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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

効率よく教えるために日々試行錯誤 コーチ業の難しさを実感

2018.2.15 12:35 中村 多聞 なかむら・たもん
東海地区でクリニックを開催した中村多聞さん(中央)=写真提供・岐阜大学アメリカンフットボール部
東海地区でクリニックを開催した中村多聞さん(中央)=写真提供・岐阜大学アメリカンフットボール部

 

 このところ、最強ランニングバック(RB)を目指す選手たちに、自分の研究結果を毎日毎日指導しています。

 社会人はシーズンオフになると、シーズン中の無理をリカバリーするためにチーム単位で練習することが少なくなります。学生さんはここぞとばかりに体力づくりや基礎基本の構築に余念がありません。

 

 また、日頃の練習で疑問に思うことやどのように練習すれば良いのかという答えを持っていない人は、短期のクリニックなどに参加してくださっています。皆さんの情熱は本当に熱く、真剣そのものです。

 

 社会人はシーズン中のけがを癒やしたり仕事に集中したり、家族との時間を多く取ったりとオフはオフで忙しくしているので、ポジションコーチの負担は激減します。

 有志の選手が「タモンコーチの独自トレーニング教えてくれ」なんて言って来てくれるので昼間に開催していますが、それほどの頻度ではできません。

 

 僕もそうでしたが、何しろ皆さんフットボール以外のことでお忙しい。RBとして上を目指すため、オフ期間にやっておけば良いことを提案しようにも会うことすら難しいので、なかなか前に進みません。

 また、社会人になると選手としても大人としてもそれぞれのスタイルが形成されているので、容易なことでは改革に応じてもらえませんので、その人ぞれぞれのやり方で長所を伸ばすお手伝いしかできません。

 しかしやはり社会人でも選手を続けている猛者たちですので、少しのヒントや指導で自分なりに工夫してすぐに新しいことを自分のものにしてしまいます。この器用さが、社会人でプレーできている理由なのかなと感じます。

 

 僕が指導している早稲田大学でも春の長期休みになり、選手たちは朝からトレーニングや走り込み、そしてフットボールの基礎練習など、一日中フットボール漬けの人も多くいます。

 彼らは社会人選手と違い若く、全てを受け入れる心の広さと柔らかさを持っています。〝流派〟やカラーやスタイルはありますが、うまくなったり強くなれるのであれば即座に改革に応じる柔軟性があります。

 指導の受け入れ態勢は万全なのです。しかし、残念ながらこちら側にそのエネルギーと時間がないのです。

 

 仕事をして稼がなくても家族が一生暮らしていける資産があれば良かったのですが、大学生の子どもを二人持つ普通の家庭人ですので、学生さんたちのためだけに時間の全てを使えないのです。これは非常に歯がゆい。言い方を変えれば学生さんを裏切っているわけです。

 

 ただ、こんな問題もあります。たまたま平日に休みがあり、早朝からトレーニングを指導しミーティング、そしてフットボールの練習という彼らのスケジュールに合わせて動けるとします。

 しかし、朝7時から2時間トレーニングしてもまだ9時です。次のスケジュールまでは数時間ありますが居場所が無いのです。

 大学の校舎内にテーブルと椅子が並んでいる施設がありますが、食堂もありませんしエアコンも有りませんので冬は数時間も座っていられません。ですから一旦家に帰るしかありません。

 

 そしてまた次の予定のために家から練習場に行くという、ちょっともったいない時間の使い方になってしまいます。

 この合間合間に何か用事があれば良いのですが、そんなに都合よく学生さんらも動いてくれません。

 平日なので他のコーチもいらっしゃいませんし、僕は一人で練習計画を立てたりその待ち時間を過ごしています。

 

 練習場の近くに引っ越してしまうしかこれを解消する方法はないので、ネットの不動産情報も見ています。

 でも、辺り一面とんでもない面積が早稲田大学の各種グラウンドなどの敷地になっていて、ビッグベアーズのフットボールフィールドから徒歩圏内には、ほとんど早稲田大学しかない、というオチがつきます。

 

 この両極端な社会人と学生さんの特徴に、僕のRB研究者としてのスパイスがバッチリと調和が取れた時、彼らの手に念願の大きなトロフィーが届けばいいのにな、と日々思っています。

 僕の持っている知識と時間を、一切の無駄なく彼らに捧げるにはどうするのが一番良いのか? 僕にも生活がありますので、本業もしっかり気に掛けねばなりません。

 

 「コーチをする時は、現役時代と同じかそれ以上の熱意で取り組む」。その覚悟ができるまでは、人様に指導などする資格はないと引退してから決めていましたが、その条件はずいぶん前にクリアしています。

 あとはもっと効率よく接するだけですね。スケジュール管理は苦手ですが克服します。みんなごめんねー。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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