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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

大切なのは基礎体力と強い意志 目標はもちろん「日本一」

2018.1.11 12:50 中村 多聞 なかむら・たもん
多聞さんがRBを指導する早稲田大学とノジマ相模原ライズの合同自主トレ=写真提供・中村多聞さん
多聞さんがRBを指導する早稲田大学とノジマ相模原ライズの合同自主トレ=写真提供・中村多聞さん

 

 早稲田大学と、Xリーグのノジマ相模原ライズのランニングバック(RB)を教えるスペシャリストとして現場に復帰して丸2年になります。

 このコラムのシリーズで「最強RBへの道」というものを書かせていただいたのが今から4年ほど前です。

 現場から離れて10年近くが経っていたので時代錯誤な根性論ばかりではありますが、現代にも使える部分があるので、現場での2年はその「根性論」を中心に選手と関わってきました。

 

 RBスペシャリストは、ただ選手に自分の知識を押しつければそれで仕事が終わるわけではありません。対象者、つまり選手が上達して敵を倒すまでが仕事です。

 

 僕は大学3年でコーチも先輩もいないチームでフットボールを始めた時から、上級者として業界から認められるようになった過程で、情報収集のためにいろいろなことにアンテナを張って周りを注視していました。

 

 自分で試して成功したことと失敗に終わったこと、当時の上級者たちがどうやっていたのか、勝てなかったチームは何が駄目だったのか、良いコーチとそうでもないコーチ、良い練習と悪い練習、有効な時間と無駄な時間などなど。フットボールの中で起こること全てを観察し、今の自分に何ができそうかをいつも自分に投げかけていました。

 

 初級者の頃は粋がって、自分より下手な選手にアレコレと思いつく限りに指図して威張り散らしていただけでした。

 みんなより少し強かっただけで「何をすれば強くなる」をサッパリ知らない時代です。全部が実験でした。

 

 そして中級者の頃はチームのレベルについていくのが精いっぱいで、どうにかして上級者レベルの体力がつかないかと必死で模索していました。

 あらゆる角度からの栄養やトレーニング方法を勉強し、ボディービルやパワー系の講習会などにも可能な限り顔を出し、同時に陸上(100メートル走)の訓練も受けたりと、自分の選手としてのレベルや価値を上げるために全てのエネルギーを使っていました。

 

 まだまだ20代前半から中盤でしたので、ゴールの時期に期限はありません。諦めるのが先か、優勝リングが先かだけのハナシです。

 

 しかし! 現在僕が指導している大学生たちには卒業してしまうという期限があり「優勝するまで続けていれば必ず優勝できる」という超ポジティブ思考は通用しません。

 マグレでも何でもいいから、とにかく優勝したいという目標があります。4年後5年後では駄目なのです。

 

 そうなると急いで仕上げる必要があります。甲子園ボウルで戦う相手を「日本2位」に蹴落としてしまえるような選手になるためには、ハードな練習に耐える強い肉体と精神力を備えなければなりません。

 どうせ最終的にはハードな練習をしなければならないし、それに耐えられないなら結局はふるい落とされ淘汰されるのですが、スポーツ界も実社会も最初から何でもこなせる才能あふれるトップスターは1割も存在しません。

 いきなりのハードな練習では、何も培えず枯れてしまうだけです。それは今も昔も同じです。

 

 ハードな練習やハードなプレーでもけがせず、チャンピオンシップまで戦い抜ける「戦士」を育てるには、何はともあれ基礎体力作りです。

 絶対的な筋肉量と筋力にスピードは当然ながら、けがをしそうなアクシデントを回避するセンスと運、何が何でもやり抜いて目標を達成してやるという強い意志など、いろいろ備えていなければなりません。

 

 この地盤が出来上がれば、RBとして本当に必要なパワーとスピードを養う訓練に進めます。

 安定した体力があるので、メチャクチャ重いものを持ち上げたり、100回200回の反復練習にも耐えられますからメキメキ上達します。するはずです。

 

 そのパワーを敵と地面に安定して伝えることができるようになれば、次はスピードを出す訓練です。

 邪魔をする存在がいない中での単純な動きでスピードが出せるようになれば、いよいよ次はRBとしての技術に応用していきます。

 特にここからは僕にしか指導できない領域に入ってくるので、12月までキチンと教えさせてくれればどうにかなると目論んでいます。

 

 途中にけがや病気で離脱、技術や頭脳がついていけず2軍に落ちて練習に入れない。その他想像もできないようなあらゆるトラブルが待ち受けていますが、全てをクリアしてシーズンの最初から最後まで最前線で戦い抜けたら、自ずトロフィーは転がり込んでくるんとちゃうかなー、と考えています。

 とにかく僕が彼らの「やる気と能力と運」を信じる。そして僕は自分の現役時代と同じ熱量でやれることを全部やる。

 

 コーチという商売はとても歯がゆいこともありますが、とにかく優勝してもらいたいと思っています。

 そして将来は社会人リーグで活躍して本当の意味での「イチバンの選手」になれるような基盤を僕と一緒に固めていきたいと考えています。

 

 社会人でも学生でも同じですが、選手と付き合えば付き合うほどに個人個人の特徴が見えてきます。

 十人十色、まさしくその通りです。それぞれの選手にとって最良(または最良に近い)の訓練法を見つけるまで、運動シーンや体の特徴を観察するのは当然です。

 それは簡単に区別がつくようになりますが、性格や考え方は心を開いてくれないと、うわべしか見えません。

 ご存知の方は分かるでしょうけれども、僕は性格に難があり、僕に心を開かない人はこの日本にとても多く存在します。

 

 しかし、性格に難があるとはいえ僕がチームのコーチとして存在している以上、僕に立ち向かって来るか、僕を退部させるかという選択もしなければなりません。

 僕は誰にでも好かれる性質ではないと自分で理解していますので、向き合ってくれる人を大切にする習性もあります。

 僕程度の壁を越えられないような人が、日本一を目指している筋骨隆々の守備選手を踏みつぶすことなど絶対にできないので、サッサと諦めるのが賢明だと思います。

 

 嫌なことから逃げていては、みんなが狙っているトロフィーを手にすることなど不可能でしょう。やるかやめるかしかありませんね。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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