ペイトリオッツ)、ベン・ロスリスバーガー(スティーラーズ)、ジョー・フラッコ(レーベンズ)らはスターターとして出場したものの、ほんの数回のパスを投げただけでサイドラインに下がっている。セインツのドルー・ブリーズはレーベンズとの試合に1プレーも出場しなかった。

 ただし、新人やポジション争いを展開している選手たちはこの限りではない。ドラフト全体1位指名のQBジェーミス・ウィンストン(バッカニアーズ)は、バイキングズとのプレシーズンゲームに先発出場し、前半の全オフェンスプレーに出場した。

 パスは19試投で9回の成功、131ヤード、1インターセプトという不本意な成績に終わった。センターとのエクスチェンジミスも2回犯し、NFLのQBとしては、準備不足であることがうかがえた。

 彼に続いてタイタンズから指名されたQBマーカス・マリオタもファルコンズ戦に先発出場し、被インターセプトと自らのファンブルをリターンされるという不安定な立ち上がりの後、TDドライブを成功させた。パスは8試投で7回成功、94ヤードのゲインだった。

 先発QB争いが展開されるビルズ、テキサンズ、イーグルスではすでに実戦での熾烈な競争が始まっている。

 テキサンズではブラウンズからFA移籍したブライアン・ホイヤーがセシル・ショーツⅢ世に58ヤードのTDパスを成功させて肩の強さをアピール。ライバルのライアン・マレットにプレッシャーをかけた。

 イーグルスでロースター残留を目指すティム・ティーボウはコルツ戦で約2年ぶりの試合出場を果たした。自慢の足を生かしてTDランを記録した。

 イーグルスでは先発の座をサム・ブラッドフォードとマーク・サンチェスが争っているが、ブラッドフォードはこの試合に出場しなかった。

 プレシーズン第1週ではTD後のトライ・フォー・ポイント(TFP)でキックではなく2点コンバージョンのパスを選択するチームがいくつかあった。前述のホイヤーのロングパスでTDを奪った後のテキサンズもそうで、ホイヤーがデアンドレ・ホプキンスにパスを決めて2点コンバージョンを成功させた。

 これはTFPのボール位置を変更する新ルールに対応したものだ。新ルールではTFPのキックはゴール前15ヤード、プレー選択ならば従来通り2ヤードに置かれる。

 パスのコントロールのいいQBを擁するチームでは距離の近い2点コンバージョンを積極的に狙っていく可能性もあり、現在はそれを試験的に行っているものと考えられる。プレシーズンが3、4週目にかかる頃にはこの傾向もはっきりしてくるだろう。

 プレシーズン2週目もほぼ1週目と同じように若手中心の布陣だが、先発メンバーの出場機会が増え、第1週で出場を見送ったベテラン選手も登場する。

 そして、第3週ではどのチームでもレギュラーシーズンと同じ先発の布陣で試合を開始し、第3Q前後までほぼフルメンバーで戦う。したがって、プレシーズン第3戦がオフシーズンの補強とトレーニングの成果を評価する一つの目安となる。

 冒頭で述べたように勝敗は基本的に意味のないプレシーズンだが、こと第3試合については先発陣の出場している間の得点経過は注目に値する。

 最終戦をどう戦うかはチームによって異なる。第3週に続き先発陣の調整に使うチームもあれば、スターターを温存して再び若手中心に切り替える場合もある。

 後者はスターターの故障を防ぐのが大きな理由だが、この直後に迎えるロースターカットに向けて最終の「ふるい分け」をする目的もある。

 今年は9月1日に90人から75人に、そして5日はシーズン中の登録枠の上限である53人にまで絞らなければならない(ロースター内の選手は常に入れ替えが自由だが、シーズン中の登録上限は53人)。

 いよいよ実戦に入ったNFLだが、各チームが恐れるのは主力の故障だ。第1週もジャガーズのTEジュリアス・トーマスが左手指を負傷し、バイキングズではRTフィル・ロードホルトにアキレス腱断裂の疑いがある。

 故障は予測のできない不確定要素だが、戦力に大きな影響を与えるものでもある。その影響を最小限に抑えながらチームの戦力を整えつつ開幕に備える。それがプレシーズンゲームなのである。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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