PR特別企画 国土交通省が取り組む「無電柱化」、さらなる推進へ向けて

読者の皆様は、「無電柱化」という言葉をご存知だろうか。

無電柱化とは、地上の電柱や電線を地下に埋設することで災害時の安全性を高め、景観を向上させる取り組みをいう。

国土交通省では、令和3年5月に「無電柱化推進計画」を策定、令和7年度までに実施する無電柱化の取り組みを定めた。

無電柱化の実現には社会全体の理解と協力が必要であることから、本記事ではこれまでの無電柱化の取り組みを振り返るとともに「無電柱化推進計画」の主な内容を紹介する。

無電柱化の取り組みの概要

私たちが快適で豊かな生活を送る上で、電力供給や通信技術の進展はなくてはならないものである。

これらを支えるインフラとしての電力線や通信線は、ほとんどが道路上に建てられた電柱に支えられた「架空線」いわゆる電線であるが、現在、全国的に電柱が地上に乱立し電線や機器が道路上空を覆っている状況である。

この状況に対し、国は昭和60年代初頭から電線類を地中へ埋設するなど無電柱化について計画的に取り組んでおり、一定の整備が図られている。

しかしながら全国には依然として道路と民地をあわせて約3600万本もの電柱が建っており、減少するどころか逆に毎年約7万本のペースで増加しているのが現状である。

電柱は災害時には倒壊により緊急輸送の大きな障害となり、安全円滑な交通への支障、景観の阻害など、さまざまなデメリットを及ぼす。

令和元年房総半島台風(台風15号)では、既往最大風速を更新する局地的な強風等により約2,000本の電柱が倒壊し、道路閉塞に伴う通行止め等により復旧活動に支障が生じた。また、台風だけでなく地震や津波等の影響でも倒壊被害が出ている。

平成30年台風15号による台風被害状況

(千葉県千葉市稲毛区)

(千葉県館山市船形)

災害における主な電柱倒壊状況

災害の種類 年月 災害名 電柱の被害状況
地震 1995年
1月
阪神淡路大震災
(兵庫県南部地震)
電力:約4,500本※1が倒壊
通信:約3,600本※2が倒壊
(供給支障に至ったもののみ)
→倒壊した電柱や電線が道路の通行を阻害。生活物資の輸送に影響を与えたほか、緊急車両の通行にも支障。
※1 「地震に強い電気設備のために」(資源エネルギー庁編)、
※2 NTT調べ
台風 2018年
9月
台風21号 ・大阪府を中心に電柱1,700本以上※1が倒壊
→倒壊した電柱により、通行不能箇所が多数発生。
・最大停電戸数:約240万戸※2が停電
※1 各電力会社、NTT調べ、※2 経済産業省発表
2019年
9月
台風15号 ・東京電力管内で電柱約2,000本※1が倒壊
・最大停電戸数:約93万戸※2、が停電
※1経済産業省HP、※2 経済産業省HP
津波 2011年
3月
東日本大震災
(東北地方太平洋沖
地震)
電力:約28,000本※1が倒壊
通信:約28,000本※2が倒壊
(供給支障に至ったもののみ)
→断線した電線が発災直後の道路の啓開作業を阻害。
※1 経済産業省HP、※2 NTT調べ
竜巻 2013年
9月
埼玉県 越谷市46本※1、千葉県 野田市5本※2
※1 越谷市HP、※2 内閣府HP
 

電柱の弊害は災害以外の面でも数多い。

交通安全の面では、歩道がなく道幅の狭い道路で歩行者が電柱を避けて車道にはみ出すようにして歩かなければならず危険な状況となっている。

景観の面では、海外には無電柱化が完了している観光地は数多いが、日本では多くの世界遺産・日本遺産等の周辺で張り巡らされた電線・電柱で美観が妨げられている。

また地域の伝統的な祭りの際、電柱・電線を避けるために山車の高さの縮小や巡行ルートの変更を余儀なくされるなど、観光振興を図る上でも電柱・電線が支障となっている。

▲狭く通学路の路肩に立つ電柱
(大阪府八尾市)

▲富士山の景観を阻害する電線
(静岡県富士宮市)

▲昔ながらの街並みを損なう電線
(京都市中京区先斗町通)

「無電柱化」とは、こういった弊害を有する電線類を地中に埋め、電柱を撤去する取り組みである。

無電柱化にあたっては、主に道路管理者が道路の地中に管路を設置し、電力・通信事業者が電柱の架線の代わりにケーブルを配線する電線共同溝方式で事業が進められている。

(無電柱化着手前)

(無電柱化着手後)

電線共同溝(イメージ)

無電柱化が進めば、台風や地震などの災害時に電柱が倒れたり電線が垂れ下がったりする危険が減り、緊急車両の通行を妨げることがなくなるため、道路の防災性能向上が見込める。

今後30年以内に、南海トラフ地震、首都直下地震等の巨大地震が約70%の確率で発生することが予測されるほか、気候変動により非常に強い台風の発生頻度が増加するとの予測もあり、災害時における道路の通行確保の観点から、無電柱化を推進する必要性が高まっている。

また通行スペースが広がって歩行者の安全性や快適性が確保できることや、景観が向上して不動産価格の向上や観光客からの評価が高まるなど、各地域の住民にとってもさまざまなプラス効果が期待できる。

世界遺産・日本遺産等の周辺や重要伝統建造物群保存地区、景観法や景観条例に基づく地区のほか、エコパーク・ジオパーク、その他著名な観光地における良好な景観を確保できる。

このようにメリットが多い無電柱化であるが、日本と諸外国とを比較してみると、先進欧米諸国のみならずアジア諸国にも大きく後れをとっているのが現状だ。

ロンドン・パリ・シンガポールなどでは100%の無電柱化が達成されているのに対し、日本ではもっとも進んでいる東京23区でも8%にとどまっている。

こうした状況から、国では無電柱化に係る計画を策定し、無電柱化の推進に向けた着実な取り組みを行ってきた。

さらに直近では令和3(2021)年5月、これまでの成果や課題を踏まえ、国内の無電柱化を一層推進するべく令和3年から令和7年までの「無電柱化推進計画」を策定した。

無電柱化推進計画の概要

新しい計画では、必要性の高い場所から重点的に無電柱化に着手し、防災、安全円滑な交通確保、景観形成・観光振興の観点から新たに約4000km分の無電柱化を進めていくことを目標に掲げている。

災害発生時における被害の拡大を防止するため、市街地等の緊急輸送道路の無電柱化に着手する。

安全・円滑な交通確保の観点からは、バリアフリー法に基づく特定道路の無電柱化に着手し、ベビーカーや車いすの人にも利用しやすい安全で快適な通行空間の確保を行う。

また、世界遺産周辺、重要伝統的建造物群保存地区や歴史まちづくり法重点地区の無電柱化に着手することでさらなる景観形成・観光振興につなげる。

計画毎の無電柱化実施延長と目標延長

この目標を達成するため、また諸外国に負けない日本本来の美しい景観を取り戻し、安全で災害にもしなやかに対応できる「脱・電柱社会」を目指すため、「新設電柱を増やさない」「徹底したコスト縮減」「事業のさらなるスピードアップ」の3つを取り組み姿勢として推進することとしている。

このうち、「新設電柱を増やさない」については、冒頭でも言及した通り年間約7万本もの電柱が増加している状況である。

電柱本数の増加要因については、家屋新築などに伴うものや、太陽光発電などの再生可能エネルギー施設との接続に対応するものが多いとされているが詳細はわかっていない状況である。

そこで、増加要因を調査・分析し、削減に向けた対応方策をとりまとめることとしている。

新電柱の増加状況

また、新設の電柱を抑制するため、道路法に基づき道路上に電柱を新たに建てられないようにする取り組みも進められている。

しかし、道路上の電柱設置を制限しても道路沿いの民間の土地に電柱を建てることは可能であり、沿道からの電柱倒壊で道路交通が阻害されるリスクに対処できない状況が続いていた。

そこで、令和3年3月の法改正で届出・勧告制度が新設された。

9月より施行されたこの制度では、沿道に届出対象区域を指定し、当該区域で電柱などの工作物設置の届け出があったときに、道路管理者は災害時の円滑な交通確保のために設置場所等の変更を求めることができるようになった。

▲沿道民地の電柱が倒壊し道路を閉塞した例
(国道55号 高知県安芸市)

▲沿道民地の電柱イメージ

今回は、推進計画の主な取り組み内容について紹介したが、今後の計画の達成には、国・地方公共団体・電線管理者・地元関係者等の連携と協力はもちろん、各分野の叡智を結集していくこと、広く国民の理解と協力のもとに取り組むことが欠かせない。

国は「今後も国民の皆様の理解と関心を深め、無電柱化の重要性に関する広報・啓発活動を行ってゆく」としている。

私たちも、安全で円滑な生活と景観向上などのメリットをもたらす無電柱化に対し理解・協力し、さらなる推進を図っていきたい。