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次世代の伴奏者 MONEXな人々「時間を味方に付ける~金融大変革時代の知恵」マネックス証券 チーフ・アナリスト兼マネックス・ユニバーシティ長 大槻奈那氏 インタビュー

 キャッシュレス決済、少額投資非課税制度(NISA)個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」、ブロックチェーン…。僕らにとって身近で、しかも大切なお金の世界は、大変革の波を受けている。今春、社会人となったフレッシュパーソンを主な対象に、お金のことを気軽に学べるマネックス・ユニバーシティ長を務め、「1000円からできるお金のふやし方」(ワニブックス)を昨年出版した大槻奈那さんが、大変革時代を生きる知恵を語った。

「タイムカプセル」

「タイムカプセル」

 学生から社会人になって、一番驚くのはこんなに拘束時間が長いということではないでしょうか。大学時代は、授業がぽつぽつとあって、その合間にいろんなことができました。早く帰れる時があったら午後3~4時で自宅に帰れたにもかかわらず、社会人になると、休日を除いてほぼ毎日、基本的には午前9時から夕方5時過ぎまで働かされる、そのことに戸惑いを覚える人は多いのではないでしょうか。新社会人になりたての頃の私は、そんな感じでした。
 社会人となり、個人的に使える時間が少なくなり、そのような環境で生活をしていかなければならないわけです。しかも、そんな生活が、23歳で始まり、60歳で定年を迎えるとすれば、37年間という長い時間が待っています。
 気が遠くなるような気分になる、フレッシュパーソンが多いのではないか、と想像します。社会人になると、自分で生活をする、家庭を持つ、子どもができる…、さまざまな人生のステージが待ち受けています。その際、一番大切なものは、時間であり、その次ぎにお金ではないでしょうか。
 この本(「1000円からできるお金の増やし方」)でも触れましたが、長い時間かけていくと「お金は寝ているばかりじゃなく働いてくれますよ」と強調したいです。社会人になって、自分の時間が少なくなる中、時間は節約しながらも、お金は増やしていくという考え方を紹介しました。
 かつて、預金金利が高い時期であれば、貯金をしていれば良かったのですが、今はそう言うわけにはいかない状況です。お金を貯金していた場合と、簡単な投資をした場合の違いを説明します。仮に25歳から毎月3万円を貯金した場合、つまり、ほとんど金利の恩恵が受けられない今の世界では、65歳まで続けたとすれば、1000万円はたまります。
 これに対し、年率3%の複利で運用した場合は、4500万円以上になります。積み上がったお金を単純計算すると、貯蓄と運用の差は数倍になるのです。
 自分の時間が限られるのであったら、自分がこれ以上働けない分は、お金に働いてもらうという発想が求められるのです。
 また、同じ運用パターンを前提に、25歳から始めるのと、45歳から始めるのを比べてみます。45歳で始めたパターンだと65歳の時点で1000万円にしかなりません。それが25歳から始めると、5000万円弱までたまる結果になります。
 ここでも、資産運用を始める年齢によって、その差は数倍になるため、早い時期に始めた方がよい、ということが分かると思います。
 このことは、資産運用を考える上で、どれだけのリスクを取るだとか、米国株がいいとか日本株がいいのかということ以上に、大事なことかもしれません。若い人には早い時期に、問題意識を持つといいでしょう。
 新社会人の武器は若さですから、時間を味方につけるという発想が重要です。若いうちは、何をしておけばいいのかを考えなければなりませんが、そうはいっても自分自身が動けないという制約もあります。「タイムカプセル」という言い方をわれわれはしていますが、投資については、20年後にカプセルのふたをあけたら、いつの間にかこんなに金額が大きくなっていたというような、未来へのご褒美をつくる、そんな考え方をしておくといいのではないでしょうか。

株価をノートにつける

株価をノートにつける

 投資を始めようとする、フレッシュパーソンの基本的な哲学については、先ほどの「若いという特権を生かし、時間を味方につけよう」に尽きます。では、その考えに基づき、どういう知識を日頃から勉強しておけばいいか、アドバイスしたいと思います。
 日経平均株価(225種)といった株価の動きをウオッチする際は、一つの大きなベンチマークである「名目のGDP(国内総生産)成長率」に着目すべきです。新聞やテレビのニュースによく出てきますが、成長率が低くなったとか、高くなったとか、1~3月の期間は前年同期と比べマイナスではないか、と大きく報じられることがあります。ただ、そのニュースで取り上げられている成長率は、その時点のインフレ率を除いて計算されたもので、それは実質GDPと呼ばれています。
 しかし、株式市場は一応、名目GDPで株の元値が動くわけなのです。今の時期でも、足元は難しいかもしれませんが、それなりに超デフレということではなくて、緩やかな「低インフレ」が続いているとみられます。すると、物の値段(物価)というのは少しずつですが、よく見えないままに上がっていきます。そうなると、貯金だけをしておくと、増えるお金も増えません。物価が多少しか上がらない局面でも、株式の方に少しは自分の金を振り分けておいた方がよいと思います。

 フレッシュパーソンはなかなか、投資の勉強の時間も機会もなかったと思います。そこで、これだけは、投資する場合、抑えておくべき三つの経済情報をお教えします。それは、「どれだけ経済が伸びているか」「金利」「地政学リスク」です。意外と単純ですね。
 GDP成長だとか、輸入額とか、これらはすべて経済成長の話ですよね。それらに該当しないものは、たいていは「地政学」にからむ話題ということになります。
 勉強というのは「慣れ」の世界です。例えば、慣れるという意味では、弊社会長の松本大は、金融機関に務めていた新人時代に、株価、債券といった市場の価格を毎日ノートにつけていたそうです。
 私がお勧めしているのは、経済ニュースを見ながら、先ほどの「経済成長」「金利」「地政学リスク」の三つのどれかにあてはまるかを考えてみることです。そのニュースを、経済成長、金利、地政学に分けて、今日のニュースのポイントと、日経平均株価といった株価を毎日、ノートにつけていくと、おのずと景気の状態を見る感覚が養われるはずです。

鉄則は分散にあり

鉄則は分散にあり

 では、投資初級者の実践的な方法を具体的にお話しします。投資の鉄則の一つ目は、分散ということです。ここで、分散投資と言っている意味は、いろんな意味が込められています。
 「買う商品の分散」「投資先の地域の分散」「買う通貨の分散」「時間の分散」など、幅広い意味があります。具体的には、入門編として入りやすいものとしては、バランス型の投資信託を毎月積立型で買っていくことだと思います。もちろん大きなもうけはないわけですが、最初は勉強のためだということで、それをやりながら、自分の元本がどうなっていくのかを見て、体験してもらう。それが、最初の入り口としてはいいと思います。
 投資する際の金額については、毎月1万円ぐらいがいいかと考えます。もちろん、著書のタイトルにもしましたように、毎月1000円からもできます。
 ただ、1000円ですと、あまりにも見ていく数字が小さいので、リアル感がなく恩恵を受けている感じがしないかもしれません。1万円ですと、1年間経過し、計12万円+αの可能性が高いです。これですと、それなりにインパクトがあると思います。
 投資信託を買って、あとは何にもしなくて、新人2年目になったときに、12万円ちょっと貯まっているというのは結構大きいとおもうのです。ですので、1万円から始めてもらえればいいでしょう。
 そして、投資信託を買うときは、ノーロード(手数料なし)がもちろんいいでしょう。ただ、多くの投資信託の商品がありますから、それを検索し選び、NISAを活用することです。まずは、ノーロード、つまり手数料がないもの、そして、バランス型で、国際分散の投資信託を選ぶとよいです。

不安を解消するために

不安を解消するために

 これは、フレッシュパーソンだけではなく、私を含め誰にでもあてはまることですが、一番の不安は何かというと、それは「不確実性」です。いろんなことが分からない、その不安に尽きます。
 お金の不安に関していえば、将来の準備はどれだけ必要なのだろうか、いつまでにどれくらい貯金がたまっているのだろうか、それらが分からなければ、分からないほど不安になります。
 そこで、弊社のホームページにもありますが、家計のシミュレーションを活用することで、家計の「見える化」が実現できます。シミュレーションは、どこの金融機関のホームページなどにもあるので、自分の給与の振り込み口座の金融機関で試してみてください。ちなみに弊社の場合、マネックス証券に口座がなくても利用することができます。
 支出の方は自分で手入力しますが、家計アプリなどで観察してみてください。自分がどれくらい使っているのか2~3ヶ月、推移をみてみましょう。家計アプリを活用している、ある知り合いの女性は「人生が変わった」と言っていました。
 毎月の収支がどれだけあったかに加え、証券会社の口座内容などもアプリに全部、入るのです。不動産を持っていれば評価額も出てくるし、バランスシートも作ってくれる。そうなると足りない分は足りない分として、あからさまに分かります。
 そうすると、対策ができます。家計の状態が明らかになった方が、少しでも不安感が取り除かれるのです。ちなみにマネックス証券のシミュレーションは、シンプルで使いやすくお勧めです。弊社のものは90歳まででき、そのようなソフトはあまりありませんが、今度の改修では100歳まで伸ばそうと思っています。

過度に保守的にならないで

過度に保守的にならないで

 金融大変革の時代に突入し、フレッシュパーソンたちはどう自分を守っていけばいいのでしょうか。まずは金融の知識、リテラシーというのが求められますが、それ以上に金融テクノロジーのリテラシーを上げておいた方がよいと思います。
 金融の世界では、オンライン、ウェブの活用が、まだ過渡期で両方できるような形になっていますが、ウェブででしかできないことが、今後一層増えてくるとみています。
 我々ネット証券もそうですが、対面ではないお得感が昔はネットにあったわけですが、それがもう既にネットは当たり前になってきて、それほどお得感がないわけです。
 今のスマートフォンでできるいろいろな仕組みはまだ、現金でやる事と比べればお得感が高いわけですよね。情報リテラシーが低いか、またはあまりにも過度に保守的になったり、恐がったりしてしまうと、そこのお得なメリットを享受できないままになってしまうかもしれません。そこで格差が生じる可能性があると思います。
 やはり、スマートフォン決済を手掛ける「ペイペイ」が登場してきたときに、その反応は二手に分かれました。ある学生は「使ってみようかな」という感じでしたが、私が教えている大学の学生の中には「これって、こんな20%も還元してくれるなんて、おかしくないですか」という人もいたのです。その感覚はとても大事ですし、あえてリスクを取れとは言いませんが、過度に保守的になってしまうと、チャンスを逃してしまうかもしれません。金融テクノロジーのリテラシーを上げたうえで恐がらずにチャレンジしてみることが金融大変革時代には大切です。

大槻 奈那

大槻 奈那(おおつき なな)

マネックス証券 チーフ・アナリスト兼マネックス・ユニバーシティ長
東京大学卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。
スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ等の金融機関でリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高い評価を得てきた。2016年1月より、マネックス証券のチーフ・アナリストとして国内外の金融市場やマクロ環境等を分析する。
現在、名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学国際政治経済学部の客員教授を兼務。東京都公金管理運用アドバイザリーボード委員、貯金保険機構運営委員、財政制度審議会分科会委員。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループのメンバー。
テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」等、メディアへの出演も多数。

マネックス証券ウェブサイト(http://www.monex.co.jp)にて、最新レポートが閲覧可能。

<主な著書>
本当にわかる債券と金利(日本実業出版社)
1000円からできるお金のふやし方 (ワニブックス)

マネックス証券株式会社

マネックス証券株式会社

マネックス証券株式会社は、1999年4月に松本大とソニー株式会社との共同出資で設立されました。現在は、日本、米国、香港に個人向けを中心とするオンライン証券子会社を持つ持株会社マネックスグループ株式会社の主力事業として機能しています。口座開設をはじめ、日本株、米国株、投資信託、債券、FX、NISA、iDeCoなどの金融商品の取引をオンライン上で完結するサービスを提供しており、昨今ではレポートやロボアドバイザー、ラップ(投資一任)サービスなど、AIやフィンテックを活用した先進的なサービスの提供も進めています。
社名のMONEXは、MONEYのYをひとつ前に出して、「未来のMONEY。次世代におけるお金との付き合い方をデザインして、お客様に提供していこう。」という意味が込められています。総合オンライン証券として個人投資家へ世界最高水準の金融サービスを提供することを目指しています。

マネックス証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第165号
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