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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

「プロボウル」はハワイ開催が理想 NFLの思惑に疑問

2016.6.6 11:16 生沢 浩 いけざわ・ひろし
今年1月にホノルルで開催された「プロボウル」(AP=共同)
今年1月にホノルルで開催された「プロボウル」(AP=共同)

 あくまでもファンとしての個人的意見に他ならないのだが、またもNFLは残念な決断をした。オールスター戦である「プロボウル」の開催地を、今後3年間フロリダ州オーランドで行うと発表したのだ。

 現時点では期間限定の変更だが、当地で恒久的に定着する可能性がある。

 筆者にとってプロボウルとは、ハワイでスーパーボウルの翌週に行われるものというイメージが強い。それもそのはずで、1979年シーズンから2008年シーズンまで毎年ハワイ州ホノルルのアロハスタジアムで行われていたのだ。

 それ以前にはロサンゼルスを主な開催地としていたのだが、80年代からNFLを見始めた筆者にはやはりプロボウルといえばハワイなのだ。

 かつてハワイでプロボウルが行われるのが恒例だった頃、コーチ陣(カンファレンス決勝で敗れたチームが担当)は、アロハシャツにサンバイザーというリゾートファッション。普段はライバル関係の選手たちがチームメートとなって夢の共演が実現する。

 シーズン中は激しく競い合っていた選手たちが和やかに談笑し、スーパーボウルで優勝したチームはライバルから祝福を受ける。

 サイドラインでは試合が続行しているにもかかわらず、殿堂入りの決まった元選手たちがテレビ局のインタビューに答える。

 全体的にまったりしたのんびりムードが漂い、それがハワイのゆったりとした時間の流れに合っていたものだ。北米大陸から遠く離れたリゾート地での試合は、オールスターに選ばれた選手へのご褒美でもあった。

 試合を放送するテレビ局もそれぞれに趣向を凝らし、スーパーボウルの振り返りをする一方で多くのハイライトシーンでシーズンを振り返る。

 筆者はNHK―BSが用意する好プレー集が好きだった。こうした雰囲気がシーズンの終了を印象付け、余韻を残してオフへと突入するのだった。

 ところが、ビジネス面を重視するNFLの観点から、プロボウルは少々お荷物だったようだ。まず、テレビの視聴率が上がらない。

 08年まではスーパーボウルの翌週に行われていたため、ファンの関心が薄れがちだったのは否めない。ハワイの観光局が尽力しても、集客がいまひとつだったのも事実である。

 そこで、ロジャー・グッデルNFLコミッショナーは改革に乗り出した。それが、開催日をスーパーボウルの翌週ではなく、前週に移動させることだった。さらに、開催地をハワイ限定ではなく、スーパーボウル開催地でも行うというものだ。

 現行のプレーオフの日程では、カンファレンス決勝からスーパーボウルまで2週間空く。グッデル氏は間に挟まる日曜日にプロボウルを持ってくることで、カンファレンス決勝からスーパーボウルまでのファンの関心をつなぎ、同時にプロボウルへの興味を引き付けようと考えた。

 そして、開催地をスーパーボウルと同じスタジアムにすることで当地への経済効果も高めようとした。

 もっとも、ハワイの既得権も無視することはできず、スーパーボウルと同じ開催地で行われたのは09年シーズンのマイアミと14年シーズンのアリゾナ州グレンデールだけだった。

 プロボウルの日程変更はグッデル氏の政策の中でも最悪の部類に入る。この日程ではスーパーボウルに出場するチームの選手がそろって欠場してしまうからだ。

 ファンはオールスター戦で見たい選手に投票する。そして、スーパーボウルに出場するくらいのチームにはプロボウルにふさわしい選手がたくさんいる。そうした選手が票を集めたにもかかわらず、出場できないオールスター戦など存在する意味がない。

 試合形式も変わった。過去3年はかつてのAFC対NFCではなく、往年のスター選手がドラフトによってチームを形成して競うというエンターテインメント性の強いものになった。

 今後のプロボウル開催地にはホノルルのほか、次回のスーパーボウル開催地であるヒューストンやオーストラリアのシドニーも候補に挙がっていたようだ。オーランドが権利を勝ち得たのは利権絡みだ。

 プロボウルの放送権を持つESPNの親会社はウォルト・ディズニーだ。ディズニーが世界最大のリゾートテーマパークを構えるのがオーランドなのだ。

 すでにディズニーはプロボウルに関連し、同社が一大テーマとする家族に重点を置いたイベントも計画している。

 つまり、オーランドのプロボウル招致はディズニーの画策によるものであり、娯楽産業の巨頭が支配する限り、近い将来にハワイに戻ることは考えにくいのだ。ハワイの観光局では太刀打ちできまい。

 試合形式は再びAFC対NFCという従来型に戻るとされている。これは歓迎したい。オールスター戦はカンファレンス対抗がしっくりくる。

 でも、やっぱりプロボウルにはハワイが似合う。レイ、フラダンス、ハワイアンミュージック。友好を象徴するこれらのハワイ文化は、敵味方のないオールスター戦に最適だ。

 筆者がどれだけ主張したところでNFLには響かない。それでも言いたい。プロボウルはハワイで開催してほしい。それも、スーパーボウルの翌週に。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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