メニュー 閉じる メニュー
ウイルスの侵入を防ぐ、知られざる「粘膜免疫」の実力 大塚製薬株式会社

 風邪やインフルエンザなどの感染症が流行する季節が近づいてきた。予防のカギを握るのは免疫力だ。一般的に免疫と聞くと、体内に侵入した細菌やウイルスを排除するイメージを思い浮かべがちだが、実は体内に侵入するのを防ぐ免疫があることをご存じだろうか。意外と知られていない「粘膜免疫」の重要性について紹介したい。

粘膜免疫と全身免疫の違い

粘膜免疫と全身免疫の違い

 細菌やウイルスなどの病原体は、目や鼻、口、腸管などの粘膜からまず体内に侵入しようとする。これを最前線で排除するのが「粘膜免疫」だ。

 一方、粘膜免疫を突破して体内に侵入し、感染してしまった後に病原体を迎え撃つのが「全身免疫」だ。

 城に例えると分かりやすい。粘膜免疫は城の外で敵の侵入を防ぐ堀や石垣の役割を果たし、全身免疫はすでに城内に侵入を許した敵と戦うイメージだ。

 このように、二段構えになっている免疫だが、いつも通りの体調を維持し、感染そのものを防ぐ意味では粘膜免疫の強化が重要と言えそうだ。

 では、粘膜免疫はどのような仕組みで病原体が体内に侵入するのを防ぐのだろうか。
そのカギを握るのは腸の粘膜だ。

 「体の半分以上の免疫細胞は腸に集まっていると言われており、腸管の免疫は様々な免疫システムに影響を与えることが知られている」。免疫に詳しい国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センターの國澤純センター長はこう話す。

免疫物質IgAが体をガード

免疫物質IgAが体をガード

粘膜免疫に関するセミナーで、IgA産生のメカニズムについて解説する国澤センター長(10月22日、東京都千代田区で)

 代表的な粘膜免疫システムである腸管免疫について紹介しよう。

 小腸の粘膜には「パイエル板」という免疫組織があり、ここでリンパ球の一種である「B細胞」が病原体の情報を学ぶことで、免疫物質「免疫グロブリンA」を作る細胞へと成長する。

 免疫グロブリンAは病原体が私たちの細胞と結合するのを阻止する機能に特化した抗体だ。タンパク質でできており、「IgA」とも呼ばれる。

 病原体の情報を学んだB細胞はIgAを作り出し、小腸粘膜の表面で病原体に結合する。これで、感染の最初のステップを食い止めることができるのだ。

 「小腸粘膜の表面は、物理的に体の外側になるので、感染の最初のステップを阻害することで病原体が体内に侵入する前に防御できることになる。IgAは口腔や呼吸器でも産生されることから、インフルエンザウイルスなどにも有効だと期待される」(國澤センター長)

IgAが低下しやすい人の特徴

体調とIgAの関係

アメリカズカップのヨットレース選手の男性38人を対象に、トレーニング期間の50週間にわたって毎週、唾液サンプルを採取。その結果、上気道感染症を発症する3週間前から唾液IgAレベルが低下し始め、発症時は有意に低下。また唾液中のIgAレベルが低下しているときは、疲労感が強かった
(出典:Med Sci Sports Exerc.2008;40:1228-36)

 しかし、IgAは20~30代をピークに加齢とともに低下していくことが報告されている。80歳以上の唾液に含まれるIgAを測定したところ、20~30代の半分以下しかIgAが分泌されなかったという研究結果がある。

 乳幼児や子どもも要注意だ。新生児は母親にもらったIgAなどで守られているが、乳幼児らは免疫を獲得する過程にあるため、感染症にかかりやすい。

 また、健康だと思っていても知らないうちに免疫力が低下していることもある。意外なことに、激しい運動をしているアスリートはIgAが低下しやすいという研究結果もある。

 受験生など強いストレスを受けている人でも、自律神経のバランスが乱れ、IgA分泌が減少するという報告がある。

 では、こういった人たちはどうすればいいのだろうか。國澤センター長によると、実は古くからIgAの産生には腸内細菌が重要であることが知られているという。

 「抗生物質で腸内細菌を減らしたマウスや、腸内細菌を持たない無菌マウスの腸管では、少量のIgAしか産生されなかったという実験結果がある。腸内細菌はIgAをはじめとする免疫機能を下げないための働きをしている」(國澤センター長)

 人間の腸内でも、パイエル板の内部に共生する腸内細菌が、IgAの産生を促進することが確認された。

 さらに、腸内細菌だけでなく乳酸菌でも同様の研究結果が得られている。例えば、Lactobacillus pentosus ONRICb0240(以下乳酸菌B240)を摂取すると、唾液中のIgAの分泌量が増えるという。

IgAを増やす乳酸菌B240とは

IgAを増やす乳酸菌B240とは

大塚製薬大津栄養製品研究所の甲田所長

 大塚製薬大津栄養製品研究所(滋賀県大津市)では、2000年の設立以来、粘膜免疫や乳酸菌B240について研究を行ってきた。甲田哲之所長に研究所の目的や乳酸菌B240の効能について話を聞いた。

――腸内免疫の研究に取り組んできた経緯についてお聞かせください。

 「研究所が設立されたのは2000年ですが、30年以上前から佐賀県の研究所の一角で腸の研究を始めていました。当初は腸内細菌の研究をメインで行っていたのですが、独自に研究を重ねるうち、単に整腸作用だけでなく、私たちの健康維持増進に想像以上に深く関与しているのではないかという手ごたえをつかみました。これを機に、大津に粘膜免疫を中心とした“腸と栄養”を専門とした研究所を設立したのです」

――乳酸菌を摂取すると免疫が活性化するといわれていますが、その中でもどうして乳酸菌B240に注目したのでしょうか。

 「免疫には粘膜免疫と全身免疫の二種類がありますが、全身免疫は病原体などの異物を体外に排除する時に発熱などの症状が出てしまうことがあります。それより、異物がそもそも体の中に入ってこないようにする粘膜免疫を高めることが重要なのではないかと考えました。粘膜免疫の主要な役割を担うIgAを産生増強するものを探し、スクリーニングした結果、顕著にIgA分泌能の高さを示したのが乳酸菌B240だったのです。これ以後、この乳酸菌B240に着目して研究を続けています」

粘膜の免疫力を上げ、カゼのリスクを低下

――乳酸菌B240を摂取すると、どういった仕組みでIgAが増えていくのでしょうか。

 「簡単に説明すると、乳酸菌B240を口から摂取すると小腸のパイエル板という免疫を教育する組織に取り込まれ、教育を受けた免疫細胞がIgAを産生するという仕組みです。教育された免疫細胞は血液やリンパ液の循環に乗って全身を巡り、その途中で口腔など他の粘膜でもIgAの産生を高め、再び腸に戻ると考えられています。つまり、乳酸菌B240が腸内粘膜に取り込まれると、腸以外の組織でも粘膜組織におけるIgAの産生が高まるというわけです」

――乳酸菌B240は他の乳酸菌と比べてどういった点が有利なのでしょうか。

 「乳酸菌B240は、東京農業大の岡田早苗名誉教授がタイ北部で古くから食べられてきた発酵茶から単離した菌株で、加熱処理した菌体でもIgAの産生を増強する効果が認められています。研究所を設立した当初から加熱処理した菌体にはこだわってきました。生きた乳酸菌と異なり、様々な製品形態に利用可能で、チルド流通の必要もありません」

 「質の高い臨床研究で効果も認められました。具体的には、健康な成人女性や健康な高齢者に1日20億個の乳酸菌B240を継続的に摂取してもらったところ、唾液中のIgAの分泌量が有意に増えました」

――どういった人が乳酸菌B240を摂取すると良いのでしょうか。

 「やはり高齢者やストレスにさらされている人、激しい運動をする人はIgAが低下されやすいとされていますので、乳酸菌B240を摂取していただきたいと思います。もちろん、摂取さえすれば良いというわけではなく、バランスの良い食事や規則正しい生活を行ったうえで、より良い状態をキープするために乳酸菌B240を活用してほしいと思っています。かつては熱中症予防には水分と電解質を摂取すると良い、という事実が世の中であまり知られていない時代もありましたが、今ではすっかり常識となっています。同じように、我々のカラダに本来備わっている病原微生物を体内に侵入させない仕組みである粘膜免疫を高めるために乳酸菌B240を摂取するのが常識になり、少しでも皆さまのお役に立つことができればと願っています」

大塚製薬株式会社