PR特別企画 撮って、より早く伝えて、残すこと 前編 共同通信社カメラマン・佐藤優樹さんが話すスポーツ報道の現場

 日常生活に関わるニュースから、事件や事故、政治経済、スポーツにいたるまで、さまざまな情報を早く正確に伝えるため日々奔走する報道カメラマン。中でも彼らが伝えた国際的なスポーツ大会の速報は、記憶に新しいところだ。決定的な瞬間を捉え、間髪入れずに情報発信するスポーツ報道の現場は、いったいどのようにして成り立っているのか。一般社団法人共同通信社で主に水泳の取材を担当する報道カメラマン・佐藤優樹さんに話を聞いた。

大会前、その日の1番重要なシーンを想像

報道カメラマン・佐藤優樹さん

 報道カメラマンの1日は長い。佐藤さんはいつも試合が始まる2時間前には会場に行き、場所取りの準備を始めるそうだ。

 「6月に行われた競泳のジャパンオープンでは、撮影ポジションは早い者勝ちでした。僕たちはその日の何が1番重要なシーンになるかを想像しながら位置決めをします。瀬戸大也選手や池江璃花子選手が出場したので、彼らがどのレーンで泳ぐのかという情報に基づき、事前に写したい画をイメージしておくんです」

1回あるかないかという撮影チャンス

カメラには2枚のCFexpressカードを挿して同時に記録

 ポジション取りが終わるといよいよ撮影が始まる。選手が見せる一瞬の表情を切り取るスポーツ写真。中でも競泳は撮影できる好機が少なく、難度が高いという。

 「競泳の撮影時は、いつも冷や汗をかいていますね。水泳は一見動きが速くないように思えますが、水の上からの撮影機会は、息継ぎをしている一瞬だけなんです。50メートルや100メートルといった短水路種目は、息継ぎの回数が少ないので特にプレッシャーがかかります。男子の50メートルは基本息継ぎなしなので絶望的。女子の50メートル自由形で息継ぎの撮影チャンスが1回あるかないか……。しかも、息継ぎをしている時は水しぶきが上がるので、画になるタイミングが少ないんです。注目の池江璃花子選手も短距離の自由形なので、非常に緊張しますね(笑)」

 スポーツ撮影の際は、秒間約16コマ撮れる高速撮影モードにしているという佐藤さん。1日の撮影枚数は膨大な数に及ぶ。そんな撮り逃しが許されない彼の仕事を支えているのが、サンディスクのメモリーカードの一つであるCFexpressカードだ。

 「スポーツで望遠レンズが必要な際、使用するカメラは3台。その各々にCFexpressカードを2枚ずつ入れ、撮影と同時にバックアップを取っています。1日で撮影する枚数は、競泳の予選だと3000枚程度。決勝時、選手の数は少なくなるのですが、競技後の喜びや悔しさの表情も撮影するので、プラス3000枚。合わせて1日に6000回ほどシャッターを切ります。以前はカードの容量が少なかったので、カードの予備を準備して交換するタイミングを考えなければなりませんでしたが、今は容量が大きく転送速度も速いので、不自由なく撮影できますし、不具合もありません。なによりも何枚撮れるのか考えずに、撮影に集中できるのが本当に助かります」

進化する撮影とカメラマンの心構え

サンディスク エクストリーム プロ® ポータブルSSD
水中カメラで撮影された写真のバックアップに使用

 近年は、水中カメラを使用した撮影も行われるようになった。今まで撮影することができなかった水中での選手の躍動感あふれる動きを捉えるためだ。大切な撮影データは、もちろんバックアップに余念がない。水中に設置されたカメラで撮影した写真は、ケーブルを通じてすぐにパソコンに取り込まれ、同時にサンディスクのポータブルSSDにバックアップされる。新たな撮影が可能になり、報道カメラマンの選択肢も増えた。しかし一方で、事前準備の重要性が増し、予期せぬ事態への対応力もより必要となったと言えるだろう。即時性を求められる現場だからこそ、あらゆる状況を想定して現場に臨んでいると佐藤さんは語る。

 「チームを組み何人かで撮影する場合は、こちらのカメラマンはこのレーンを狙おう、あちらからはこのレーンを、水中からはこのカットが押さえられるから……、と事前に打ち合わせをしていますね。出たとこ勝負の撮影で上手くいくことはありません。トラブルも含めて想定されることはすべて前もって考えておきます」

撮影1分後にはデータ送信することも

パソコンの背面には、すぐにデータを取り込めるようにカードリーダーを固定

 スポーツ報道の現場では、撮影後も緊張は続く。速報では撮影した写真にすぐにキャプションをつけ、画像をデスクに送らなければならないからだ。

 「本当に早く送らなければならない時は、PCを使わず直接カメラから写真を報道デスクに転送しています。カメラに音声を入れられる機能があるので、自分の選んだ写真に状況を声で吹き込み、キャプションがわりに送信することも。状況にもよりますが、キャプションを入れない場合は撮影後1分もかけずに送信する場合もあります」

 1秒でも惜しいシチュエーションで仕事をする佐藤さんは、カードリーダーにも報道カメラマンならではの工夫がなされている。また、記録媒体がコンパクトフラッシュカードからCFexpressカードに変わったことで、助かっている点もあるという。

 「机の上のような落ち着いた環境で作業出来ないため、ノートパソコンの背面にマジックテープでアクセサリ類を貼り付けています。絶え間なく訪れるシャッターチャンスの合間を縫って、今送っても大丈夫かな、と様子を見ながら急いでデータを取り込みます。だから、焦って手が震えてしまうこともあるんですよ。そうすると、コンパクトフラッシュではカードリーダーに刺すときに接続点のピンが曲がってしまい、データが読み込めなくなることがありました。でもCFexpressカードだと、ピンもなくカードリーダーに隙間がなく差し込めるので、すごく作業しやすくなりました」

デジタル技術の飛躍的進化によって多様な撮影や即座の情報発信できるようになった現在、その分報道カメラマンの現場は多忙を極める。失敗が許されない彼らを支えるために、カメラはもちろんメモリーカードをはじめ、カードリーダー、ポーダブルSSDなどの周辺機器も日々進化している。「より早く正確に記録し、後世にきちんと記録を引き継ぐ」。日々生まれる決定的な写真はカメラマンとメーカーのそんな想いの結晶なのだ。

(執筆・撮影:杉野正和)

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