シマダグループは、東京・世田谷の米屋「島田精米店」に端を発し、1960年に戸建て住宅の開発分譲から不動産事業へ参入した。
その後、分社化を進めながら事業を拡大。現在はシマダグループとして、戸建て事業・賃貸管理事業などの不動産から、介護施設、ホテル、保育、旅行、飲食店、酒蔵まで多様な事業に取り組んでいる。
といっても、やみくもに事業の幅を広げてきたのではない。事業の2大柱は、”住まい“と”お米”。主軸である賃貸アパート・マンションは住まいの筆頭。介護施設は“終の住まい”であり、ホテルや飲食店は“住まう”時間を極限まで短くしたもの。そして米屋のDNAは飲食店や酒蔵に活かされている。
「手広くやっているように見えるかもしれませんが、通底するのは『いい時間(とき)の素をつくる』ための事業だということ。場所によって過ごす時間の長さが違うだけです」とシマダアセットパートナーズの佐藤悌章社長は力を込める。
シマダアセットパートナーズの佐藤悌章代表
シマダアセットパートナーズはグループの中核事業である投資用不動産開発や不動産再生事業を担っている。投資用不動産としては賃貸アパート・マンションを中心に年間20棟前後を開発。そのほかにも介護施設15施設、ホテルなど宿泊施設7棟、飲食店17軒、保育園2園などを手がけてきた(2022年2月時点)。ゼロから創り上げる新築のほかに中古物件のリノベーションもおこなっており、シマダアセットパートナーズが再生しなければ壊されてしまった建物も多い。
施工前は廃墟と化していた建物が施工後は「HOTEL&RESIDENCE 六本木」として再生
「私たちは建物を生き返らせたいという思いでやっています。少し大それた言い方をするなら、生き返らせた建物を重要文化財にしたい。長い間、人に愛され続ける場所をつくりたいのです。
基本的に日本の建物は頑丈です。メンテナンスすればあと何十年も使えるはずなのに、経営的な理由で壊されてしまう建物があるのはもったいないなと。
ヨーロッパは古ければ古いほど価値があるという考え方があるので、築400年くらいの分譲マンションもあります。日本も歴史の長い国なので、そんな価値観が根付いていても良いと思うのですが、どちらかというと規模や性能が優先されがちかもしれませんね」(佐藤氏)
「bar hotel箱根香山」(神奈川県足柄下郡箱根町)
単に建物を生き返らせるだけでなく、“オンリーワン”な建物として再生させているのも特長だ。たとえば神奈川県箱根町にあった企業の保養所をリノベーションして開設した「bar hotel箱根香山」は、「barに泊まる」という今までにないコンセプトを掲げたホテル。箱根の宿泊施設といえば、温泉と料理を楽しむ和風旅館が一般的だが、ここでしか過ごせない特別な時間を提案している。
「箱根で割烹旅館も悪くないと思います。でもそれは、私たちにとってオンリーワンではない。誤解を恐れずにいえば、私たちは万人受けする建物は造らないと決めているのです。
事業を大きくしたいなら、同じような建物を増やすのが手っ取り早いし簡単ですが、私たちはほかにはない新しい価値を提供することに重きを置き、常に新しい挑戦をしています」(佐藤氏)
「ROPPONGITERRACE」(東京都港区)
居住用建物の設計においても“オンリーワン”を追求している。戸建てのブランド「悠々自宅」は、自宅の一部を賃貸に貸し出せるようなユニークな間取りが特徴。賃貸マンションも全室同じ間取りではなく、ひとつの建物内にワンルームやメゾネットなど多様な住戸が混在しているのがおもしろい。
こうしたオンリーワンな物件は国内外からの評価も高い。賃貸マンション「マツバラハウス」(東京都世田谷区)は世界3大デザイン賞のひとつ「iFデザインアワード2021」(建築部門)を受賞。国内においては「グッドデザイン賞」(日本デザイン振興会主催)を8年連続、21物件が受賞。2021年にはオフィスビル「ROPPONGITERRACE」(東京都港区)がグッドデザイン・ベスト100にも選出された。
同社にかかれば、介護施設さえも病院のような寒々しい感じではなく、洗練された温かみのある空間になる。
サービス付き高齢者向け住宅「ガーデンテラス相模大野」(神奈川県相模原市)がその一例。企業の独身寮が老朽化していたところを、近年ニーズが高まる高齢者住宅へと生まれ変わらせた。
建物の老朽化や高齢化といった社会課題をデザインで解決しようという取り組みが評価され、2016年度グッドデザイン賞も受賞している。
「ガーデンテラス相模大野」外観(神奈川県相模原市)
「介護施設は、終の“住まい”として有意義な日々を送ってもらいたいという思いで設計しています。施設というより、“高齢者の方のシェアハウス”と言い換えたほうがしっくりくるかもしれません」(佐藤氏)
ホテル開発も手がけているため、洗練されたデザインは同社の得意とするところ。不必要に華美にしすぎることなく、それでいて心地よい空間を実現した。料金も年金で利用できる程度に抑えられている。また、見た目や雰囲気のみならず、暮らしやすさも考えられている。
「ガーデンテラス相模大野」中庭(神奈川県相模原市)
「たとえばホテルのような毛足の長いカーペットは車椅子を押しにくく、介護施設では不便です。介護施設を運営しているのもグループ会社なので、そうした現場の声を聞いて、設計に反映することができます」(佐藤氏)
不動産の取得や建築設計だけでなく、運営管理や売却まで一気通貫でおこなっているのはシマダグループの大きな強みだ。賃貸管理業では東京の城南・城西エリアに約8000室を管理。仲介はせず管理に特化し、幅広く入居者を募集しているため、常に高い入居率を誇っている。
「ガーデンテラス相模大野」はシマダアセットパートナーズの不動産小口化商品「ジャストフィット」の対象物件でもある。
不動産小口化商品(任意組合型・金銭出資)とは、少額で出資できる不動産投資商品のこと。現物不動産を所有している場合と同様の不動産税制が適用されるのがメリットだ。「ジャストフィット」は1口100万円から出資して、大規模不動産の共同オーナーになれる。 「当社は年間20棟前後の投資用不動産を開発してきました。お客さまの多くは、億円単位で相続対策が必要な方々です。『ジャストフィット』はもともと100万円単位の相続対策が可能な調整用商品として開発したものですが、今では純粋な投資目的の方からもご評価いただいております。オンリーワンな建物は、一度見れば気に入っていただける自信もあります」(佐藤氏)
不動産小口商品として、オフィスビルや賃貸物件は一般的だが、「ガーデンテラス相模大野」のような介護施設は珍しい。シマダグループが1棟丸ごと借り上げて運営をしているため、入居率に左右されず配当が一定なのも特長だ。
「おかげさまでガーデンテラス相模大野は完売しましたが、今後も介護施設や賃貸マンション、ホテルなどさまざまな商品を開発していく予定です。ホテルへの投資をきっかけに現地へ遊びにいくような新しい旅のスタイルも生み出せるのではないかと考えています。今後の『ジャストフィット』にもどうぞご期待ください」(佐藤氏)
一級建築士、不動産証券化協会認定マスター。東京理科大学卒業後、豪州を放浪。1996年シマダハウス株式会社入社。
2007年シマダアセットパートナーズ株式会社設立、専務取締役に就任。
2019年より現職。
商号・登録番号 シマダアセットパートナーズ株式会社 不動産特定共同事業者 東京都知事 第154号