メニュー 閉じる

47NEWS

次世代の伴奏者 MONEXな人々「投資は人生を豊かにする」マネックス証券株式会社 チーフ・ストラタジスト 広木隆氏 インタビュー

 学生の頃は小説家を、今は詩人を想う広木隆(ひろき・たかし)氏は、「やらない後悔より、やる後悔」という生き方だと語る。これは、お金に働いてもらう投資の世界でも同じ事が成り立つという。世の中を眺めれば、値の上げ下げはあるものの株価は基本的に上がり続けており「株式投資のリターンに早く気づくべき」と考えるからだ。投資をしないで後悔するか、それとも・・・。マネックス証券で、投資戦略の責任者を務める広木さんに、投資にあたっての“はじめの一歩”を聞いた。

誰も得をしない貿易戦争

誰も得をしない貿易戦争

 まずは、日本を取り巻く世界経済の現状について話したいと思います。最近、新聞、テレビ、インターネットで、アメリカと中国の「貿易戦争」が取り上げられています。今後の成り行きは読みづらいのですが、輸入するモノに高い関税をかける貿易戦争は、経済の世界では本質的な課題達成のための施策ではないと考えます。それは、貿易において国・地域が高い関税をかけあう保護主義が、世界経済全体のプラスにならないからです。このことは誰もが分かっているので、本来の関心はそこにはありません。

 貿易戦争の影響はあります。ただ、世界大恐慌期の1930年、アメリカがスムート・ホーリー法を制定し、2万品目以上の関税を記録的な高さに引き上げた。その結果、多くの国がアメリカの商品に高い関税をかけて報復しました。アメリカが関税戦争の引き金を引き、その後の第2次世界大戦につながりました。今回、そのようなひどい話にはなりません。なぜならば、貿易戦争では誰も得をしないということが分かっているからです。

 では、米中の貿易戦争の背景に何があるのでしょうか。アメリカが中国を叩くのは、中国がハイテクの技術立国として成長してきていることをアメリカが脅威と感じているからです。中国の成長への対抗とか制裁なのです。この問題の背景にはこれまで世界一の大国だったアメリカと、新興の中国との対立構造があるわけです。

 「トゥキディデスの罠」という言葉があります。古代アテナイの歴史家トゥキディデスにちなむ言葉です。覇権国と新興国との対立が起こり、過去には16回対立が起きて、そのうち12回が武力戦争になったということです。今。国際政治で起きているのは正にこの対立構造です。最近、中国の深圳(シンセン)に行って来たのですが、中国の成長ぶりは本当にすごい。深圳の街は、アメリカを抜いているという感じがしました。もちろん、中国の一部である深圳だけのことですが。

誰も得をしない貿易戦争

 深圳だけをとってみると、世界一の都市といっていいでしょう。街はきれいだし、道路は片側5車線で、ロスアンジェルスのフリーウェーを走っているのかと思うぐらいに道路環境はすごい。高級住宅街は緑にあふれていて、シンガポールかと思うぐらいきれいな街です。街にはテーマパークのようなショッピングモールがいっぱいあって、ショッピングや、ブランド品やレストラン、コンサートなどをみんなが楽しんでいます。日本は確実に抜かれています。

 ただ、街のどこへ行っても監視カメラがあるから、行動は全て監視されています。それをどう思うかですが、犯罪は起こらないし、車の中にかばんとか財布とかパスポートとかを置いてふらっとそのまま出て行っても、置き引きとかに遭わない。全て監視されていますから「犯罪ゼロ」の街になっているといえます。中国は監視社会だけど、監視されて何が悪いっていう、そういうことじゃないですか。今、このような国ができ始めていることを事実として理解すべきです。

 この他、キャッシュレス社会の進みがすごい。何でもかんでもスマートフォンで、買い物などの決済をしています。スマートフォンでの決済が一番進んでいるのは中国です。決済でも中国はどんどん変わっています。こんなことがありました。フリーウェイの一部に有料区間があって、お金を払わなければならなかったのですが「現金を持っていない」と、係員に言うと「いいよ」と、無料で通してくれました。現金を持ってないのが中国では当たり前だから、「なんで持ってないの?」と言われないわけです。持っていないなら仕方がない、なので「はい通過して」になったわけです。

伸びしろのある日本

伸びしろのある日本

 一方、日本がこれだけ遅れているということは、別の見方をすれば「伸びしろ」があるということです。なぜ中国が短期間ですごく進んだかというと、何にもなかったからです。固定電話だってぜんぜん普及していなかったので、一気にスマートフォンが普及し、急速に伸びたのです。日本には成長の伸びしろがあると指摘しましたが、これまで成長できなかったのは、既得権益の層があまりにも厚すぎるからです。これが日本の取り組むべき課題です。

 具体的に言えば、さまざまな岩盤規制ですね。規制が残ることで、既得権の受益者が社会で温存されているというか、エンジョイしている人がいます。少子高齢化で人生100年時代といわれますが、既得権益を享受している層を崩し、社会の世代交代というのか新陳代謝を進めなければ、成長は難しいと思います。

 企業活動に目を転じれば、内部留保問題があります。厳密にいえば、言葉は正しくないのですが、内部留保というのは企業が稼いだ利益から配当を行わない、支払わない部分ですから、バランスシート上にはあり、キャッシュのまま残っているのが問題なのです。そういった意味では、企業内に預金しているというのが問題の一つです。

 あとは各家庭に支払われた給与(お金)が貯蓄され続けているから、預金という形になってどんどん増え続けています。つまり、世の中のお金は、企業内の預金と家庭内の預金、すなわち銀行の預金が積みあがっているというのが現状です。この銀行の預金が国債とかになっているので、国債がゼロ金利の中でぐるぐる回っている。

 そのため実体経済ではあまりお金は回っていないのです。一部のお金は、企業の設備投資に回り始めていると思っています。このような状況が続いていることで、インフレーションも加速してこないし、大幅に賃金も上がらない。結果として、国内景気は統計上は回復が続いているけれど、国民としてはあまり豊かさを感じられない。労働者のボーナスは上がり、少しずつ給料は上がってきているけれど、なかなか豊かさを感じることができない、それが日本の景気の実体だと見ています。

労働市場の改革を

労働市場の改革を

 では、実感が伴うような、さらなる景気拡大につながるためには、政策として何が必要でしょうか。景気というのはそもそも循環するものなので、良くなったり悪くなったりします。悪くなると財政出動とか金融緩和といった景気対策が取られますが、それに対して今、政府のしている成長戦略、骨太の方針というのは、景気対策ではなくて、もっと潜在成長率を高めていくような中長期的な政策なのです。中長期的な成長戦略を進めないと、景気が良くなったときの伸びしろが抑えられてしまいます。

 そういう意味でも、構造改革をやっていかなければならないのです。その最たるものが労働市場の改革だと思います。これが変な方向に行っています。働き方改革をもっと劇的に進めないとだめです。それが今、残業代、高度プロフェッショナル制度に焦点が当たりすぎて、本質的な問題から外れてしまっている。一部のメディアからは、残業時間が長くなってブラック企業を助長するだけだというけれど、本来は違うんじゃないですか。会社に残っていて、労働時間は長いのに生産性は上がらない、この働き方を変えようっていうのが趣旨だったわけですよね。そこのところをもっとリーダーシップを取って進めて欲しい。

 例えば、労働市場の流動性を高めることです。もっと柔軟な働き方を取るような企業が増えてきたら、私はあそこの企業に、僕はこっちの企業に行きたいと、労働者が動き始めると思います。そういう状況になれば、優秀な人が動いた場合、仕事が効率化され、賃金が上がることにつながりやすい。今、人手不足と言われていますが、それは一部の産業で超人手不足であって、人手が余っているところは余っているのです。

 労働の規制を緩和し、もっとドラスティックにシャッフルできるような社会を作っていけば良いと思います。今の労働市場では人材のミスマッチが起きているのです。人手が足りていない企業は足りない、余っているところは余っている。この構造的な問題を解決したら、日本の成長に確実につながるでしょう。

  • 1
  • 2
広木 隆

広木 隆(ひろき たかし)

マネックス証券株式会社 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。
国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。
長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。
テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、BSジャパン「日経プラス10」、日テレNEWS24「まーけっとNAVI」、J-WAVE「JAM THE WORLD」等のレギュラーコメンテーターを務めるなどメディアへの出演も多数。

マネックス証券ウェブサイト(https://info.monex.co.jp/report/strategy/index.html)にて、最新ストラテジーレポートが閲覧可能。

マネックス証券株式会社

マネックス証券株式会社

マネックス証券株式会社は、1999年4月に松本大とソニー株式会社との共同出資で設立されました。現在は、日本、米国、香港に個人向けを中心とするオンライン証券子会社を持つ持株会社マネックスグループ株式会社の主力事業として機能しています。口座開設をはじめ、日本株、米国株、投資信託、債券、FX、NISA、iDeCoなどの金融商品の取引をオンライン上で完結するサービスを提供しており、昨今ではレポートやロボアドバイザー、ラップ(投資一任)サービスなど、AIやフィンテックを活用した先進的なサービスの提供も進めています。
社名のMONEXは、MONEYのYをひとつ前に出して、「未来のMONEY。次世代におけるお金との付き合い方をデザインして、お客様に提供していこう。」という意味が込められています。総合オンライン証券として個人投資家へ世界最高水準の金融サービスを提供することを目指しています。

マネックス証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第165号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会