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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

ハドルボウルよ永遠に! スター軍団「ゴリゴリ大学」は撤退へ

2018.2.1 12:36 中村 多聞 なかむら・たもん
「ハドルボウル」に出場した「ゴリゴリ大学」の中村多聞監督(右)らチームのメンバー=富士通スタジアム川崎
「ハドルボウル」に出場した「ゴリゴリ大学」の中村多聞監督(右)らチームのメンバー=富士通スタジアム川崎

 

 今年も1月27、28日の2日間「ハドルボウル」が富士通スタジアム川崎で開催され、僕も「ゴリゴリ大学」の監督、そして「出張ゴリゴリバーガー」の責任者として参加してきました。

 ハドルボウルとは、難病に苦しむ子どもたちの夢を叶えるお手伝いをする団体「Make a Wish」に、大学アメフト部OBらが「チャリティーでビシッと寄付しよう!」という趣旨で生まれた大会です。

 内容は、普段運動不足なオッサンたちが、昔取った杵柄で楽しむフラッグフットボールの大運動会です。

 

 「ゴリゴリ大学」は、NFLヨーロッパリーグ経験者を中心にメンバーを集めて作ったチームですが、今年の該当者は僕だけでした。

 もちろん国内リーグで名を馳せた有名選手が数名所属していますが、最近はメンバー構成に苦慮していました。

 これではハドルボウル発足時(ハドルボウルって言いにくいなと思っていた頃)に、チェアマンの関学大OB堀古ヒデジさんから仰せつかった「今度、大学 OB対抗のフラッグフットボールの大会を催すから、タモンも有名人集めてチーム作ってよ。そういう有名人は、どうせ母校のチームでもあんまり出場しないだろうし引っ張り出せ!」「はい、やってみます!」から始まりました。

 各大学の皆さんがメンバー募集をする前からアプローチし続けた努力が実り、オールジャパンをはるかにしのぐビッグネームなメンツを擁し2013年の第1回大会を迎えました。

 

 しかし、当日は大雪で会場が使えず延期となり、気が進まないスター軍団のスケジュールを無理やり空けてもらったので、延期された日には全員が欠席。結局スーパースター軍団は結成されないままに終わってしまいました。

 ハドルボウルが関係者の中での認知度を高め、多くのチームが「フラッグがうまそうなOB」を探しはじめ、スター選手たちも「ゴリゴリ大学」より愛着のある母校から出場するようになり「ゴリゴリ大学」にはスターがほとんどいなくなりました。

 

 チームのメンバーは、エントリーしていない大学のメンバーが中心の寄せ集めなので、練習を企画してもほとんど集まれません。

 ですから練習なしで試合ができるような工夫をしています。我々は、夏に関西で開催される「ニューエラ・ハドルボウル」を含め、8度の大会出場で14勝10敗、準決勝まで2度進んだ経験があります。

 よそのチームは多種多様なプレーを披露されており、練習をしっかりなさっているんだなーと感じます。

 皆さんの勝利への執念やチームへの帰属意識も、我々とは比較にならないほどの高さで試合に臨んでおられるのを見ていると、やはり昔の仲間でチームを再結成していることはとても羨ましく、ハドルボウルに出る度に仲間はずれ感があり、悲しい気持ちになっています。

 

 しかしそんなことは気にせず、毎度精いっぱい楽しく遊ばせてもらっています。チャリティーオークションの司会や、ネット放送rtvのコメンテーター、そしてハンバーガーの売店を出したりと、試合どころではないほど大忙しなのです。

 

 我が「ゴリゴリ大学」は、次回大会には出場はしないことになりそうなので、僕らの攻撃スタイルの秘密をお教えしたいと思います。

 プレーブックも練習もしないチームがどうして勝ち越せているのか? 敗れた10試合のうち5試合は勝ちに行っていないので、なかなかの戦績だと思います。

 

 フラッグフットボールは5人でプレーします。レシーバーにNFL経験者4人を並べた攻撃が、最も威力を発揮するのは言うまでもありません。

 しかし、若い頃ならフラッグ用の狭いフィールドじゃ疲れ知らずで、丸2日ぐらいは平気だった彼らも今や40歳をこえたお父さん。

 プロレベルの選手は必ず「ONE PLAY AT A TIME」を実行しますので、全力でプレーしてしまう癖が残っています。ついつい手を抜くのを忘れてしまうのです。なので、疲れてしまうかどこかを痛めて交代してしまいます。

 代わりに出てきた選手は、学生時代に運動経験がないメンバーも混じっていますので、フットボール特有のセットプレーをあまり理解できないことがしばしば起こります。

 この中で彼らを使ってスコアしなければならないので、我々は次の方法を徹底することにしました。

 ・ランプレーをしない

 ・ランのフェイクもしない

 ・最初に並ぶ隊形は常に同じ

 ・QBはセンターの真後ろにいて左右に動かない(ロールなしでドロップバックのみ)

 ・複雑なプレーはなし

 

 このような「正攻法」のみの作戦に絞りました。そしてプレーは4人がそろって5ヤードで振り向く「全員フック」をベースとし、今回も1度だけ5人ほどが集まった練習時(監督の僕は欠席)でもこの「HOOK」だけを練習しました。

 どんな下手くそでも慣れてくると、うまい具合に守備の隙間でフックしていたらボールが飛んで来ます。

 フラッグを取られなければ「ランアフターキャッチ」でもう少し進めることもあるので、ランプレーのように着実に前進できます。

 いわゆる「刻む」攻撃方法ですので、相手チームはイライラさせられます。そしてたっぷり時間を使うので、アメフトと同じく「ボールコントロールオフェンス」が展開できるわけです。

 

 相手守備は5人で守っていますが、1人が7ヤード先からラッシュしてくるので、残りは4人。奥が広く残っているフィールドポジションでは、ロングパスが怖いのでどうしても深いエリアに人員を配置したくなるのが人情です。

 守備の一人が深いエリアに下がり、浅いエリアを守っている3人のいるところへ4人のレシーバーを送り込むので、必ず誰かがノーマークになるという仕組みです。

 

 5ヤードしか前に出ていませんのでQBの投げるボールは12ヤード程度です。これだと守備選手が反応してもボールの滞空時間が短いのでカットするのが非常に難しく、確実に前進します。

 守備側が4人フックばかりだと気づいて浅いエリアに4人を置くような作戦に変えてきたら、人のいない深いエリアに「フックフェイクの縦」で勝負します。

 後出しジャンケンなのです。しかし、この刻み戦法にも当然弱点があります。まずアメフト出身のQBだと、投球距離12ヤード以内の超ショートパスばかりだとストレスがたまります。

 長い絶妙なパスを投げたくなる衝動を抑えてもらわなければなりません。次にキャッチミスが許されないことです。

 3回の攻撃でファーストダウンを取る算段ですので、一度でも落球すると残りの2回で5ヤードだけ進んでも仕方なくなるので長いのを投げざるを得ません。

 そうなると失敗する確率も上がるので、スコアできない回数も増えてしまいます。守備はどうやっているかと申しますと、これは僕の案ではないのでお話しできません。

 ゴリゴリ大学には異様に守備範囲の広い超ド級のホンモノDBが1名おりますので、外から守備コーディネーターがサインを送り、ベストメンバーだけで臨んでいます。

 

 でもまあ売店の方が忙しいので、サイドラインにメンバーの半数しか来れなかったりと、いったい何しに来ているのかわからない状態でもあります。

 出場チームも年々増えて、すさまじい数になってきており「大会を盛り上げるという、僕らの役割は済んだよね」と、中心メンバーたちと話しています。

 

 ハドルボウルが始まった頃は、日曜が休みの仕事をしておりました。しかし今はハドルボウルやこのコラムのおかげでフットボール界にカムバックしておりますし、「自分の成長と成功を信じて、ガムシャラに頑張っている若者たちに全エネルギーを注ぎたいなぁ」なんて思っています。

 

 大会の趣旨が素晴らしいハドルボウル。「ゴリゴリ大学」は撤退する方向ですが、このイベントが永遠に続くことを願っています。

会場では中村多聞さんが経営するお店のハンバーガーや豚汁などが販売された=富士通スタジアム川崎
会場では中村多聞さんが経営するお店のハンバーガーや豚汁などが販売された=富士通スタジアム川崎

 

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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