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地域住民が支える コミュニティーバス 中山間地域の交通網 福祉車両を活用した取り組み -秋田県横手市-

 過疎化の進行により路線バスが廃止されるなど、住民の足となる交通網をどのようにして維持していくかは、中山間地域を抱える自治体の差し迫った課題だ。そんな中、秋田県横手市では、住民たち自身が運転するミニバスを走らせることで交通網を維持できないかと、社会実験を行っている。

地域住民が運営するコミュニティーバス

 秋田県南部に位置する横手市は、2005年に旧横手市・平鹿郡の1市 5町2村が合併。同年の人口は約104,000人だったが、2018年1月末時点で91,620人。進学や就職による県外へ出る若者も多く、2060年には総人口の4割超が65歳以上の高齢者となるとみられている。約693平方キロメートルの同市の中で、市の中心部から離れたところに広範囲に点在する集落では、2008年前後から路線バスの廃止が進んだ。同市によると、路線は3分の2、系統では半分に減ったという。


 横手市中心部から南へ約30キロの増田町は人口約7,000人。狙半内(さるはんない)地域から市の中心部への市営バス(市が運行を委託しているバス)は、現在は、火・木・土曜の週3日3往復、市から委託を受けた民間バス会社のバスが走る。この地域で昨年11月末から社会実験として始まったのが、自宅から所定の場所まで届けてくれるコミュニティーバス「ミニバス」の運行。トヨタ自動車から横手市に無償提供されている福祉車両を使い、民間バスが走らない月・水・金曜をカバーする。運行区間内においては、1回の利用料金は200円〜700円で、利用者からも「安くてありがたい」と喜ばれている。

 ミニバスの経営主体は横手市、運営主体は狙半内地域の6つの集落の共助組織。本来、自家用自動車での有償運送は、災害時などの緊急を要するとき以外は禁止されているが、過疎地域で公共交通の代替手段として認められる「自家用有償旅客運送」という形を取っている。運転手は、集落の会長、地域センターの会長など60歳以上の7人の有償ボランティアドライバーが担っている。社会実験の期間は7月いっぱいまでで、横手市は約600万円の予算を組んでいる。

住民たち自身が支える「地域の足」への期待

狙半内自治会・狙半内共同運営体会長の奥山良治氏

 有償ボランティアドライバーたちの取りまとめ役をしているのが、狙半内自治会・狙半内共助運営体会長の奥山良治さん(67)。ミニバスの車庫は奥山さん宅にあり、始発のミニバスの運転手は、飲酒反応の有無を含む体調面のチェックを受けてから、始発地点へ向かう。有償ボランティアドライバーたちは自分の仕事との掛け持ちだが、奥山さんによると、利用者たちに喜んでもらえることが、自らの喜びにもつながっているという。奥山さんも、「利用したおばあちゃんから、『(病院から離れた地点に住んでいても)そばにお医者さんがいるようで心強い』との激励の言葉をもらった」と笑顔を見せた。奥山さんは、「社会実験によって、様々なデータも得られる。住民の皆さんのニーズが分かり、次のステップへつながれば」と期待している。

 電話予約という形が、耳が遠かったり口下手だったりする高齢者にとってハードルが低くはなく、予約のしやすさが課題の1つだ。また、ミニバスの存在自体の周知も十分ではない。ミニバスの利便性を知ってもらおうと、チラシの配布なども行っているが、「定時で走らせることで、もっと存在を知ってほしい」(奥山さん)と話す。

 狙半内簡易郵便局の並びに住む利用者の女性は、83才まで同郵便局に勤めていた。2月中旬のこの時期、すぐ前の車道に出るまでの道も、すっかり雪に埋もれている。「夫は30年前に亡くなり、息子と嫁さんの3人暮らし。通院や買い物で週1回ずつぐらい街中に出る。ミニバスが家の前から病院の前まで行ってくれるのでありがたい」と話す。

 小栗山集落の別の利用者は自宅から路線バスが通る道までは、300メートルほどの坂道になっている。「車での送迎をしてくれた夫が3年前に亡くなってから、街中に出るのに不便を感じるようになり、近所の方の車に乗せてもらうなどしてきた。ミニバスは段差が少なく乗り降りしやすく、振動も少ないので乗り心地が良い。地域の足となってほしい」と、実験終了後も継続してほしいという希望を語った。

地域のニーズに合ったバスの運行モデルに

横手市総合政策部次長の村田清和氏

 横手市総合政策部の村田清和次長は、「今回、住民たちの共助組織がしっかりしている地域で、ドアツードアのミニバス運行の社会実験を試みた。住民たちに運転を担ってもらうという形が動いていくのか、挑戦的な意味合いも大きかったが、成功すれば地域のニーズに合ったバスの運行ができる」と期待を込める。横手市には、狙半内地域と同様に路線バスの減少による“交通空白地域”が現在あと2カ所あるといい、「平野と見まがうほど広い横手盆地に点在する集落の住民の足を、路線バス、代替交通(民間委託のバス)、デマンド交通、ミニバスを組み合わせてつないでいきたい。地域の雇用創出にもつながれば」。同ルートの民間委託バス運営にかかっている横手市の費用約550万円を半減させたいといい、「コストを削減することで、継続性にもつながる」としている。

過疎地域で高齢者同士が支えあう仕組みづくり

2列目のシートを1つ減らし、手すりは高齢者がつかまりやすい角度や太さになっている福祉車両「ウェルジョイン」

 トヨタ自動車の福祉車両は「すべての方に快適な移動の自由を提供する」ことを目指し高齢者や身体の不自由な方、あるいはそのご家族・介護される方をサポートする車両を提供している。今回使われている車両は「ウェルジョイン」という送迎仕様。大きな特長は、2列目のシートを1つ減らすことで3列目の人の乗り降りをしやすくし、手すりは高齢者がつかまりやすい角度や太さになっていること。乗降時に座席を移動させる必要がなくなることで、利用者だけでなく、運転手の負担を軽くすることも考えた設計だ。日本は少子高齢化が進み、総務省によると2025年には、後期高齢者(75歳以上)1人を現役世代(20~65歳)3人で支える時代がやってくる。同車を開発したトヨタ自動車CVカンパニー CV製品企画 ZU2 主査の中川茂氏は、「過疎地では特に、前期高齢者(65~74歳)が後期高齢者を支える仕組みづくりが必要になってくる。高齢の方々の行動や活動を狭めないために、ウェルジョインが役立ってほしい」と話す。

 過疎化が進んで生活上の不便さが増しても、生まれ育った地域で暮らし続けたいという高齢者は多い。地域の実情に合わせて、住民たちが地域の交通を支える仕組みづくりを試みる、横手市の取り組みの今後が注目される。

提供:トヨタ自動車
文責:株式会社共同通信社
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