働き方改革グッドプラクティス2021 全国各地の中小企業の積極的な取り組み事例12選

活発な意見交換の後、12事業者を選んだ「働き方改革グッドプラクティス2021」選定委員会

多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指す「働き方改革関連法」は、施行3年目を迎えました。国内雇用の約7割を担う中小企業・小規模事業者においても、「働き方改革」の着実な実施が求められています。

前年度に引き続き、全国社会保険労務士会連合会の主催により、全国各地で中小企業・小規模事業者の相談に応じて、労務管理の専門家である社会保険労務士が支援した事例の中から、「働き方改革グッドプラクティス2021」として選定された12事例がこのほど発表されました。

今年度は85の応募事例の中から書類審査で絞り込まれた24事例を、有識者3人の選定委員会(今野浩一郎学習院大学名誉教授(座長)、水町勇一郎東京大学教授、松浦民恵法政大学教授)が審査し、「労働時間・休暇」「同一労働同一賃金」「効率化・改善」の3部門各4事例を、グッドプラクティス(手本)として選びました。

新型コロナウイルス感染症の影響により、中小企業にとってはかつてない厳しい状況が続く中、独自の発想や工夫によって「働き方改革」に取り組み、魅力ある職場を実現した事例を紹介します。

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講評

今野浩一郎・学習院大学名誉教授

今野浩一郎・学習院大学名誉教授

多くの小規模事業所、中小企業の参考になる好事例が集まった。就業規則の整備など基本的な法令順守の観点だけではなく、企業の生産性を高める働き方改革本来の目的に沿った取り組みが増えつつある。働き方改革への理解は“深化”している。今回のグッドプラクティスが手本となり、改革への理解がさらに深まることを期待したい。

「効率化・改善部門」では4社が選定された。共栄は仕事の「見える化」を「共有化」につなげる動きが注目される。島崎歯科医院は、業務の無駄を職員と一緒に洗い出した社内コミュニケーションが優れている。システミクスが導入した社員の能力向上を促進して会社の業績につなげる評価賃金制度と、TSSソフトウェアのテレワークを推進する総合的な対応は、いずれも参考になる事例だ。

水町勇一郎・東京大学教授

水町勇一郎・東京大教授

4社は現場の悩みを吸収・反映させ、改善に取り組んだ。同一労働同一賃金が正規雇用者を含めた賃金制度改革につながり、各社の実践に敬意を表したい。

外国人技能実習生の同一労働同一賃金を進めた大津建設は、諸手当や福利厚生のほか基本給も検証した。職務分析・評価を取り入れ、人事考課に基づく賞与支給も行った点は高く評価できる。エヌ.エフ.ティは自主点検ツールなどを活用し賃金を分析。個別面談で合意形成を図ったことが従業員満足度の向上につながった。

デジタル印刷は各種手当の支給基準を「見える化」し、待遇を説明可能にした。専門家のアドバイスを得て従業員への説明を重ね、成果によって賃金が上がる仕組みをつくった。は正規雇用者を含めた職務内容を再確認し、内容に応じた待遇の実現を図った。非正規雇用者にも職務区分を設け、職務と待遇の関連付けを行ったのは画期的だ。

松浦民恵・法政大学教授

松浦民恵・法政大教授

時間外労働の上限規制の適用が5年間猶予された事業・業務を含む4社が選ばれた。2024年4月からの適用に危機感を持って前倒しで取り組んだことが高い評価につながった。

奈良県合同陸運は、変形労働時間制の見直しに加え、勤怠管理システムも導入し、制度と運用の両面で、より安全で効率的な運行に向けた改善を図った。舘野建設は工期の調整が困難な中、強いリーダーシップの下で、土日が休日の完全週休2日制への変更を実現し、休暇取得も推進した。

大柳電気では、完全週休2日制実現に向けた課題解消をゲーム感覚で進めたほか、社長が従業員と1対1で面談して、ワークライフバランスを率先垂範するといったユニークな取り組みで好循環が生まれた。石澤工業はベテランと若手の管理者に、相談しやすい体制整備や勤怠データの「見える化」が、時間外労働削減などの成果につながった。

主催者あいさつ

全国社会保険労務士会連合会 大野実会長

全国社会保険労務士会連合会 大野実会長

本年度のグッドプラクティス事業には、全国各地から85件という多数の応募がありました。本年度の応募事例を見ますと、コロナ禍において、様々な課題を抱えて苦心している事業所に対して、全国の社労士が様々な視点から助言や提言等を行い、中小企業の経営者・従業員から感謝されている姿が見受けられます。

私も社労士の一員として、大変喜ばしく感じております。

本年度の応募事例の特徴としては、「働き方改革に対する企業の認識が深まったことにより、職場環境の改善や生産性向上に対する取り組みが進展していることを反映して、”効率化・改善部門“の応募が多かったこと」「初めて農業から応募があったことなど、様々な業種からの応募や、小規模事業所の取り組み事例が増えたこと」「企業代表者や社員の反応がより具体的になっていること」といった点が挙げられると思っています。

「働き方改革グッドプラクティス2021」の選定事例が、47NEWSや支援事例集などの積極的な広報等を通じて、全国各地の中小企業にとって参考になる好事例として広く深く浸透していくことを期待しております。