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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

アラバマ大、ジョージア大破り2年ぶりの全米王者 米大学フットボール

2018.1.10 12:10 丹生 恭治 にぶ・きょうじ
決勝のTDパスをレシーブした、アラバマ大WRスミス(6)(AP=共同)
決勝のTDパスをレシーブした、アラバマ大WRスミス(6)(AP=共同)

 

 勝負を延長戦に持ち込んだアラバマ大が、新人QBチュア・タゴバイロアの41ヤードのTDパスで、26―23とジョージア大に逆転勝ちし、2年ぶりの全米王者に輝いた。

 

 1月8日、ジョージア州アトランタのメルセデスベンツ・スタジアムで行われた全米大学体育協会(NCAA)フットボール部門ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)の王座を決める選手権決勝は、4校によるトーナメント制になってから初めて、南部の最有力組織「南東リーグ(SEC)」のアラバマ大とジョージア大の対決となった。

 前半はジョージア大が”2FGと1TDで13―0とリード。第3Qには80ヤードのパスプレーで追加点を挙げるなど、アラバマ大を圧倒した。

 

 アラバマ大は後半からQBを新人に切り替えるなどの手を打って反撃。第4Qにかけて2FGを決め、終盤にはTDパスで追いついた後、ジョージア大陣深く攻め込んでFGを狙ったが、このキックがそれて延長戦となった。

 先攻のジョージア大はFGを決めた後、QBサックでアラバマ大を大きく後退させた。優位を保ったかに見えたが、アラバマ大はその直後、新人QBのパスが成功して決着した。

 

 ジョージア大は好スタートを切った。アラバマ大先発の2年生QBジャレン・ハーツに対する読みが行き届き、そのドライブをほとんど釘付け状態にした。

 守備陣が健闘する間に1年生QBジェイク・フロムがリードするオフェンスは手堅く得点を重ねた。

 第1Q後半からいいリズムで攻め立て、第2Qに入ってすぐロドリゴ・ブランケンシップが41ヤードのFGを決め、7分37秒にも27ヤードのFGで加点。前半終了間際にはRBメコール・ハードマンがゴール前1ヤードから突進して、定評あるアラバマ大守備陣から計13点をもぎ取った。

 

 アラバマ大のニック・セイバン監督は後半、先発のハーツに代えて、QBに新人のタゴバイロアを起用した。

 11月18日、アラバマ大が一段格下のマーサー大に胸を出した試合をご記憶の方もおられるだろう。この試合を取り仕切り、56点を挙げたがこのQBだった。

 タゴバロイアは見事抜擢に応えた。ジョージア大のパス守備網に対し、成功14本で、166ヤードを稼ぎ出し、3TDを記録した。

 

 最初のTDは第3Q8分57秒、着実なドライブからゴール前6ヤードに迫り、WRヘンリー・ラグズへのTDパスを通した。

 ジョージア大はしかし、この直後フロムがハードマンへ80ヤードものパスを決めてTDを返した。相手の闘志を削ぐに足るビッグプレーだったが、アラバマ大は崩れなかった。

 全米屈指の堅い守りが息を吹き返し、同時に堅実な攻撃が徐々に力を発揮。第3Qの5分20秒と第4Qの9分28秒、アンディ・パパナストスが43ヤードと30ヤードのFGを決めてその差7点とした。

 そして残り3分56秒、ジョージア大ゴールに迫り、タゴバイロアがWRカルビン・リドリーへ7ヤードのTDパスを通して20―20と追いついた。このあとアラバマ大は残り2分55秒で「最後の」攻撃権を手にし、じわじわと前進した。

 

 10プレーをかけ、遂にゴール前26ヤード。FGには申し分のない地点だった。ジョージア大に攻める時間をただの1秒も与えず、必要な3点を獲得する、そんな勝利が目前だった。しかし、キックされたボールはポストの左へそれた。作り話のような結末である。

 こうして延長戦となった。ジョージア大は3プレー目、フロムがサックされて大きく後退。ブランケンシップが51ヤードのFGを決めてとりあえず3点を奪った。

 一方、後攻のアラバマ大もいきなりタゴバイロアがLBのデイビン・ベラミーとDEのジョナサン・レドベターにサックされた。16ヤードも後退する。ジョージア大としては「
してやったり」の思いだっただろう。

 

 だが続く第2ダウン、タゴバイロアはひるまず、左隅へ走るWRデボンタ・スミスへ41ヤードの決勝TDパスを通して26―23で劇的な勝利を手にした。

全米王座を獲得し喜ぶアラバマ大の選手たち(AP=共同)
全米王座を獲得し喜ぶアラバマ大の選手たち(AP=共同)

 

 

 それにしても、王座に対するアラバマ大の執念は他と比較してかけ離れたものがある。

 先に書いた通り4校のトーナメントはまだ4度目だが、4度とも出場しているチームは、唯一アラバマ大だけである。

 第1回こそ準決勝でオハイオ州立大に敗れたものの、2度目は準決勝でミシガン州立大、決勝でクレムソン大を倒して優勝。3度目の昨年は決勝でクレムソン大に屈した。そして今回である。

 

 4校トーナメントの前は、1998年からランキングの順位をもとに王座戦となるボウルゲームとその出場校を選び出し勝者を王者とした。

 2003年にSECのルイジアナ州立大と太平洋12大学の南加大が両者ともチャンピオンとなる事態が発生し、1年置いた05年からは2校による王座戦が始まった。これが13年まで続いた後、今の形となった。

 

 これ以前は、1936年にランキングによるチャンピオン制が始まり、さらにそれ以前は識者によるチャンピオンの選定と、あいまいなものだった。つまり最近までは王者を決めるための明確な仕組みはなかった。

 

 それでもNCAAのレコードブックには、アラバマ大の他を圧倒する回数が記されている。

 古くは20回という数字もあり、16回というケースもありで、いずれも理由があってのことだが、これをつつき始めるときりがないので見送りたい。

アラバマ大の優勝を喜ぶ、地元タスカルーサのファン(AP=共同)
アラバマ大の優勝を喜ぶ、地元タスカルーサのファン(AP=共同)

 

 ただ仕組みがはっきりし始めた98年以降を見ると09年、11年、12年そして一昨年、今年と5度を数える。すべてセイバン監督の指揮下での栄冠獲得である。

丹生 恭治 にぶ・きょうじ

名前 :丹生 恭治 にぶ・きょうじ

プロフィール:1934年生まれ。関西学院大学卒業後、東京新聞社で運動記者としてスタートし、1962年に共同通信社へ移籍。著書に、中学時代から関学で親しんだアメリカンフットボール生活を描いた「いざいざいざ」がある。甲子園ボウルには高校時代と合わせて6度優勝。

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