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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

最強RBへの道Vol.9 「トレーニングの取り組み方(初級者編)」

2018.1.18 10:00 中村 多聞 なかむら・たもん

 3年半以上ぶりの「最強ランニングバック(RB)への道」です。前回はボリューム8でしたので今回は9を書いてみたいと思います。

 内容はトレーニングの取り組み方についてです。トレーニング方法や種類の紹介とはまた別の問題です。あくまでも「やり方」「取り組みの考え方」にフォーカスしてみます。

 

 RBがフットボールのフィールドを支配したければ、いろいろな要素が求められます。

 「賢さ」「速さ」「強さ」などです。これらが合わさって「上手さ」につながり、勝利する確率が少し上がります。スポーツとはそういうものだと思います。

 

 「賢さ」もいろいろあり、対人での戦闘に秀でた「賢さ」や、作戦面でのアイデアマン的な「賢さ」、リーダーシップでの「賢さ」、といったような団体競技に必要な「賢さ」はさまざまな種類があります。

 フットボールでは「作戦面での賢さ」を誇りたいばかりに、選手がコーチ側の仕事を気にし過ぎるという間違いを犯す「おかしな賢さ」を持つ人も多く存在します。

 抜群の戦闘員を目指す「タモン式」では、依頼されたミッションを高いレベルで遂行し、成功させることに注力することに主眼を置いているので、そのような越権行為は恥ずかしいので控えましょう。

 

 話を戻しまして「速さ」はフットボールという競技に関して言えば、「速いだけ」だとけがをしたりねじ伏せられたりします。

 「速いだけの軽量級」だと(体重制でないフットボールのような)コンタクトスポーツでは「速い」程度ではなく「異様に突出した速さ」が要求されます。

 「異様に突出」している時点で特別な才能なので例外となりますが、大抵の軽量級はフットボールにおいて役に立ちません。「速さ」は「強さ」を必ず兼ねていなければなりません。

 

 そして今回最大のテーマである「強さ」です。ここでは初級編として紹介しますので、見るからに「フットボールプレーヤー」というような、ムキムキでデカいといった体躯を備えていない人に向けて書いてみます。

 

 細いカラダを大きくするには質の高い栄養と休息、そして筋肉をハードに刺激する高度な運動と相場が決まっています。

 とにかく最初はそれしかありません。他にもあるかもしれませんが、今回はそこに集中します。

 

 「筋肉をハードに刺激するような運動」というと、ウエートトレーニングです。器具や施設が身近にない場合は、腕立て伏せなどで構いません。

 筋肉の強化は他の運動と同様に科学の進歩とともに「説」がバージョンアップしたり、数十年以上も不変の考え方もあります。まずはこういったことを自分で勉強する必要があります。

 

 筋肉や体について興味を持ち、文献を読み漁り、研究工夫、実験、調査、詳しそうな誰かに質問するを繰り返して、自分というトレーニーのトレーナーになる必要があります。

 同じしんどいことをやっていても、正しい知識を用いなければ効果は少なく、無駄が多くなります。

 

 勉強すると、どのようなトレーニングをどのくらいの量やるべきかが分かってきます。

 ウエートリフティングの選手がどのくらいやっているのか、パワーリフティングの選手がどのくらいやっているのか、ボディービルの選手がどのくらいやっているのか、調べればいくらでも出てきます。

 

 トレーニングは苦痛との戦いではありますが、重要なポイントがあります。それは「体」が限界なのか「気持ち」の限界なのかを、しっかりと見極めてセットをこなしていかねばなりません。

 我々がやっているのは重りを挙げる回数や重量を競うスポーツではありません。単に筋肉量を増やして、逞しく美しいボディーラインを競っているわけでもありません。

 トレーニングはあくまでも、タッチダウンするための補助運動です。試合で活躍するための補助運動です。

 練習で長持ちする体を作るための補助運動です。つまり「本物の強さ」を求めているのです。

 

 小さな筋肉を鍛えている時には、いくら頑張っても気力が切れる前に筋肉が限界に到達します。

 「まだまだ継続してやる!」と強く思っていても、どんなに叫んで気合いを入れても筋肉が動かなくなります。

 

 逆に、大きな筋肉を鍛えていると酸素が欠乏し、苦しさが脳を襲います。筋肉よりも脳みそが先に「苦しい!」と信号を出し「苦痛」としか思えなくなります。

 「苦しい!」となると、運動をやめてしまいたくなる衝動がものすごい量で襲い掛かってきます。

 

 タッチダウンをするためのストレングスとしてトレーニングをする時には、ここが肝心なのです。

 この「限界」「死にそう」「もう無理」としか脳が判断しなくなったときに、1秒でも多く我慢するのです。次は「2秒」我慢するのです。

 明日は「3秒」来週は「4秒」来月は「5秒」とドンドンと精神力の限界値を上げていくのです。精神力の限界値とは大げさですが、要するに強烈な苦痛に慣れろってハナシですね。ちなみに回数ではなく時間で考えます。

 

 これがタモン式で言うところの「根性」です。自分の目標達成のために頑張っていることを気絶しそうになるまで、時には気絶するまで、我慢に我慢を重ねるのです。

 そうしていくうちに筋力や筋肉量が増し「強さ」が段々と身についてきます。

 

 「RBの強さ」を示す指標は、パワーがどれだけあってそれをどれだけ維持できるかです。

 ベンチプレスで最大何キロ上がるか、100キロが何回上がるのかはもちろん大切です。基礎体力が備わっていなければ、100キロを10回も上げられないのが普通ですから。

 しかし、本質はこの100キロを何回も上げられるようになるために取り組んでいる「もう無理」をどれだけの時間体験したかが窮地に立たされた時に「切れない気持ち」を使ってチームに勝利をもたらすのです。

 

 やり過ぎては筋肉に良くない、オーバートレーニングではと思ったら、以前は勝てなかった上級者たちとフィールドで勝負してみることです。

 楽勝で相手を吹っ飛ばすことができれば、あなたの意見が正しいですので温泉にでも行って休んでください。

 でもわずかの差でしか勝てないようでは、トレーニングが役に立っていないという証拠です。鍛え方が足らないということですね。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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