伊藤典章社長
介護業界は社会的に重要な仕事であるにもかかわらず、給与の低さや離職率の高さなどの問題が指摘されている。非正規雇用労働者も多く、待遇改善が重要な課題だ。
高齢者向け介護事業を手掛けるソルヘム(鳥取県琴浦町、伊藤典章社長)では、社員264人のうち、非正規雇用労働者が80人働いている。
同社が運営しているグループホームなどの介護施設は365日、24時間の対応が必要だ。待遇面の問題だけではなく、まとまった休暇が取りにくいこともあり、毎年、退職者が出ていた。
働き方改革サポートオフィス鳥取に支援を依頼し、社会保険労務士の尾崎宏之氏から助言を受けた。
給与面では、各種手当の趣旨や目的を整理。不合理な差はなかったが、さらなる改善のため、ハローワークの情報や同業他社の給与を参考に再構築した。夜勤手当をアップし、正月勤務の特別手当を新設するなど待遇改善を実現した。
「労務関係・処遇改善委員会」に参加する労使メンバー=11月
職員の紹介で新規採用が決まった場合、報奨金を支給する制度も取り入れた。職員の椿美乃里さんは「介護職の人材確保が難しい中、報奨金制度は事業所・職員の双方にメリットがある」と語った。
職員もメンバーとなる「労務関係・処遇改善委員会」を月に1回程度開催し、待遇改善など職場環境について話し合う。
ソルへムの高見浩専務は「労使双方で話し合うので納得を得られやすい。社内の雰囲気も変わってきた」と感じている。
まず初めに会社が支給している各種手当の趣旨、目的を整理した。雇用形態別の比較シートに、支給の有無を書き出すことで全体を俯瞰することができ、何から取り組めばよいか考えることができた。内容を検討した結果、不合理な待遇差がないことが確認でき、さらなる待遇改善につながった。待遇差を説明できない場合、労使で話し合いをしながら改善していくことが大事だ。