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特 集

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 北海道岩内町は、積丹半島の付け根に位置する港町で、札幌市から西に約100キロの距離にある、タラコやアスパラガスが特産の漁業と農業の町だ。洋画家の木田金次郎を輩出し、有島武郎の小説「生まれ出づる悩み」の舞台になっている。人口は約1万3500で、生のオーケストラ演奏に住民が触れる機会は多くない。

 そこで札幌地区トヨタ販売会社グループと、市民オーケストラの「札幌フィルハーモニー管弦楽団」が、町のボランティア組織の全面協力を得てコンサートを開くことになった。

 コンサートが開かれた10月25日の岩内町は最高気温が5度。日本海から強い西風が吹き、前夜からの雪が時折舞う荒天に。しかし会場となった岩内地方文化センターは満員の観客で埋まり、拍手と感動の熱気に包まれた。「トヨタコミュニティコンサート in いわない」を現地取材した。

(47NEWS編集長 東 哲也)

 

団長さんは医師

約70人のオーケストラは迫力満点
約70人のオーケストラは迫力満点

 札幌フィルハーモニー管弦楽団は1971年に設立。北海道を中心にコンサート活動を展開している。約70人いる団員は年齢が10代から70代までと幅広く、職業もさまざま。楽団の団長でビオラ担当の田中利明さん(60)自身は循環器科が専門の医師で、長沼町立長沼病院の副院長が本職。週1回の練習中にも、病院のドクターから患者の処置についての相談電話が時折かかってくる。「本番中だけは勘弁して」と言ってあるそうだ。

 コンサート前日の24日夜、楽団員が宿泊する温泉旅館で歓迎会が盛大に開かれた。岩内町の教育長、町議会議長さんも出席し、まさに町を挙げての歓迎ぶり。

 受け入れ側のボランティア組織「若旺会」の吉本正則会長は地元建設会社の社長さんだ。「港町の岩内は普段は〝演歌の町〟で、住民がクラシックを聴く機会が少ない。楽団の皆さんを心から歓迎します」と冗談を交えて挨拶した。

 いよいよ本番。「小中高生のためのわくわくオーケストラ入門」と題された午前の部は、岩内町にある2つの小学校の児童、2つの中学校と道立岩内高校の生徒を対象にした無料コンサート。町の教育委員会は4小中学校を特別に授業扱いとした。

 モーツアルトの歌劇「魔笛」序曲、ビゼーの「カルメン」から「闘牛士」、チャイコフスキーの「白鳥の湖」から「情景」など、なじみのある曲が演奏されると、児童・生徒は生演奏の迫力に圧倒された。

 オーケストラの楽器紹介コーナーでは、フルートやトランペット、バイオリンなど個別の楽器の名前と、その楽器が奏でる一つひとつの音に耳を傾けた。ファゴット、チューバなどあまり聞き慣れない楽器の紹介にも目を輝かせた。

地元ゆるキャラの「たら丸」が登場すると大きな歓声が
地元ゆるキャラの「たら丸」が登場すると大きな歓声が

ゆるキャラに大歓声

 一番大きな歓声が上がったのは、岩内町のゆるキャラ「たら丸」がいきなり登壇した時だ。この「たら丸」、スケトウダラをモチーフに、ねじり鉢巻きにゴム長靴というバリバリの漁師スタイルにタラコ唇。全国ゆるキャラコンテストで準優勝したこともあるそうだ。

 児童の黄色い声援を受けた指揮者の「たら丸」は、「闘牛士」の曲を、1メートルぐらいある特産品のアスパラガスのおもちゃをタクト代わりに、ゆっくり振ったり、早く振ったりする。指揮にしたがって曲のスピードが変わるのがおかしく、会場は笑いの渦に。

〝あなたも名(迷)指揮者コーナー〟でタクトを振る小学校の女児
〝あなたも名(迷)指揮者コーナー〟でタクトを振る小学校の女児

 「たら丸」に続けとばかりに行われた〝あなたも名(迷)指揮者コーナー〟には、実際にオーケストラを指揮してみたい児童・生徒が何人も「はーい」と元気よく手を挙げた。選ばれてステージに上がったのは、小学1年の女児と中学3年の男子生徒。指揮者がどのようにタクトを動かすかによって、オーケストラの音楽は大きく変わる。女児は時折はにかみながらも、約70人のオーケストラを見事指揮し、大きな拍手を浴びた。

 リズムが良いエルガーの「威風堂々」の後は、東日本大震災復興の応援ソングである「花は咲く」。オーケストラの音楽を伴奏に、岩内高校吹奏楽局の6人がステージで歌った。

 サプライズは、小学校2校の校歌。オーケストラの演奏に合わせ、児童たちは元気よく声を出していた。アンコールは「ラデツキー行進曲」。観客全員が拍手でオーケストラを盛り上げた。

 午後の部は、町民を対象にした有料コンサートとなり、これもほぼ満員。「白鳥の湖」は、岩内高校3年の笹原ゆき恵さんがナレーターを務め、オーケストラの音楽に合わせて、物語の展開を流ちょうに説明してくれた。バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」や、美空ひばりの名曲「川の流れのように」も演奏され、観客から惜しみない拍手が送られた。

 

コンサート

 

楽器の振動を感じること

会場の岩内地方文化センターは満員に
会場の岩内地方文化センターは満員に

 指揮者の板倉雄司さんは、札幌創成高校の教師でもある。オーケストラの演奏を聴くことの意義をこう語ってくれた。

 「今の若い人は音楽を聴こうと思えば、CDやYouTubeで手軽に聴けます。しかし生演奏に接する機会は少ない。コンサート会場で実際に楽器の振動を感じることは、価値があることだと思います」

 公演後、何人かの児童に感想を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「ハープの音色が本当にきれいで、びっくりした」

「楽器がたくさんあって、すごく迫力があった」

「指揮者の振り方によって、曲が早くなったり、遅くなったりするのがとても面白かった」

 

「トヨタコミュニティコンサート in いわない」は大成功だった。

 

北海道岩内町ホームページはこちら

 「たくさんの人たちに、もっと気軽に音楽とふれあっていただきたい」「なかなかコンサートに行けない方々に、オーケストラの生の演奏を聴いていただきたい」そんな願いを込めて、トヨタ自動車と全国のトヨタ販売会社グループは毎年、全国各地でトヨタコミュニティコンサートを開催し、喜びと感動を届けている。1981年に始まってこれまでに全国45都道府県で1529公演を行い、のべ122万人の聴衆を集めた。

 コンサートは、地域ニーズを反映して(1)アマチュアオーケストラにとってチャレンジングな企画内容の「チャレンジ公演型コンサート」(2)生の演奏を聴く機会が少ない地域にアマチュアオーケストラが出向いて体育館・病院などで演奏する「移動・訪問コンサート」(3)青少年や高齢者・障がいのある方などをお招きする「招待コンサート」の3つのタイプを開催。今回の岩内町のコンサートは(2)の「移動・訪問コンサート」に当たる。

(了)

 

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