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女性社員のパフォーマンス低下 実は女性ホルモンのせい?大塚製薬株式会社

 「働く意欲はあるのに朝から憂鬱」「女性部下の働きにムラがある」。このような悩みを抱える女性社員や男性上司の皆さん、実は女性ホルモンの波が原因かもしれません――。そう説くのは、大塚製薬ニュートラシューティカルズ事業部の「女性の健康推進プロジェクト」リーダーで、女性の身体と健康について企業向けの出張セミナーを行っている西山和枝さんだ。職場の理解が十分とは言えない中、女性の昇進を阻む要因の一つにもなっているという。この問題について西山さんに聞いた。

女性指導者「3割目標」先送りの衝撃

女性指導者「3割目標」先送りの衝撃

大塚製薬で「女性の健康推進プロジェクト」のリーダーを務める西山和枝さん

 2016年4月、少子高齢化に伴う労働力不足などを背景に、女性登用に関する行動計画の策定を企業に義務づける女性活躍推進法が施行されました。

 それから間もなく5年。政府は、指導的地位(管理職)に占める女性割合を3割へ引き上げる目標の達成時期を2020年度から先送りしました。

 男性中心の職場風土からまだまだ脱却できないなどの理由もありますが、月経前後の体調不良や更年期障害といった女性特有の健康問題が影響していることも考えられます。

 女性は生涯にわたって女性ホルモンのゆらぎに翻弄(ほんろう)されます。特に、更年期といわれる閉経前後の10年間は、急激なホルモンの低下に身体が順応できず、心身に様々な不調が生じます。これがいわゆる更年期症状です。

 また、若い世代でも乳房痛やむくみ、イライラや憂鬱といった精神症状を引き起こす月経前症候群(PMS)や、月経時の生理痛などを感じており、実に女性の5割が「仕事のパフォーマンスが半分以下になることがある」とインターネット調査で回答しているほどです(※1)。

 また、PMSや更年期障害で昇進に影響があったかを女性に尋ねたインターネット調査によれば、辞退しようと考えたことがあると回答した人がいずれも6割を超えました(※2)。

 法律が整っても、女性が健康に不安を抱えたままでは女性活躍は進まないかもしれません。

 企業は女性に長く働き続け管理職を目指してほしいと思うのであれば、女性社員の健康について考えていただきたいと思います。

 企業が女性の健康を重要視すれば労働生産性が上がり、業績も向上し、健康経営の質が高められるとも言います。企業は投資と思って女性社員のヘルスケアに力を入れてほしいものです。

 さらに2018年、経済産業省が顕彰する「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定要件の中に、「女性の健康保持・増進に向けた取り組み」という項目が追加されました。

 最近の学生は就職先を選ぶにあたり、「ホワイト企業」なのかどうかも重視しているようです。ホワイト500に選ばれることによって優秀な女性人材の獲得にも寄与すると言えるでしょう。

リテラシーを向上してセルフケアを

リテラシーを向上してセルフケアを

日本人はヘルスリテラシーが低い国民と言われており、大塚製薬ではヘルスリテラシー向上の為に、社員やその家族を対象に女性の健康セミナーを実施したり、啓発動画をイントラネットに掲載したりしています。

 ヘルスリテラシーとは健康情報を入手して理解すること。さらに情報を評価し、活用するための知識や意欲、能力を備えることです。

 まずは情報を入手し、自分の症状に気づき、そして対処していきましょう。このサイクルを上手に回せる人ほどより健康になれると言われています。

 ヘルスリテラシーの高い人ほど、仕事でのパフォーマンスも高いという研究結果もあります(※3)。我慢すれば何とかやり過ごせる辛さであっても、せっかく仕事をしているのなら本来のパフォーマンスを発揮して評価されたいものです。

 しかし、女性特有の不調に悩む人は多いにもかかわらず、「我慢すれば大丈夫」と婦人科を受診しない人が少なくありません。日本では婦人科に行くことに抵抗を感じる人が多いようです。

 私は大豆を乳酸菌で発酵したエクオールを含有する女性向けサプリメントも担当しており、女性と話す機会が増えましたが、女性特有の健康問題やホルモンの働きについて十分に理解していない方が想像以上に多いと感じました。そこで、まずはヘルスリテラシーを高めてもらおうと、2015年から企業向けの出張セミナーを始めることにしたのです。

 大塚製薬では、セミナーに参加していただいた方限定で、専門医が監修するニュースレターをお送りしています。また、「更年期ラボ」というウェブサイトを運営し、女性の健康に関する情報を広く提供するだけでなく、不調や症状について相談できる医療施設を検索できるようにもしています。ぜひご活用ください。

 女性のヘルスリテラシー向上だけでなく、企業側の理解も不可欠でしょう。メンタルヘルスや禁煙、メタボリック症候群などの対策に力を注ぐ企業は多いのですが、女性の健康管理に力を入れているところはまだまだ少ないのが現状です。

 男性社員の理解も非常に重要です。例えば、「辛そうだからちょっと休んだら」とひと声かけるだけでも、女性社員は気持ちが楽になります。

 小学校で月経の授業の際、男子と女子を分けて教える学校もあり、こういった状況が女性特有の健康問題をタブー視する原因のひとつになっているとも言われています。

 これからの時代は女性が自身の不調について話しやすい雰囲気づくりが求められます。環境が整えられれば女性が明るく元気になり、家庭も企業も円満になれるのかなと思います。

西山和枝(にしやま・かずえ)

1990年大塚製薬入社。2015年から女性の健康推進プロジェクトリーダー。日本女性医学学会認定 女性ヘルスケア専門薬剤師。女性の健康経営(マネジメント)アドバイザー

  1. ※1 NPO法人日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査(2018)」
  2. ※2 ホルモンケア推進プロジェクト調べ
  3. ※3 同

婦人科通院「もう恥ずかしくない」

婦人科通院「もう恥ずかしくない」

ファミリーマートの人事部副部長の中村幸恵さん

 西山さんのセミナーを受講した人はどのように受け止めたのだろうか。昨年12月にファミリーマート本社(東京都港区)で開かれたセミナーの受講者に感想を聞いた。

 「女性特有の症状について『我慢すべき』と思っていたが、うまく付き合う方法を探していこうとポジティブに捉えられるようになった」。本社で勤務する20代の女性はこう振り返る。

 女性は以前からPMSや生理痛などの症状で婦人科に通院しているが、他人に話すことには抵抗感があったという。

 しかし、セミナーで婦人科に通う女性が少ないことを知り、「私のように戸惑いを感じる人が多いからではないか。悩みを抱える友人に婦人科に通うメリットを伝えたい」という。

 岐阜県の営業所で所長を務める40代の男性は「女性の体調変化について意識したことはあまりなかった」と明かす。

 しかし、会議で普段より発言が少なかったり、業務中に集中力を欠いたりする女性社員を見つけ、女性特有の健康管理について関心を持つようになったという。「今後さらに見識を広げ、行動の変化につなげていきたい」と話す。

 ファミリーマートは女性社員の比率が低いのが長年の課題だ。ダイバーシティを推進する部署を新設するなどして20%を超えたが、現場の店舗を支えるスーパーバイザーに限ると7.6%とまだ低水準だ。

 社員の健康管理も以前はメタボ対策など男性向けが中心だった。健康管理室のマネジャー・淺田智美さんは「女性向けの施策は正直何から取り組んだらいいか分からなかった。そういった時にセミナーのお話をいただき、社員にぜひ聞いてもらいたいと思った」と話す。

 人事部の副部長・中村幸恵さんは「女性の比率が増えることで、女性ならではの感性をファミリーマートの売り場に生かすことができる。そのためにも女性が生き生きと働ける環境を整えていきたい」と力を込める。

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