出典は万葉集、国書初

5月1日施行、政府決定 憲政史上初の事前公表

政府は1日、「平成」に代わる新元号を「令和(れいわ)」と決定した。今の天皇陛下が改元政令に署名され、同日中に公布。4月30日の天皇陛下退位に伴い、皇太子さまが新天皇に即位する5月1日午前0時に施行される。皇位継承前の新元号公表は憲政史上初。出典は「万葉集」で、中国古典でなく、国書(日本古典)から採用したのは確認できる限り、初めて。「大化」(645年)から数えて248番目の元号で、1979年制定の元号法に基づく改元は「平成」に続いて2例目となる。

安倍晋三首相は記者会見で、新元号「令和」に関し「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められている」と述べた。

改元は天皇一代に一つの元号とする「一世一元」制が採用された明治以降、天皇逝去に伴う皇位継承時に行われてきた。今回は退位特例法に基づき、逝去によらない改元となる。

元号選定手続きは平成改元時を基本的に踏襲した。政府は元号候補名の考案を依頼する専門家数人を「国文学、漢文学、日本史学、東洋史学」の分野から選び、3月14日付で正式委嘱。候補名から数個の原案に絞った。

1日にはノーベル賞受賞者の山中伸弥(やまなか・しんや)京都大教授ら有識者9人による「元号に関する懇談会」を首相官邸で開いて意見を聞き、衆参両院の正副議長の意見も聴取して改元政令を閣議決定した。

政府は国会から特例法の付帯決議で「改元に伴って国民生活に支障が生じないようにする」と求められた点を重視。首相は1月の記者会見で、4月1日に事前公表すると表明した。

「令和」(れいわ)の典拠

出典
「万葉集」巻五、梅花の歌三十二首(うめのはなのうたさんじゅうにしゅ)并(あわ)せて序(じょ)
引用文
初春 月、気淑風 、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香
現代語訳
折しも、初春の佳(よ)き月で、気は清く澄みわたり風はやわらかにそよいでいる。梅は佳人の鏡前の白粉(おしろい)のように咲いているし、蘭は貴人の飾り袋の香のように匂っている (角川ソフィア文庫版、伊藤博訳注による)

新元号ドキュメント

新元号決定を巡る1日の動きは次の通り。

8:33
菅義偉官房長官が首相官邸に入る
8:38
宮内庁の山本信一郎長官が登庁。記者団に「一連の手続きを静かに見守りたい」
8:57
横畠裕介内閣法制局長官が官邸の官房長官室に入る
9:05
安倍晋三首相が官邸入り。記者団に「希望に満ちあふれた新しい時代につながるような新元号を決定したい」
9:32
山中伸弥京都大教授や作家の林真理子さんら有識者9人が参加し「元号に関する懇談会」開催
10:20
菅氏が大島理森、伊達忠一衆参両院議長らから衆院議長公邸で意見聴取
10:57
全閣僚会議で協議
11:17
新元号を決定する臨時閣議開始
11:28
新元号の政令文書を積んだとみられる車が官邸を出発。4分後に皇居に入る
11:41

菅氏が記者会見で新元号を「令和」と発表

11:42
中国共産党機関紙、人民日報が速報
11:45
韓国の聯合ニュースが報道
11:50
ロシア国営タス通信が速報
11:50
立憲民主党の枝野幸男代表が「新しい時代が平和で、国民生活が穏やかであることを祈念したい」との談話発表
12:05
首相が記者会見。新元号に関し「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められている」
12:31
河野太郎外相が、新元号を世界各国に通知したと記者団に表明
13:15
「元号を令和に改める」と記載した官報号外が張り出される

極秘選定作業の源流

陛下手術、走る緊張
十六年の退位意向で現実に

2012年2月、天皇陛下が心臓の冠動脈バイパス手術を受けられた。「あの時は本当に緊張感が走った」。元号事務を担当していた元内閣官房幹部は、当時の野田佳彦首相下の官邸が固唾(かたず)をのんで見守った様子を振り返った。万が一のことが起きれば、皇位継承に伴う改元作業が現実味を帯びたからだ。

実際、同幹部は天皇陛下の手術を前に「有識者懇談会メンバーの予定者に誰が連絡するか、念のため確認した」と明かす。元号選定の政府要領は有識者懇談会からの意見聴取を規定する。

先立つ10年7月、天皇陛下は「健康上の問題が起きる前に譲位(退位)したい」と宮内庁長官らに伝えていた。ただ改元に向けた作業が本格化した最大の契機は約6年後の16年8月に天皇陛下が退位の意向をにじませたビデオメッセージだった。

この極秘任務と向き合ってきたのが、元号選定の実務を仕切る古谷一之官房副長官補だ。第2次安倍内閣発足後の13年4月、国税庁長官から就任。内政全般の重要政策を裏方で支え、菅義偉官房長官の信任も厚い。ビデオメッセージの後「私の時にいよいよ巡ってきた」と秘めた思いの一端を周囲に吐露した。

元号の候補名は副長官補室やその前身の内閣内政審議室が代々、国文学や漢文学などの専門家に考案を依頼してきた。複数の元政府高官によると、1989年1月の「平成」改元以降の約30年間、首相が代わるごとに、副長官補や内政審議室長が事務の官房副長官に選定状況を説明。さらに必要に応じ、時の首相や官房長官に具体的な候補名を含めて伝えていた。

中曽根、竹下両内閣で元号担当だった的場順三・元内政審議室長は「危機管理上、元号案が準備できていない状況は許されない」と明言する。

周到な準備とともに秘密保持にも腐心した。元担当者は「暗証番号と鍵の両方で解錠できる専用金庫があり、番号は手書きのメモで渡した」と証言する。菅氏は記者会見で「令和」の考案者に関し「新元号と特定の個人の結び付きが強調されかねない」と公表を拒んだ。

古谷氏は最近、副長官補経験者から「昭和天皇の逝去に伴う平成の改元と異なり、余裕を持って準備できるのでは」と問われ「それはない」と即座に反論。新元号発表や改元時期で、さまざまな意見が出たのを踏まえ「時間がある分、調整事項が増えた」と言い切った。

元号あれこれ

01

一世一元

「明治」以前は慶事や地震、火災、疫病の流行などがある度に、まじない的な意味を込め、しばしば改元されている。天皇一代につき、一つの元号と定められたのは明治から。

1968(明治元)年に行政官布告を発布し、89(同22)年に旧皇室典範、引き続いて旧登極令などの法令が整備され、元号は天皇一代について一つとする「一世一元制」が確立した。

しかし明治、大正、昭和と続いた元号は、第2次世界大戦の敗戦によって法的根拠を失い、46(同21)年の新憲法公布(47年施行)に伴い、皇室典範も改められ、元号の規定が新典範から外された。

新憲法後の昭和の性格について、政府は「事実たる慣習として、国民に定着している」との解釈を示し、実態上何ら問題ないとの見解を明らかにしている。

だが、75(昭和55)年前後から「法的にも明確にしないと、新天皇の即位に混乱を招く」などの理由から政府、自民党から元号法制定の動きが出始め、79(同54)年2月に元号法案を国会に提出、同6月に成立した。昭和に続く新元号「平成」と今回の「令和」は、同法に基づいて改元、制定された。

02

「昭和」が最長

わが国に元号が初めて登場したのは645年の「大化」。以来、平成まで247の元号が使われたというのが定説。初期の一時に途切れながらも701年の大宝律令によって、公文書に元号を用いることが明文化され、それ以来、1300年以上にわたって日本では元号が使われ続けてきた。

歴代の元号で最も長く続いたのは「昭和」。大正天皇1926(大正15)年12月25日に大正天皇が死去し、昭和天皇の即位で直ちに昭和と改元された。改元期日は大正天皇の死去当日の「即日改元」で、昭和は約62年続いたことになる。

昭和に次いで長かったのは、明治の44年9カ月、応永(室町時代)の33年10カ月。平成30年4カ月の平成が歴代4位となった。これとは逆に”短命”な元号は、2カ月余の「暦仁」(鎌倉時代)、約3カ月の「天平感宝」(奈良時代)などがある。

また、最初の元号「大化」から明治の前の「慶応」まで、天皇一代当たり平均2・86回、改元した計算で、元号の“平均寿命”は約5年。明治以降の一世一元制が元号を長寿化させている形だ。

03

元号法

1979(同54)年6月に公布された元号法は、一世一元制の確立を主眼としたもので、全文わずか29字の超ミニ法。同法は(1)元号は、政令で定める(2)元号は、皇位の継承があった場合に限り改める―と定め、付則に(1)この法律は、公布の日から施行する(2)昭和の元号は、本則第一項(元号は政令で定める)の規定に基づき定められたものとする―と明記されている。

また、政府は同年10月に「元号選定の手続きについて」とする、元号制定に当たっての具体的な手順を示したマニュアルを閣議了解している。「平成」「令和」は、これらの法規定に沿って決定された。

元号法を手掛けたのは、故大平正芳元首相。元号法の所管官庁は総理府(現内閣府)で、当時の総理府総務長官は三原朝雄氏。大平―三原コンビで元号法制定の準備が進められ、同年2月に国会に提出、約4カ月後の6月6日に成立した。成立時の参院本会議では自民、公明、民社、新自由クラブが賛成、社会、共産両党などは反対した。

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