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PR特別企画:国土交通省 無電柱化推進法 5年、何が変わったのか?

 電柱・電線の撤去を促す「無電柱化の推進に関する法律」(無電柱化推進法)の施行から約5年。 無電柱化推進セミナー「何が変わったの!? これからの課題は?」(NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク東京支部主催)が1月20日にオンライン形式で開かれ、国土交通省の担当者や有識者らが無電柱化の現状や今後の課題について熱心に議論した。

  • 国立大学法人 東京工業大学
    副学長(産官学連携担当)
    教授 工学博士 環境・社会理工学院
    屋井 鉄雄 氏

  • 特定非営利活動法人電線のない街づくり支援ネットワーク
    理事 事務局長
    井上 利一 氏

  • 国土交通省
    道路局 環境安全・防災課
    交通安全政策分析官
    吉田 敏晴 氏

【講演】無電柱化の推進に関する取り組み状況

吉田敏晴・国土交通省交通安全政策分析官

 無電柱化は、「良好な景観形成」「道路の防災性能の向上」「通行空間の安全性・快適性の確保」の三つを目的として、1986年から計画的に進めてきた。

 当初は景観形成が一番の目的だったが、近年は台風や大雪で電柱が倒れる事例が相次いでおり、防災目的の整備が重要視されるようになってきている。

ロンドンやパリ、香港、シンガポールでは無電柱化が100%達成されているのに対し、日本の無電柱化率はもっとも進んでいる東京23区でも8%と圧 倒的に遅れているのが現状だ。

無電柱化の整備状況(国内、国外)
  • ※1ロンドン、パリは海外電力調査会調べによる2019年の状況(ケーブル延長ベース)
  • ※2香港は国際建設技術協会調べによる2004年の状況(ケーブル延長ベース)
  • ※3シンガポールは『POWER QUALITY INITIATIVES IN SINGAPORE, CIRED2001, Singapore, 2001』による2001年の状況(ケーブル延長ベース)
  • ※4台北は台北市道路管線情報センター資料による台北市区の2015年の状況(ケーブル延長ベース)
  • ※5ソウルは韓国電力統計2019による2018年の状況(ケーブル延長ベース)
  • ※6日本は国土交通省調べによる2019年度末の状況(道路延長ベース)

 しかし、2016年に無電柱化推進法(以下:推進法)が成立し、無電柱化の計画作りを各自治体の努力義務とするなど状況は変わってきている。推進法を受けて策定された無電柱化推進計画では、20年度までの3年間で全国の道路1400キロ分の無電柱化を実現する目標も掲げた。

 計画の達成状況だが、「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」の分を含めても計約1800キロの着手にとどまっている。住民との調整や用地買収に難航していることが主な原因だ。

 無電柱化の完了までに着手から平均で7年もかかっており、発注方式の工夫など事業のスピードアップが求められる。

 無電柱化を推進する一方で、毎年約7万本の電柱が増加していることも課題だ。家屋新築などに伴う供給申し込みが大半とみられる。
また、全国にある緊急輸送道路約9万キロのうち、約7.5万キロで電柱の新設を禁止しているが、沿道の民地にある電柱については対策が取られておらず、防災の観点から新たな措置が必要だ。

 こういった状況や課題を踏まえ、今年度から始まる次期無電柱化推進計画の方向性について有識者の間で議論している。
例えば、電力10社の配電機材の仕様を統一して低コスト化を目指すほか、設計や工事などを包括発注することで事業のスピードアップを図る。
全国10か所程度でスピードアップのモデル事業を実施し、その成果を国のワーキンググループで議論、手引きやマニュアルも作っていきたい。

【パネル討論】無電柱化の進捗とこれからの課題

・パネリスト
屋井鉄雄・東京工業大学副学長(無電柱化推進のあり方検討委員会委員長、無電柱化推進技術検討委員会座長)
吉田敏晴・国土交通省交通安全政策分析官

・コーディネーター
井上利一・NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク事務局長

井上:無電柱化推進法の成立から約5年がたったが、今後さらに無電柱化を推進していくにあたって、どのような課題を感じているか。

吉田:大きく三つの課題がある。一つ目が、推進法が施行されたにもかかわらず、依然として毎年約7万本の電柱が増えているという状況だ。無電柱化のスピードアップも課題だが、やはり新設電柱を抑制しなければならない。

 二つ目はコストの問題。平均して1キロの区間を無電柱化するのに5.3億円もかかっている。新工法を採用するなどしてコストダウンを進めなければならない。特に山間部や島しょ部では、安価で簡便な無電柱化を検討する余地があるのではないか。

 三つ目が事業のスピードアップ。行政の力だけで上手くいくものではなく、電線管理者ら関係者との連携強化も課題だ。

屋井:新設電柱を抑制したいというのはわかるが、推進法の趣旨からして、無電柱化はあくまで防災や安全のための手段に過ぎない。毎年約7万本が増えていると言っても、増えても構わない場所もあるはずだ。効果が高いところや、目につく場所を優先的に無電柱化するといったメリハリが大切だ。
低コスト化については、まだまだ工夫していく余地があるだろう。道路管理者は新しい手法を積極的に試してみる姿勢が必要だ。

 スピードアップで今後重要になるのは、自治体や商店街といった地元からのボトムアップだ。地域の将来について長期的な観点から考えてもらうことで、住民間の合意形成もスムーズに進む。そうなると、調整にかかっていた時間は短縮できるのではないか。

井上:そうした課題を解決するために、私たちは民間という立場で、低コストの無電柱化を推進しようとしている。そのためにはいくつかの規制緩和が必要だ。例えば、低コストの製品や手法をより迅速に現場に導入することや、道路占用の手続きの簡素化、東京都が行っているような民間主導の無電柱化への補助金制度の創出などだ。これからは官だけでなく、民間の力をうまく活用していくことが必要ではないか。

吉田:低コストの製品や新工法については、効果が期待できるものがあれば積極的に使ってもらおうと考えている。施行した上で製品に対する評価を国が集約し、マニュアルを作成して共有したい。

 また、宅地開発を行う時に無電柱化を一緒にやった方が良いに決まっているが、ネックとなっているのは費用がかかるから採算割れしてしまうことだろう。少し支援すれば上手くいくのであれば、行政として検討したい。

屋井:民間活用には、そもそも道路管理者が無電柱化に対応できる能力の向上が不可欠だろう。メーカー側が新しい製品を開発しても、それを取り入れるのに時間がかかってしまっているのが現状だ。海外で実現できている技術がどうして日本ではできないのかと疑問に思うことがよくある。

井上:欧米はもちろんだが、アジア諸国でも日本より無電柱化が進んでいるというのはよく聞く話だ。先行している海外の事例で日本に応用できるもの、日本が見習うべきものがあるのではないか。

吉田:海外と日本の無電柱化事業で大きく違うところは、日本は道路管理者が主体で行うのに対し、海外では基本的に電線管理者が自分で行っているという点だ。

 埋設の方式もはるかに簡便。日本は絶対に停電してはいけないといったように、ライフラインに対する考え方が海外と異なるのかもしれないが、場所によってはもう少しダウングレードしてもよいのではないか。

 また、無電柱化をやったことがないという自治体も多い。一から十まで無電柱化のノウハウについて理解してもらうのは難しいだろう。例えば、東京都道路整備保全公社のような専門組織が設計や施工などすべてを代行する手法も有効だ。

屋井:海外の国々には、そもそも日本のような「道路占用」という概念自体がない。あくまで社会にとって重要なインフラの一つという考え方だ。だから、電線管理者だけが負担するのではなく、利用者も一定の負担をしている。西オーストラリアでは、沿道の人たちが一世帯につき日本円で約10万円を負担している地域もあった。しかし、その住宅地が無電柱化された結果として、不動産価格も上がるため、住民の納得の上で、計画に基づいてどんどん進めていけるようになる。

 ワシントンでは中心部からわずか10キロ程度の地点で、地上にあるトランスを、そのまま地下に入れるというユニークな工事を行っていた。日本でももっといろんな工法を試してみてよいのではないか。海外の事例はまだまだいっぱいある。それを寄せ集めてくるだけでも何らかのブレイクスルーが起きるかもしれない。