
外航船員とは、海上輸送に携わる航海士や機関士など、海の上のプロフェッショナルたち。日本と世界中を結ぶ海上輸送の大きなミッションは四面を海に囲まれた日本の国民生活や経済を支えること。しかし、日本商船隊※に乗り込んでいる船員の約5万人のうち95%が海外出身。大半を海外の人材に頼っているという現状がある。たくさんの人に外航船員の仕事について知ってもらい、これまで身近に感じることがなかった人にも理解を深め、そして、未来の選択肢にしていただけたなら嬉しい限りだ。
そこで、外航船員を目指す商船系高専の学生と、現在外航船員として活躍している卒業生に話を聞いた。
※国内外航海運企業の船舶の総称

活躍するOBインタビュー 01
株式会社商船三井 航海士 宇都宮 直人さん
(弓削商船高等専門学校OB)
達成感や喜びもスケールが違う、外航船員という仕事。

現在は、航海計画の立案と日々の労務管理を主な仕事として充実の毎日を過ごしています。できることを少しずつ増やし、目指すのは周りから信頼される船長です。外航船員の勤務時間は交代制で1日8時間、たとえば6か月乗船するとその後基本的に3か月と休みも長く、しっかり計画的な休暇がとれるのが特長です。自由時間はインターネットで好きな動画を観たり、友達や親とのコミュニケーションもとれて快適です。積荷は液化天然ガスや自動車など、人間の生活に欠かせないものばかり。重要な物資輸送に携わる仕事だけに、長期航海を安全に終え、無事に下船してあらためて味わう達成感は格別ですよ。
「おもしろそう」と思えたら、ぜひ挑戦してみてください。
航海士を目指したのは先に商船高専で学んでいた兄の影響が大きく、その姿を見て私も同じ進路を選びました。面倒見抜群の先生や先輩方に恵まれ、勉強はもちろん商船高専在校中にさまざまな経験を分かち合った仲間は、生涯の友として大きな財産になっています。外航船員を志望するにあたっては、特別大きな志がなくても、海や船にあまり興味がなくても、少しでも「おもしろそう」と思えたら大丈夫です。また、仕事に男女差がなく、育休制度をはじめ女性が働きやすい職場環境もどんどん実現しています。知識と技術を幅広く学んで、未来へ確かな一歩を踏み出してください。活躍の舞台は世界です!!


活躍するOBインタビュー 02
川崎汽船株式会社 機関士 若井 宥太さん
(鳥羽商船高等専門学校OB)
商船高専で学んだことが、今の自分に脈々と息づいている。

二等機関士として外航船に乗り、発電機やボイラーの整備、燃料補給の現場を担当。陸上勤務の時は、講師として新入社員向けの講義を担っています。小さい頃から組み立てや分解など機械に触れるのが大好きで、将来は資格をとって技術系の職種に就くのが夢でした。家系的にも船員に縁が深く、商船高専に進み、現在、機関士として活躍しているのも自然の流れかもしれません。商船高専時代に、特定の分野だけではなく総合的な理論がしっかり身についたこと。そして、学生寮で仲間と多くの時間を共有して集団生活に馴染んでいたことは、外航船の仕事にとても役立っています。海の現場は楽しいですよ。
さらにキャリアアップして、その先は機関長を目指す。
綿密な整備計画のもと安全航行できるよう、機関士の仕事は大きな責任を伴います。整備にはていねいな作業が求められますが、その点は私の強みであると自負しています。機関担当のエンジニアなので、やはり最大の目標は航海中の「無事故・無災害」に尽きます。世界の海を走りながら、常にチームで動いて問題を解決していく満足感はなかなか陸上では得られません。ヨーロッパやアメリカなど、世界各国に寄港して自由時間にリフレッシュできるのも楽しみ。目指すは機関部の最高責任者である機関長です。さらに高い技術を習得して、機械のプロフェッショナルとしてキャリアを積んでいきます。

