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2020 働き方改革グッドプラクティス 全国中小企業の積極的な取り組み事例9選

活発な意見交換の後、9事業者を選んだ「働き方改革グッドプラクティス2020」選定委員会

多様な働き方を選択できる社会の実現を目指す「働き方改革関連法」は2019年4月に施行され、徐々に適用範囲が拡大されて、20年4月からは中小企業にも、罰則付きの時間外労働の上限規制が適用され、さらに21年4月からは正社員と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止規定が適用されます。

全国の企業の多くは、新型コロナウイルス感染症の影響により、かつてない厳しい状況下にありますが、こうした中でも全国各地で独自の発想や工夫によって「働き方改革」に積極的に取り組んでいる中小企業が数多く存在します。

「働き方改革グッドプラクティス」は優良事例を発掘して、その取り組みを全国に広く紹介し「働き方改革」の着手・実践につなげていくことを目的にしています。厚生労働省の「中小企業・小規模事業者等に対する働き方改革推進支援事業(専門家派遣事業)」の一環として、全国社会保険労務士会連合会が運営・実施しました。

20年10月より派遣専門家からの推薦を募り、今野浩一郎学習院大学名誉教授(座長)、水町勇一郎東京大学教授、松浦民恵法政大学教授の3名からなる選定委員会で協議の結果、「労働時間・休暇」「同一労働同一賃金」「効率化・改善」の3部門について以下の9事業者が選ばれました。

講評

今野浩一郎・学習院大名誉教授

今野浩一郎・学習院大名誉教授

働き方改革の出発点は労働時間を正確に把握し実態を「見える化」することだが、選定した中小企業の多くは労働時間など勤務実態を正確に把握できる「勤怠管理システム」を導入している。
変形労働時間制を採用し個別のシフト勤務体制を実現した新小山市民病院は勤怠管理システムを導入して、長時間勤務者の早期把握に努めるなど一定の成果を挙げた。実態を正確に把握する勤怠管理システム導入の重要性が良く分かる事例だ。

同一労働同一賃金を実現するには、現状の待遇がどうなっているか、きちんと点検することがまず重要だ。点検して現状を従業員に説明できるようにしておき、問題点があれば、今後どうしていくかを考えればよい。

中小企業がいきなり同一労働同一賃金の本格的な「制度設計」をすることは難しい。現状の点検から始めれば、なんでこんな待遇があるのか、どういう理由でこんな待遇になったのか考えることになる。アスティは待遇差をその理由までさかのぼって整理検討し、均衡待遇の確認作業を円滑に進めることができた。参考になる取り組みだ。

長時間労働を改善する上で、従業員が帰社予定時刻を自己申告する丸五商会の取り組みは評価できる。この取り組みは従業員一人一人に1日の仕事をどう回すか意識させる。自分の中で仕事を見える化する優れた試みだ。

水町勇一郎・東京大教授

水町勇一郎・東京大教授

働き方改革関連法が施行され、これまでにない取り組みが求められる中で、この改革を生産性向上にうまく結び付けている中小企業が選ばれた。

いずれも専門家としての社労士が法順守の観点にとどまらず、改革に対する従業員の理解・納得を促す作業にも関わっている。納得した従業員のやる気は高まり生産性は向上した。専門家の関与はとても重要だ。

岩手自動車学校は、職務分析や職務評価を丁寧に行い、賃金制度全体のバランスを考慮した結果、定年後の再雇用者に対し賞与を支給することができた。日本全国で長年働きながら定年後賞与がなくなる再雇用者の不満は強い。こうした中、定年後再雇用者のやる気につながる賞与の実現は、大変意味のある取り組みだ。

正社員や準社員、パートタイム、嘱託という多様な雇用形態を採用する戸田屋は、それぞれの雇用形態の各種待遇を一つ一つ丁寧にチェックして整理し、全体バランスの取れた待遇改善を実現した。結果を従業員に説明できる体制を整え、従業員の納得ややる気、定着につながる基盤を作った点も評価できる。

こやなぎ内科循環器科クリニックは、正社員と非正社員を区別することなく年1回人事評価し、両者間の均等待遇に努めている。非正社員の人事評価をきちんとやっていない中小企業が多い中、重要な取り組みだ。さらに正社員と非正社員の待遇の「見える化」を実施したことで、従業員と院長のコミュニケーションが活発化した良い効果も生まれている。

松浦民恵・法政大教授

松浦民恵・法政大教授

選ばれた社は、いずれも専門家の社労士の助言が経営者に届き、経営者が従業員とコミュニケーションを取りながら実際にものごとを変えている。働き方改革への思いを従業員が持っていることはとても大切なことだ。

高木歯科クリニックは年休5日取得義務化のための計画年休を導入したほか、勤怠管理システムを導入して出退勤の効率的管理を図った。計画年休の導入で「1年計画が立てられるようになった」との従業員の言葉は非常に重要。従業員にとっては大きな変化だったはず。労使が良く話し合いコミュニケーションを深めて取り組みを進めた点も評価できる。

社労士の提案を受けてクラウド型の勤怠管理システムを導入したみつえでは、従業員一人一人の“時間意識”が高まった。職場が「時間意識の高い働き方」に転換された。従業員は従来より積極的な接客応対をするようになり、時間帯別の入浴者数目標を定めるようになった。時間管理の改革が顧客サービスの変化を生んだ成功事例だ。

ソルヘムは、各種手当の趣旨・目的をすべて洗い出して整理し、同一労働同一賃金の実現に向けた第一歩を確実に歩み出している。点検の結果、正社員、非正社員ともに「不合理な待遇差がない」ことを確認した点は大きい。介護職不足の中、報奨金制度を設けて介護職に報いている点も注目される。

主催者あいさつ

全国社会保険労務士会連合会 大野実会長

全国社会保険労務士会連合会 大野実会長

全国の社労士が、企業への訪問サービスなどにより、中小企業の「働き方改革」の取り組みを支援しておりますが、中小企業の中には、まだまだこの国による支援制度を知らなかったり、社労士に相談することをためらったりしているという実態があります。そうした中小企業に対して、身近な相談事例として、「グッドプラクティス」を紹介することにより、このチャンスをとらえて、社労士に気軽に相談していただけることを期待しています。

応募事例を見てみると、新型コロナウイルスの影響が続く中でも元気で頑張っている事業者が多いことに大変勇気づけられます。どの事例も、社労士の労務診断とアドバイスのもとに、経営者と従業員が情報を共有して、共通の目的を達成するよう取り組んでおり、多くの場合、円滑な社内コミュニケーションが成功の秘訣ではないかと思われます。選定された事例を全国の事業者に知ってもらい、働き方改革の実現に向けた活動が日本中に広まり、定着することを願っています。