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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

山本慎治のスウェーデンのアメリカンフットボール事情⑭

2015.9.3 12:38
入場する86ersの選手=写真提供・山本慎治さん
入場する86ersの選手=写真提供・山本慎治さん

「セミファイナル」

 スウェーデンのアメリカンフットボールのトップリーグ「スーパーシリーズ」のリーグ戦が終了し、上位4チームによるセミファイナルの試合が行われました。

 3位のウプサラ86ersの対戦相手は、2位のカールスタッド・クルセダーズです。

 8月29日の土曜日、午前9時に遠征のバスはウプサラを出発しました。途中、昼食休憩があり、現地に午後1時過ぎに到着しました。

 着替え前に、先週の試合で負傷していた正QBを診察したのですが、状況は改善していません。鎮痛剤を飲む以外の対処法はありませんでした。

 さらに、試合前のウオーミングアップが終わりかけた頃に、エースRBが腰の筋肉の痙攣を起こして倒れ、帯同していたもう一人のチームドクター、エバ・セーデルベリ医師と、試合を観戦に来ていたU-19チームのアスレチックトレーナーとで懸命の治療を行いました。彼はなんとか試合に出場はできました。

 15時前。両チーム選手の入場。そして、整列して、掲揚された国旗を見ながらスウェーデン国歌の斉唱。コイントスの後、運命の試合が始まりました。

 第1クオーターは優勢に試合を進めました。エースWRへのロングパスが通ってゴール前に迫りましたが、結局27ヤードのフィールドゴールのチャンスをものにできませんでした。0―0のまま第2クオーターへ。

 86ersのパンターがボールをファンブルして大きくロス、自陣25ヤードで相手の攻撃というピンチを迎えました。カールスタッドはこのチャンスを生かし先制、さらにタッチダウンを加えて、前半を14―0のカールスタッドリードで終了しました。86ersの攻撃は手詰まりの状況に見えました。

 ハーフタイムの控室、ヘッドコーチは「2タッチダウン差など大したことはない。前回の試合を思い出せ」と檄を飛ばしておりましたが、選手達の顔や振る舞いを見て、私はこの試合の結末を悟りました。

 実際に相手選手と体のぶつかり合いで対話している彼らが、相手の手ごわさ強さを実感していることがわかりました。そして、その状況を打開しようという闘志が伝わってきませんでした。

 第3クオーター、相手に先に点を取られたらこの試合は決まってしまう。そう思いながらサイドラインから86ersの奮闘を期待していたのですが、カールスタッドの最初のドライブで、ペナルティーによる罰退なども響いてタッチダウンを許し、0―21となりました。

 これで明らかにチームの緊張の糸が切れました。0―28で第3クオーターを終了。第4クオーターの最初のドライブでタッチダウンを許して0―35となった時点で、屈辱の時計を止めないランニングクロックの試合となり、結局0―43で敗戦となりました。

 あらためてスタッツを見たら、QBは痛みを押して274ヤードを投げて、ファーストダウンも17回取っていました。しかし、ランの距離がわずか3ヤード。エースRBはなんとか試合に出られたものの、腰痛で不調のまま終わりました。

 私は医療スタッフなので、当然チームの方針などに何か意見することはなかったのですが、私の目から見たこの日の大敗は、そもそも先週のリーグ最終戦の戦い方に起因すると思えました。

 翌週のプレーオフの試合に万全の態勢で臨むためにも、リーグ最終戦は控え中心でいけばいい。私はそう思っていた、というか願っていたのですが、主力を出して大差で勝ったものの、正QBと第2WRが負傷しました。

 そもそも、その試合を勝てばカールスタッドと対戦、負けたらティーレソーと対戦となることがわかっていたのに、なぜ勝ちに行ったのかが理解できませんでした。ただ、そのように考えていたのは私だけのようでしたが。

 もちろん、ティーレソーと対戦しても負けたかもしれません。しかし、主力が温存された状態で、遠征の距離も短くてすんだので、より良いチームコンディションで戦えたはずです。

 ちなみに、セミファイナルのもう1試合で、ティーレソーは去年と同様、オーレブロに負けました。カールスタッド対オーレブロという決勝のカードは3年連続となりました。カールスタッドは7連覇に挑みます。

 帰りのバスの車内、選手たちは試合で何もできなかったこともあり、さほど落胆した様子もなく、さばさばしておりました。エースRBは「決勝に連れていけなくてごめん」と言ってくれました。

 午後10時30分頃にウプサラにバスが到着。素晴らしいチームだった2015年のウプサラ86ersが解散しました。最後にオーナー、選手に挨拶して、家路につきました。

 週末は土曜日にMVPなど各賞を決めるパーティーにオーナーから招待されており、日曜日の決勝戦はゲームドクターとして参加する予定となっております。

(つづく)

山本慎治(やまもと・しんじ)プロフィル

 1969年生まれ。外科医。日本、アメリカの施設で腹部一般外科、臓器移植外科で勤務した後、2005年からスウェーデンに移住、現在はウプサラ大学病院移植外科に外科専門医として勤務。14年の第1回アメリカンフットボール世界大学選手権の日本代表チームに帯同。その後、スウェーデンのアメリカンフットボールトップリーグ「スーパーシリーズ」所属のクラブチーム 「Uppsala 86ers」のチームドクターを務めている。

ランプレーで前進を図る86ers=写真提供・山本慎治さん
ランプレーで前進を図る86ers=写真提供・山本慎治さん

ライン同士の激しいぶつかり合い=写真提供・山本慎治さん
ライン同士の激しいぶつかり合い=写真提供・山本慎治さん

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