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PR特別企画 インバウンド対応は万全ですか?外国人客のおもてなしは、日本人客へのおもてなしに。小田急百貨店が活用した多言語音声翻訳サービスの舞台裏

 2019年以降の大型スポーツイベントに向け、各方面で準備が急がれるが、とりわけ大きな課題の一つと考えられるのが言葉の問題である。訪日外国人の数は、2018年に3,000万人を突破することが予想され、政府は2020年には訪日客数の目標を4,000万人としている。ところが、日本人の外国語能力は、例えば世界英語能力ランキングで72カ国中35位(注1)という「低い」レベル。中学や高校の授業を含め、学ぶ機会が一番多い言語と思われる英語ですらその程度だから、国別訪日外国人の数で圧倒的な割合を占める中国と韓国の人々への対応も含めると、コミュニケーション能力の確保はさし迫った重要な問題だ。

 なかでも、訪日外国人との確実なコミュニケーション能力を必要としているのは接客現場だろう。街で話しかけられた場合なら、「ソーリー」のひと言で他の人に説明を譲ったり、手のひらを左右に振って立ち去ったりも可能だが、接客の場となるとそうはいかない。外国から訪れた大切な顧客や乗客、困っている患者さんと何とか意思の疎通を図らねばならないはずだ。英語なら汗をかきかき対応可能という人は少なくないだろうが、中国語や韓国語も含めて対応可能な人材となると、そう多くはないというのが接客現場の実情ではないだろうか。

 そんな事態を解決するため、NECが開発したのが訪日外国人観光客との接客コミュニケーションを支援する「多言語音声翻訳サービス」だ。2017年11月に開始されたこのサービスは、スマートフォンやタブレット用アプリがまず登場し、2018年3月31日からは業務用小型端末も販売される。自動翻訳機という機器だけならすでに市販され、旅行などに活用されているが、機器を含めた“サービス”とはいったいどのようなものなのだろうか。また、業務用端末とはどのような特長があるのだろうか。実は、大手企業としてはいち早く、小田急百貨店新宿店でこの接客業向け音声翻訳サービスの実証実験を行っていると聞き、取材に訪れた。

小田急百貨店新宿店 お客様サービス部お客様サービス担当統括マネジャー
物永公仁(ものえい・きみひと)さん

 お話をうかがったのは、小田急百貨店新宿店 お客様サービス部お客様サービス担当統括マネジャー物永公仁(ものえい・きみひと)さんと、NEC SI・サービス市場開発本部マネージャー藤戸靖久(ふじと・やすひさ)さん。まず、小田急百貨店の物永さんに売り場の現状をうかがった。

―― 今回の実証実験の概要を教えて下さい。

物永 小田急百貨店新宿店では、春節に向けたインバウンド向けおもてなし施策の一つとして、スマートフォンアプリの「多言語音声翻訳サービス」を用いた実証実験を1月26日から行っています。そして、2月下旬からは専用機の業務用小型端末を10台、導入しています。この10台は、外国人のお客様が多い本館1Fのショップ、同2Fの化粧品・アクセサリー、同3Fの婦人靴・ハンドバッグ、婦人服飾雑貨という3層限定で配置をしました。

―― 今回、「多言語音声翻訳サービス」の実証実験に踏み切った背景には訪日外国人の増加があると思うのですが、新宿店の場合、1日に何人ぐらい外国の方が売り場を訪れるのですか?

物永 個々の売り場で海外の方を何人お迎えしているのかは、なかなか統計がとりにくいのですが、免税取り扱い件数を見ればおおよその数はわかります。通常ですと1日に500件前後、春節(2月)で600件前後、一番お客様の多い国慶節(10月)で700件前後でしょうか。4人家族で来店したとすると、多いときには700件の4倍で2,800人前後を接客している計算になります。中にはファミリーで7~8人でいらっしゃるケースもありますので、実際にはそれ以上の接客数ということになるはずです。

―― それに対応する通訳の態勢はどうなっていますか?

物永 常勤の通訳は8人ですが、秋以降は国慶節・春節の対応のため、9月から3月までは最大10人態勢で臨んでいます。4階に外国人顧客サービスカウンターを設けていますが、売り場からの電話による通訳も随時対応しています。売り場ごとに特色があって、雑貨売り場などでは電話で済むことも多いのですが、宝飾品や輸入時計、ラグジュアリーブランドものなど高額商品の売り場では色や素材、保証の有無など細かい説明が必要とされる場合が多いため、そういう売り場には直接通訳が赴きます。通訳が売り場からの要請を受けて行ってみると、用件は「トイレはどこですか?」だったということも時折あります(笑)。

―― 業務用小型端末を実際にお使いになってみて、ご自身や現場の感想をお聞かせ下さい。

物永 非常に助かったなというのが率直な感想です。通訳だけで対応していたときは、通訳が現場に到着するまでの2~3分の間にお客様が帰ってしまうことがありました。簡単な会話で用が済むお客様なのに、通訳が来るまでの時間をお待ちいただけず逃してしまっていたわけです。それがなくなっただけでも大きいと思います。現場で自動翻訳機を使用して、込み入った話になったら通訳を呼ぶという使い方を想定していたのですが、通訳が到着する前にこれで済んでしまったということも多々ありました。お客様をお待たせすることなく、限られた数の通訳は本当に必要とされている売り場に派遣できるというのは有難いです。慣れも必要ですが、ご来店されるお客様は海外からの方々だけということはありませんので、上手に使用することで結果的に日本国内のお客様対応にも注力することができるという点では、非常に期待の持てるサービスだと思います。

 意外だったのは、海外のお客様が多い化粧品売り場で思ったほど使用頻度は多くなかったことです。お客様が商品の写真をスマホに表示して、ずばり「これ下さい」で済んでしまうことが多かったようですね。

―― スマホアプリ版との違いはどうですか?

物永 基本的な機能はスマホアプリ版でもあまり変わらないのですが、お客様によっては「仕事中にスマホで何やってるんだ」と思われる方がいるかもしれませんので、専用の端末のほうがいいと思います。首から提げられるほど小さくて軽いですしね。

NEC SI・サービス市場開発本部マネージャー
藤戸靖久(ふじと・やすひさ)さん

―― サービスを提供するNECの藤戸さんにうかがいます。現場での評判は上々のようですが、あらためてこの「多言語音声翻訳サービス」の特長を教えて下さい。

藤戸 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の開発した観光会話向けの高精度翻訳エンジンを採用しており、全国の駅名などの固有名詞や、日本の観光地・文化特有の表現が充実しています。また、NECが長年研究により培ってきた音声まわりの技術や知見を活用し、サービス化しています。現状は、日本語・英語・中国語・韓国語の4カ国語に対応しており、将来的には市場を見ながら、さらに言語を増やしていく予定です。

 最大の特徴は翻訳エンジンとインターネット上でつながるクラウドサービスという形をとっているところです。特定の言語や限られたシーンで使用するなら市販の翻訳機でもいいと思いますが、我々としては今後さらに利用シーンを広げていきたいと考えています。言語も今回は観光の言語になっていますが、医療だったり、交通・鉄道だったりと、各業界の言語も2020年に向けて整備していく予定です。常に最新のエンジンをお使いいただけるのもクラウドのメリットかなと思います。

 あと、「小田急カード」など我々のお客様独自に使われる言葉がどうしても出てきてしまいますので、クラウドの辞書に固有名詞として登録していただくことで、よりいっそう現場での接客支援に適した翻訳サービスが実現できるのもクラウドのメリットだと考えています。

―― 会話のログ(記録)をデータベース化してマーケティングに活用できるともうかがいましたが。

藤戸 そのとおりです。小田急百貨店さんでも実際に使っていただいた会話ログがけっこうな数がたまっており、「トイレはどこですか?」から、込み入った問い合わせまで実際の会話が記録されています。NECとしては、これを単なるデータとして集めるだけでなく、実際どういった商品の問い合わせが多いのか、どういった内容の質問が多いのか、データがたまればたまるほど、我々の顧客にとってこれまで見えてなかった課題が見えてくることを期待しています。データの解析技術をさらに磨き込んで、ご使用いただく我々の顧客に新たな価値をご提供したいと考えています。

―― クラウド上にデータがたまってくるとなると、セキュリティー面での不安はありませんか?

藤戸 会話ログはお客様の大事な現場でのデータですので、NECのクラウド基盤サービスである「NEC Cloud IaaS」上で、弊社のセキュリティーの中でしっかり管理させていただきます。そして必要なときに顧客の同意の下に分析してフィードバックさせていただく、そういった付加価値を一般の翻訳サービスとの違いにしていきたいと考えております。

―― 最後に再び物永さんにうかがいます。お使いになってみて気になるところはありませんでしたか?

物永 再生音量をもっと大きくしてほしいとか、反応速度をもう少し速くしてほしいなど、細かな部分ではリクエストがありますし、専門性の高い会話のボキャブラリーに関してはまだ足りないのかなと思いました。しかし、どんどんブラッシュアップされて百貨店専用にカスタマイズされたものが出来上がっていくと思っています。いまは中国語圏のお客様が圧倒的に多いですが、来年度以降の大型スポーツイベントの頃には欧米の方も含めた外国人のお客様のCS(顧客満足度)向上に役立つのではないかなと期待の方が大きいですね。

藤戸 売り場の環境で音量が小さかったことは、静かな会議室では気づかなかった部分で、まさに実証実験を行った成果のひとつですね。このサービスは機器を納めて終わりではなく、随時バージョンアップをかけていきますので、辞書の部分をはじめ、お使いいただきながらお客様の声を徐々に反映させていきたいと考えております。

―― 本日はお忙しい中ありがとうございました。

 取材を終えて印象的だったのは、物永さんが取材中に何気なく発した「これを介してお客様とコミュニケーションを楽しめるんです」というひと言だ。言葉が通じずに売り損じていた機会を逃さないだけでなく、外国人旅行客とのコミュニケーションが楽しくなる「多言語音声翻訳サービス」。今後はあちらこちらの接客現場でこの業務用小型端末を見かけることになりそうだ。

(注1)「EF EPI世界最大の英語能力ランキング(第6版)」より。

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現在、NECグループは、情報通信技術を用いて、社会に不可欠なインフラシステム・サービスを高度化する「社会ソリューション事業」に注力しています。この事業活動を通じ、人が豊かに生きるための「安全」、「安心」、「効率」そして「公平」という価値に基づく、「人と地球にやさしい情報社会」を全てのステークホルダーと協奏し作り上げていきます。

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