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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

本当の「努力」とは何か 多聞が語る、一流になるための条件

2017.4.27 16:33 中村 多聞 なかむら・たもん
沖縄で開催された水上バイクの耐久レースに出場した多聞さん=写真提供・中村多聞さん
沖縄で開催された水上バイクの耐久レースに出場した多聞さん=写真提供・中村多聞さん

 僕はレジャーではなく、勝ちたいのでアメリカンフットボールやその他のスポーツをしてきましたし、もちろんレジャーも楽しみました。

 レジャーにも大会や試合があり「勝ち」や「負け」「目標達成」「途中棄権」など悲喜こもごもな結果も味わえます。

 数万人が参加する市民マラソンも、優勝を目指して参加する人はほんの一握りだと思います。僕はフットボール選手を引退してから、沖縄県で開催される結構大規模なジェットスキー(水上バイク)の耐久レースに出たことがありました。

 練習もするにはしますが、まあ「遊び100%」なノリで真剣味は全く足りません。大会前日もお酒を飲んで食べたいものを食べていました。もちろん優勝などできません(それどころかリタイアしたチームを除けばビリ)でしたが悔しさはありません。

 2時間をトラブルなしで無事完走できたことで、とりあえず満足です。レース中にユニフォームを着た他チームの選手がビーチで喫煙するシーンもあり「レジャー感満載」でした。

 また来年度を目指すにしてもそれほどの練習計画をたてるわけでもなく、遊んでいる中で自然にうまくなる程度しか自分に期待していません。

 また、仲間と楽しむボウリングなどもそうです。卓球やダーツも酒場にあったりして、とりあえず勝ち負けを楽しめます。

 このようなスポーツを「レジャー」と定義して今回のテーマである「努力とは」について、僕の考え方を書いてみたいと思います。

 僕が真剣にフットボールに取り組み出したのは、バブル時代の真っ只中、今から約30年前の1980年代の終わり頃です。

 この頃はどんなスポーツ選手でも30歳を超えていると「超ベテラン」などと言われたものです。「ウエートトレーニング」どころか「ストレッチ」が最先端の運動として君臨していました。

 ウエートトレーニングはとてもマニアックな運動で、テレビに出てくるボディービルダーのようなカラダを目指す特殊な競技として位置付けられていました。

 筋肉を付けると動きが悪くなる、という理屈がまかり通っていました。重くなるほどの筋肉がそう簡単につくわけもないですし、あながち間違ってもいません。まあそういう時代でした。

 その時代の指導者たちはそれ以前、つまり1970年代、または1960年代に得た経験や知識で練習を運営します。

 無償でフットボールのコーチをする彼らが最新の栄養学や運動の理論などを学び続けることは至難の技ですし、作戦の一部を海外のテレビ放送から輸入するのが関の山でした。

 といった具合に、現代のスポーツ界を取り巻く環境とは随分違います。今はインターネットで情報をキャッチすることが常識となり、英語などの外国語を理解できるとものすごく膨大な情報量を得られることになります。

 当時は「ライバルより多く知っている」だけでアドバンテージになり、選手として数段上に行くことができましたが現代は違います。

 膨大な情報量の中から、自分の成長や能力維持(またはけがからの復帰)にフィットするものを全員が選べます。

 極端な例を挙げれば、体力向上のために真夏の炎天下で水も飲まずうさぎ跳びを何時間もやるしかなかったのが、現代ではエアコンの効いたジムで優れた栄養を摂取しつつ、最新の理論に基づいた器具などを利用して鍛えることも可能です。

 20年、30年前に未来を見据え、時代の最先端の情報を収集し実践していたわずかな人たちは優位に立つことができました。

 我々アメリカンフットボール関係者は、チームに属さねば「選手」とは言えませんので必ずどこかのチームに所属しておく必要があります。

 希に無所属で「日本代表」に選ばれる選手も存在しますが、それは極めて異例です。そしてその所属チームでは、フットボールの基本練習や応用練習、対戦相手に合わせた各フォーメーションからのセットプレーの反復は当然のことながら、走り込みやウエートトレーニングなどもチームのトレーナーやコーチが管理するのが一般的です。

 もちろん食事や栄養補助食品について、飲酒や喫煙、けがや病気、アンチドーピングの勉強や生活サイクルまで、アマチュアと言えども「アスリート」として大切に扱われています。

 つまり現代ではこれが当たり前。ここがスタートラインになっているのです。

 決め事を守れない「アウトロー」や「不良」は淘汰され居場所がなくなります。少しぐらい才能(体格を含む)と経験があっても、一瞬で後進に抜かれてしまいます。

 誰も真似できない特殊技能を何年も継続している選手は必然的に毎夜の暴飲暴食などできませんし、若い頃より多くのトレーニングを積まなければけがをしてしまいます。

 これこそ敵が11人いる格闘技「フットボール」の特徴です。ルールも大けがを防ぐことを目的に罰則を設けています。

 どんなに才能があっても、細心の注意を払わなければ、すぐにリーグの水準から落ちこぼれてしまいます。

 そんな中で勝ち残るための努力とは一体どうすればいいのでしょうか。何をすればいいのでしょうか。

 僕も選手を育成するコーチとして日々考えていますが、答えは抽象的なものになってしまいとても困っています。

 あえて挙げるとすれば、以下の通りでしょうか。

①飲酒や喫煙をしない

②食事の回数や量、そして栄養の質、節制に節制を継続する

③チーム練習には100%参加する

④チーム練習のない日は自主トレをする

⑤体や栄養、運動、作戦などの猛勉強をする

⑥チームメートやコーチらと密にコミュニケーションをとる

という、昔なら「超」のつく優等生的な生き方が現代では当たり前です。

 僕が今問題だと感じていることは「一生懸命真面目に頑張っているから、これで十分なのだ」と決めてしまうことです。

 本気で誰かと競い合うことのないレジャーならまだしも、標準的な努力を重ねても標準的な結果(順位)しか得られないのは当然です。

 しかし、当の本人は至って真面目に「やるべきことを一生懸命やっている」ので、もう一段上の努力にまで思いが至りません。

 学生なら学業、社会人なら仕事や家族との時間以外にできることはわずかでしょう。その少ない時間と機会で「果たして今やっていることで十分なのか?」を考える余裕や発想がなければ、トップに立つことはできません。

 たまたま強いチームに所属し、少しの貢献をするために日々の鍛錬をしているわけではないはずです。

 自身がしっかりと勝利に貢献し「君がいなけりゃ勝てなかった」と、全ての人に思われてこそ「選手冥利に尽きる」というものです。

 そういう高いところに目標を設定している人は、周りもしっかりと応援してくれるのです。「常識を超えた努力」の継続には、周囲からの全力の応援が必要です。

 義務だけをこなしていても「えげつない選手」に変身はできません。運動センスや勝負勘が優れていても、賢くしたたかにその競技で誰にも負けない努力をしなければダメなのだと理解して実行することが大切です。

 その為には、今やっている努力を別の視点や考え方を元に見直し、時には人からのアドバイスを受け、努力の時間と濃さをもっと徹底的に「厚く深く」していかねばならないと思います。

 勝ちたければ昔も今も「みんなよりたくさん頑張ること」が必要だ、ということですね。「タフで」「強く」「速く」「巧みに」など、全ての部分でトップを目指すには、まずは「賢く」ないといけません。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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