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PR特別企画 神奈川県住宅供給公社 地域と一緒に 人と街をつなぐ懸け橋に

 人と人とのつながりを楽しむことをコンセプトにつくられた賃貸住宅が注目を集めている。新型コロナウイルス禍を機に在宅時間が増え、住まいに対するニーズが変わってきたためだ。物件を手がけたのは神奈川県住宅供給公社(以下、公社)。常駐の管理人が地域住民も巻き込んだイベントを開くなど、地域コミュニティ再生につなげる実験的取り組みに挑んでいる。

入居者がゆるやかにつながる仕組みを

開放的な空間が広がる「フロール元住吉」のシェアラウンジ。テレワークで利用する入居者も多い

 革張りのソファや観葉植物が置かれ、間接照明が優しくともる空間。幼い子供を連れた母親らが、本を読み聞かせながら雑談に花を咲かせている。

 まるでカフェにいるかのような錯覚に陥るが、ここは公社が手掛ける賃貸住宅「フロール元住吉」(川崎市中原区)の1階にあるシェアラウンジだ。

 同物件は2020年1月に竣工。入居者同士や地域住民との交流を促し、コミュニティづくりにつなげる新しい賃貸住宅を目指してつくられた。

 最大の特徴は、守人(もりびと)と呼ばれる管理人が常駐していることだ。巡回など通常の管理に加え、フラワーアレンジメント講座や本の読み聞かせといった入居者同士の交流イベントをシェアラウンジなどで企画・開催し、コミュニティづくりをコーディネートしている。

2020年春に入居した家族。「交流イベントを通じて住民同士の顔が見える関係を育めた」と話す

 交流イベントに長男と参加した入居者の女性は「住民同士の交流がしたくても、自ら率先して声をかけていくのはとても大変なことです。守人さんのおかげで自然に触れ合う機会ができて本当に助かりました」と感謝する。

 仕掛けはほかにもある。入居者以外も自由に利用できる地域交流スペースを1階に併設。守人が運営しており、コワーキングカフェのほか、夕方以降は小学生向けの放課後サポートの場所などに活用されている。週末には地域住民も巻き込んだ朝市も開かれる。

神奈川県住宅供給公社の浅羽義里理事長

 公社の浅羽義里理事長は、これらの取り組みの狙いについて次のように語る。

 「若いファミリーは自治会活動や住民同士の交流が苦手な傾向があります。しかしそれでは街の持続的な発展につながりません。ただ住んで生活するだけでは温かみのない街になってしまうし、何より街全体の未来を考えようという発想が出てきません。そうならないよう入居者だけではなく、地域住民の方ともゆるやかな交流が生まれやすい様々な工夫を凝らしたのです」

育児経験 住宅づくりに生かす

フロール元住吉で行われた交流イベントの様子。守人=写真右端=も交ざり、入居者がそれぞれの故郷の名産品を紹介しながら交流を深めた

 では、公社がコミュニティを重視する賃貸住宅づくりを考えたきっかけは何だったのだろうか。

 それは、フロール元住吉の計画を担当した公社職員の並木文栄さんが以前、産休中に自宅マンションでの育児で孤独を感じたことだったという。

 「ひたすら子供と向き合わなくてはいけない生活に心細さを覚えました。周囲に顔なじみがいれば同じような悩みを共有したり、たわいもない話をして気を紛らわしたりできるのに、と思ったものです」と並木さんは当時を振り返る。

 この課題意識を最初に商品企画に生かしたのが、2017年に「子育て応援マンション」をコンセプトに竣工した「フロール新川崎」(川崎市幸区)だ。

 マンション内に子供を安心して遊ばせられる空中庭園を設け、1階には市の認可保育所を誘致。「ママ友」を作るきっかけとしてベビーマッサージやヨガなどのイベントも公社が専門家に委託し、支援した。

2020年度グッドデザイン賞を受賞した「フロール元住吉」の外観。屋外でも憩えるようベンチや大きな庇(ひさし)を設けた

 しかし、と浅羽理事長は言う。「コミュニティづくりは一定程度成功しましたが、外部からの定期的な支援だけでは限界があることもわかってきました。そこで、フロール新川崎のノウハウを受け継いで発展させたのが冒頭で紹介したフロール元住吉です。守人を常駐させ、より主体的に入居者や地域を巻き込んでもらうようにしたのです。外出が制限されるコロナ禍の今は人間関係を築きにくいものですが、フロール元住吉ではコロナ禍の最中でも入居者同士の交流が可能となり、重宝がられているそうです」

 フロール元住吉は2020年10月、グッドデザイン賞を受賞。テナント料重視でなく、共用部で全体の価値を上げる計画を賃貸住宅で挑戦し、多様な立場の人をつなげるハブとしての共同住宅の新しい可能性などが評価された。

 浅羽理事長は「家賃を生まないラウンジやカフェを併設することは、効率性を優先する民間企業には難しいことです。社会的企業として課題解決につながる試みを期待されている公社だからこそ、付加価値がある実験的な物件を提供できたと思います」と手ごたえをつかむ。公社では今後もコミュニティづくりを促す物件を手がけていく考えだ。

ベッドタウンから暮らしを楽しむ街へ

 公社では新規物件だけでなく、既存の団地でもコミュニティの維持に力を入れている。公社の賃貸住宅の多くは高度成長期に建設され、入居者の高齢化や空室増が課題となっているからだ。

 その一つが、東京駅から電車で1時間余りの場所にある二宮団地(神奈川県二宮町)だ。横浜や平塚、東京のベッドタウンとして高度成長期の住宅需要に応えるため、1960年代に公社が約72ヘクタールの敷地に分譲住宅と賃貸住宅の開発に着手。多くの家族が移り住んできた。

 しかしそれから50年以上がたち、団地全体の少子高齢化に伴い空き家が増加。二宮団地をはじめとするニュータウンと共に成長してきた二宮町全体の人口も1999年をピークに減少が進んでいる。

二宮団地の近隣の水田で行われた田植え体験イベント(神奈川県小田原市)

 そこで2016年、公社は二宮団地を再生するプロジェクトをスタートした。

 「計画の策定にあたり最初に考えたことは、二宮団地の活性化だけでなく、町や地域の魅力を見直し、高めていくことでした」(浅羽理事長)

 二宮町の魅力は何といっても、海や里山などの自然豊かな環境だ。団地開発時のベッドタウンとしての役割を見直し、暮らしを楽しむ新たな価値観を持つ人々に移り住んでもらうことを目指したのだ。

 取り組みの一つが、町や地域住民と連携した地域資源の発掘だ。団地内の遊休地や近隣の水田を活用した農業体験イベントを開催したほか、地域住民が交流できる共有スペースを設置した。町が所有する古民家でコンサートも開催するなど、都市部にはない「里山ライフ」の魅力を発信している。

DIYでリノベーションした自宅でくつろぐ家族。顔なじみの店が増え、地域住民と話す機会も増えてきたという

 また、多様なニーズに応えようと、新しい暮らし方を提案する取り組みも始めた。本拠地が別にある人でも週末の趣味などの活動拠点として二宮団地に居住できる「二地域居住」や、入居者自身が好みの部屋にDIYできるセルフリノベーションプランなどだ。

 2018年に東京から移り住んできた夫婦は、団地の入居者らに手伝ってもらいながら自宅をDIYでリノベーション。「引っ越し後に娘が生まれたのですが、1歳の誕生日には交流スペースで地域の方々にお祝いしていただきました。東京で生活していたらこのような人とのつながりを感じることは少なかったと思います」と話す。

 プロジェクト開始から二宮団地の新規入居者数は急激に増加。2017~20年度の4年間で200人を超え、2019年度以降はプロジェクト開始前(2014~16年度)の約3倍となる年間約50人ペースとなっている。

 「地域資源は昔からそこに住んでいる人には意外と分からない価値があるものです。『こんなもので人が来るの?』という内容でも、他の地域の人からすると『なんて羨ましい』と思うことが少なくありません。地域資源は発掘すればいくらでもあるんです」(浅羽理事長)

浦賀団地の夏祭りに参加する団地活性サポーターの大学生

 公社では二宮団地での取り組みのほかに、大学と連携したコミュニティの活性化も進めている。第一弾として2016年、神奈川県立保健福祉大学と連携協定を締結。同大の学生が「団地活性サポーター」として浦賀団地(神奈川県横須賀市)で生活しながら、高齢者のフレイルや骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防についての講座を団地の集会所で入居者向けに開催したり、夏祭りなどの自治会活動に参加したりと、団地のコミュニティ活性化のひと役を担っている。

 大学との連携は現在、同大を含む8大学に拡大。団地の空室を利用したリノベーションプランの設計や、モビリティと連携した街づくりの推進など活動の幅も広がっている。

新経営計画を公表「入居者に恩返し」

 公社は2013~22年度の経営計画で目標に掲げた神奈川県からの財政的自立を実質的に2020年度に達成。同計画を2年前倒しで終了し、2021年8月に2021年度から25年度に向けた新たな経営計画を公表した。

 前計画では借入金の返済を最優先としていたが、新計画では経営基盤の長期安定化を図るため、経常利益目標を前計画の年間20億円から10億円に減らし、老朽化が進行する公社資産への再投資を積極的に行っていくことを打ち出した。

「人間関係が希薄では、街は衰退してしまいます」とコミュニティの重要性を説く浅羽理事長

 この狙いについて、浅羽理事長は次のように話す。

 「公社は1990年代のバブル崩壊の影響などにより債務超過寸前に追い込まれ、存在意義すら問われた時代がありました。借入金の返済で精いっぱいで団地の老朽化に対して十分に手を打ってきたとは言えなかったのです。しかし、2020年度末で県の損失補償が付いた借入金をすべて解消できました。これからは反転攻勢ではありませんが、経営基盤をしっかりと強化しつつ、入居者に少しでも恩返しをしていきたいと思っています。これが一番の大きな目標です」

 新計画では経営目標に「社会環境の変化に応じた取り組み」も掲げた。具体的には、引き続き賃貸住宅のコミュニティづくりに力を入れていくほか、激甚化する自然災害対策や脱炭素社会への対応を進めていくことを目指す。

 また、ウイズコロナ・ポストコロナの「新たな日常」に対応する住宅環境の整備を進めていくことも明記した。テレワークのニーズの高まりを受け、公社が2021年2月に竣工した「フロール梶が谷」(川崎市高津区)では建設中に仕様を変更。シェアラウンジにはテレワークに対応したカウンターを増やし、一部の住戸にテレワークにも対応可能な小上がりの書斎スペースも設置した。

 2020年に創立70周年を迎えた公社。浅羽理事長は次の時代へ向けてどんな青写真を描いているのだろうか。

 「70年の歴史をひも解くと、公社は社会的企業として時代とともに変わりゆく社会と価値観に応じて、暮らしをつくるパイオニアとして歩み続けたと自負しています。公社の賃貸住宅だけを対象にするのでなく、そこから地域に波及した街づくりにまで影響する試みを今後も続けていきたいと考えています。それが街の持続的な発展につながると信じています」

神奈川県住宅供給公社

神奈川県住宅供給公社

1950年9月に(財)神奈川県住宅公社として設立。1966年に神奈川県を設立者として特別法人「神奈川県住宅供給公社」に組織変更、2020年には創立70周年を迎えた。これまでに神奈川県内で分譲・賃貸・社宅など約8万戸の住まいを提供。現在は約13,300戸の賃貸住宅、約800室の介護付有料老人ホーム(自立型)などを所有・運営しながら、団地再生や地域活性化を大学と連携して進めるなど、神奈川県の住宅政策の一翼を担う社会的企業として、さまざまな課題に取り組んでいる。今後は人口減少・超少子高齢社会への対応や健康寿命の延伸、脱炭素化など日本が抱える課題に対し、団地や地域で改善・解決する先行事例を生み出すことが期待されている。

浅羽義里(あさば・よしさと)

浅羽義里(あさば・よしさと)

神奈川県住宅供給公社理事長。1956年神奈川県生まれ。東京工業大学土木工学科を卒業。同年に神奈川県横浜治水事務所に入庁。神奈川県都市計画課長、環境共生都市部長、都市部長、県土整備局長等を歴任し、2016年から土木職からは初となる神奈川県副知事を務めた。2020年4月より現職。趣味はゴルフ、料理。