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PR特別企画 一般社団法人日本プロジェクト産業協議会 日本の水辺再生を議論 JAPICが名古屋でシンポジウム

 産官学民の英知を結集して政府などに政策提言する一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(東京都中央区、進藤孝生会長、略称JAPIC)は6月21日、名古屋商工会議所(山本亜土会頭)と共催で、「日本水辺再生シンポジウム」を、名古屋コンベンションホール(ささしまライブ、名古屋市中村区)で開いた。

 会場には建築、土木など民間企業のトップや、官庁、自治体、関係団体の幹部、学識経験者や記者ら120人が集まり、520人を超える視聴者がオンラインで参加。全国の河川・運河を再生した事例を報告し、名古屋中心部の水辺再生を図る方策について専門家の意見を聴き、各界代表が議論した。

 この日のシンポジウムは国土交通省中部地方整備局、名古屋市住宅都市局、みなと総合研究財団、日本建設業連合会、土木学会、中部地域づくり協会、中日新聞社が後援。名古屋都市再開発促進協議会が協力した。

丸川裕之・日本プロジェクト産業協議会専務理事

「名古屋三川」活性化の議論を

 冒頭、JAPICの丸川裕之専務理事が開催あいさつし、「昨年名古屋市で行われた世界運河会議でJAPICは、名古屋の中川運河の再生構想を発表した。今日は名古屋商工会議所とともに、全国の運河や河川を開発、再生した例を学び、堀川、新堀川と合わせた名古屋三川を活性化する議論を進めたい」と述べた。

川村たかし・名古屋市長

味わいある水辺に

 続いて、来賓として出席した河村たかし名古屋市長があいさつした。河村市長は「いま国も自治体も財政危機ばかり強調して、投資不足になっている」と指摘。「名古屋も精いっぱい協力するので、味わいのある人間くさい雰囲気のする運河の再生をやっていきましょう」と意欲を示した。

堀田治・国土交通省中部地方整備局長

不断の努力が必要

 次に、国土交通省の堀田治中部地方整備局長(当時)が来賓としてあいさつした。堀田局長は「高質な水辺を持った都市を形成するには、行政や企業、住民らの不断の努力が必要になると思う」とした上で、「名古屋三川の再生、周辺の街づくりに、中部地方整備局も皆さんと一緒に取り組む。もちろん他人事ではない」と述べた。

新しい名古屋の軸線に 気品と活気ある街づくりを

松尾直規・中部大学名誉教授

 続いて、中部大学の松尾直規名誉教授が「都市の水辺再生における留意点と方向性~中川運河と堀川を中心に~」とのテーマで基調講演した。

 松尾名誉教授はフランスが1989年に新凱旋門を完成させ、凱旋門、ルーブル美術館と続くラインを「パリの軸線」に据えた例を挙げ、「名古屋も再生される三川から名古屋港へのラインを、自然・文化・経済の三位一体となる新たな軸線にすべきだ」と主張した。

 三川それぞれの特徴と課題、改善すべき関係について具体的に指摘した上で、水辺空間の再生へ整備するインフラとして、①水辺を楽しみ文化交流も進める「アクアグリーンベルト」②沿川施設を再生し職住接近も図る「ライフスタイルリノベーション」③水上交通を軸に拠点を結ぶ「モビリティネットワーク」―を挙げた。

 3つのインフラがアート、ビジネス、レジデンス、ツーリズム・レクリエーション―の4つの機能を発揮すれば「名古屋は静かな水辺空間と歴史・文化の香りを持つ、気品と活気のある街になる」と説明した。

にぎわい施設で楽しい空間に 水質改善が優先課題

松田寛志・日本工営株式会社常務執行役員

 次に、JAPICによる基調報告として、JAPICの国土・未来プロジェクト研究会会員である松田寛志・日本工営常務執行役員が、「中川運河水辺地区再生構想に向けた提言」を行った。

 松田氏はまず、中川運河の現状について、名古屋駅と名古屋港を結ぶ全長8・2キロメートル、最大幅90メートルという広大な水辺であるにもかかわらず、水辺の魅力に触れられる沿岸の整備が進んでおらず「水辺空間を楽しむ環境・文化が育まれていない」と指摘した。

 運河周辺の発展が進まない原因としては、一部の環境基準が達成されないなど水質の改善が遅れていることと、運河に近づく交通手段がないことを挙げた。

 特に水質の改善に関しては「良い水辺環境が魅力を生む」と説明し、「先行して取り組むべき重要な課題だ」と強調した。

 運河再生策の柱については、①水と緑の回廊空間(アクアグリーンベルト)②新旧が融合する職住遊環境(ライフスタイルリノベーション)③地理的特性を生かした交通環境(キャナルモビリティネットワーク)―の3本を掲げ、「夢・希望が持てる計画にして、このJAPIC案が着火剤になればいい」と述べた。

 今後再生が実現するためのポイントについては、「地元のほか関係する自治体や企業、組織が連携し、機運を盛り上げていくことが重要」と指摘。政策面では「規制緩和と税制優遇により、民間が参入しやすい環境を作ってもらいたい」と訴えた。

 続いて、松田氏の提言説明を受けて、名古屋商工会議所と、富山市、大阪市、北海道小樽市での水辺再開発の事例報告が行われた。

 事例と報告者、報告の要旨は以下の通り。

新堀川で新ビジョン

大竹正芳・名古屋商工会議所商務交流部長

 【中川運河、堀川、新堀川】大竹正芳・名古屋商工会議所商務交流部長

 中川運河について名古屋商工会議所(名商)は2009年に同運河のあり方に関する提言をまとめた。そして、これを受ける形で名古屋市と名古屋港管理組合が12年に再生計画を策定した。現在、市と管理組合を中心に「にぎわい創生プロジェクト」が進められている。

 倉庫街の再整備や緑化で芸術やスポーツのイベントを呼び込み、19年に出店した鋳物ほうろう鍋「バーミキュラ」の体験施設が代表的な人気店だ。

 舟運にも取り組み、商業施設や観光スポットをつなぐ定期便や、期間限定の特別音楽便もある。

 地図では中川運河の右を南北に流れる全長16キロメートルの堀川は、市と民間事業者の連携により期間限定で運航している「なごや堀川クルーズ」でにぎわっている。

 堀川より東にある新堀川は約6キロメートルの一級河川で、昭和初期までは木材などの舟運で栄えていたが、その後は注目されたことがない。

 そこで名商は提言「将来ビジョン」を作成し、今年3月に公表した。ビジョンは①水辺に憩うまち②産業で高めあうまち③個々が魅力を放つまち④名古屋の南北軸をつなぐ川―の4つの方針を示し、時間軸と重要度を整理しながら29の具体策を盛り込んだ。

水辺空間に都市機能集積

成瀬龍也・富山県立山カルデラ砂防博物館長

 【富岩運河環水公園のにぎわいを創る】成瀬龍也・富山県立山カルデラ砂防博物館長(富山県土木部港湾空港課長などを歴任)

 富岩運河は神通川の東側を、富山市の中心部から北方の富山港・岩瀬浜に向かっており、全長は5・2キロメートルある。

 水運利用が減少し一時は埋め立てが計画されたものの、全国的な親水運動の高まりもあって、1988年に策定した「とやま都市MIRAI計画」により、62ヘクタールを水辺空間として整備することにした。これによって昔は駅裏と呼ばれ寂しいところだった富山駅の北側に、都市機能が集積した。

 環水公園地区には、展望塔から全体を一望できる天門橋と「泉と滝の広場」を中心に、野外劇場や野鳥観察舎のほか、富山県美術館、富山市総合体育館もある。

 景観の良さから、スターバックスコーヒー富山環水公園店が、世界一美しい同社の店舗に選ばれたこともある。

 富岩運河には、異なる水位間で船を通す施設である「閘門」が2つあり、中島閘門は国の重要文化財、牛島閘門は国の登録有形文化財に指定されている。

 富岩運河には途中、住友運河と岩瀬運河という小さな運河とつながっており、それぞれの周辺地区の緑地整備も進めているところだ。

人のつながり広げたい

杉本容子・ワイキューブ・ラボ代表取締役

 【東横堀川(大阪市中央区)】杉本容子・ワイキューブ・ラボ代表取締役

 私は都市計画や街づくりのコンサルタントをしており、大阪の水辺では20年近く、いろいろな形で活動している。

 東横堀川は大阪の葭屋橋付近で土佐堀川から南方に分かれる約3キロメートルの一級河川で、中央区瓦屋町3丁目付近で西に折れて道頓掘川となる。

 大坂城の外堀として開削されたが、現在は阪神高速1号環状線(南行き)の橋げたになってしまい、東京の日本橋川と同様の状況になっている。

 東横堀川は、「暗くて怖くて汚い」と、大阪の都心河川のなかでも再生のアプローチが見えにくい存在だった。2005年、市民と大阪商工会議所が一緒に議論を重ね、翌年には提言もまとまり、地元で働く人、住む人、ファンなどが集まって東横堀川水辺再生協議会を発足した。発足当初から現在まで、お掃除活動が継続している。

 東横堀川水辺再生協議会の活動として画期的だったのは、小型船を増やそうと係留実験の仮桟橋を置いたことだった。水辺が良く見えるウッドデッキを作ったことも、いろいろな活動を呼び込めた。

 地域のさまざまな主体が、川を使って何かやろうとすると、関係機関との調整とか、専門家との連携といったネットワークが必要となる。全長3キロメートルのうち、人と川がつながったのはまだβ本町橋前の200メートルだけだが、行政や経済界など多様な主体と関係性を構築しながら、活動を続けていきたい。

埋め立て止め歴史的再生

山口保・木彫工房メリーゴーランド代表

 【小樽運河~観光都市創生と市民運動】山口保・木彫工房メリーゴーランド代表

私は1975年に小樽に旅行に来て、そのまま住んでいる。いまうかがった富山や大阪のお話は最近のことだが、小樽運河がほぼ今の形に再生したのは86年ごろ、それに向けて私たちが運河を守る、水辺を再生すると運動したのは45年前の話になる。

 幅40メートルの運河を全部埋めて道路にするという北海道の計画を、建設省(当時)が決定し、工事も始まっている中で、運河を守る運動を始めた。

再生案を作ったのは北海道大学の大学院生で、運河を文化財として保存すれば、観光地になるという考え方だった。

 運動を進めたのは若い人が中心で、港の広場に露店を出したり、ステージを組みロックのコンサートを開いたりした。

 こうしたイベントの成功も経て「観光は水物で当てにならない」と言っていた市民が意識も変わり、事業計画が変わることになった。

 全面埋め立ての計画だった運河は、半分が残った。建設省には本格的な護岸、遊歩道整備をやってもらい、歴史的な景観が見事に復元した。それで今の観光都市・小樽になった。

 再生事業の中で残念だったのは、6車線の道路ができてしまったことだが、いま交通量も減っており、車線を4つに減らして緑地帯を設けるような環境整備を進め、中心部をにぎわいの場所にしたいと、議論を進めている。

 シンポジウムの最後に、パネルディスカッションを行った。

 名古屋工業大学大学院の秀島栄三・工学研究科教授をコーディネーターに、4人がパネラーとして参加した。

 【パネラー】林良嗣・中部大学卓越教授/名古屋大学名誉教授▽横地玉和・名古屋市住宅都市局まちづくり調整監▽今江通成・NTT西日本東海支店ビジネス営業部部門長▽今井稔・建設コンサルタンツ協会研究部長

 各氏の発言骨子は以下の通り。

林良嗣・中部大学卓越教授

心つなぐ統合型の開発を―林良嗣・中部大学卓越教授

 欧州のインフラ事業に学ぶとすれば、その特徴である①投資規模の大きさ②都市全体を考えたアメニティ(快適さ)の追求③開発を統合し線で結ぶ、ネットワークにするーの3つの点である。

 ドイツのハンブルクは名古屋より小さな都市だが、ウオーターフロント再開発でうまく民間の投資を呼び込み、1兆円を超える規模になった。

 スウェーデンのマルメは知識集約型産業を強化しながら、環境に配慮した持続可能な都市造りを行った。

 先ほど松尾先生が、パリが新凱旋門、凱旋門、ルーブル美術館と続くラインを置いたという話をされたが、このパリの軸線はちょうど8キロメートルあり、単なるシンボルにとどまらず、パリの人たちの心までつなげてしまった。

 名古屋三川や名古屋駅を考えると、国内・国際交通のハブ(結節点)とすべて結び付いているという、世界屈指の場所だ。

 カーボンニュートラルと水素社会という点では、名古屋港と一体で水素基地機能を持つことがインフラの要件になる。

 これから作り上げていく空間という観点では、「混住」「混働」を同時にやれるようにしたい。若い芸術家に倉庫を提供する、安く住めるビルを造るといったことを進める。

 日本人はまだ不得意なことだが、50年後の世代の生き方を考えると、やっていく必要がある。孫の世代に継承できる都市であることが重要だ。

横地玉和・名古屋市住宅都市局まちづくり調整監

資金の流れを作る―横地玉和氏

 今日掲示された資料に、人の姿が多かった。水辺再生の取り組みには、人の笑顔を生み出すことが重要であると思った。中川運河周辺でにぎわっているカフェなどは、まだ例外的な場所にとどまっている。例外と原則を逆転する取り組みに挑みたいと考えており、名古屋市と名古屋港管理組合の再生計画の実施を加速させていく。

 名古屋のまちづくりでは、広い道路と地下街が無機質で、その再生が課題と言われる。しかし道路と地下街は大都市名古屋を築いた産業資産であり、当初意図した機能ではもう意味がないかもしれないが、新しい豊かな生活を生み出していくには、大事な資産であると考えている。

 中川運河の沿岸の土地活用では、必要な資金の「貯金箱」のようなものを作りたい。国や自治体からだけでなく、企業版ふるさと納税のようなものとか、周辺住民の皆さんからの寄付などをまとめるファンドを作る考えだ。

 名古屋三川にはそれぞれ歴史があり、時代に合わせた価値を紡ぎながら、バトンを渡していっている。街づくりは物語であり、私ども行政だけではできない。名古屋市民、周辺の皆さん、企業の方も活動に参画できる枠組みを作って、新しい街、新しい価値を作っていきたい。

今江通成・NTT西日本東海支店ビジネス営業部部門長

「共創型」で参加しやすく―今江通成氏

 NTTグループは昨年11月、企業の成長と社会課題の解決の両立を根幹に据えた「サステナブリティ憲章」を制定した。グループでは水辺に関わる街づくりとして、愛知県半田市の半田運河沿いのミツカン・ミュージアムの施設計画や、旧太田川沿いの広島市中央公園整備の計画・実施を担うほか、琵琶湖の水質改善と地域資源循環に関する実験事業に挑んでいる。

 私自身は新堀川のビジョン作りに加わり、水路や運河には住民も含め多くの利害関係者がおり、水辺再生の構想実現には長い時間をかけて取り組んでいく必要があるということが分かった。

 名古屋の運河再生となれば、まずは地元の企業が参画の候補になるが、いまICTをはじめとした技術の発展が著しい中で、志や技術を持つベンチャー企業を、海外も含めて巻き込める余地があると思う。

 そうしたものを呼び込むには、単なる利益だけではなく、環境保全とか歴史の再興といった社会課題解決としての意義を明確に示せば、賛同者が増えると思う。

 再生事業がスピードを増し、多様なアイデアを取り込んでいくため、「共創型」の仕組みを実現し、民間企業や住民のさらなる参加を呼び込むことが重要と考えている。

今井稔・建設コンサルタンツ協会研究部長

「ウェルビーイング」につながる新たな価値を求めて―今井稔氏

 基調報告して頂いた松田リーダーのもとで、JAPICの中川運河再生構想に携わったが、今日の事例報告を聞き、歴史的価値や文化的な価値をしっかりと認識し、大事にしながら構想を進めることが重要であると再認識した。

 中川運河は立地が良く、地域の魅力・歴史を発信する建造物や集客施設、水上交通がある。さらに、水辺再生を後援してくれる活動団体もあり、ポテンシャルが高い。

 一方で、他の水辺再生事例と比べ中川運河に足りないのが水質である。この改善を起爆剤に、各要素を連携させて好循環を作り出すべきだ。

 ゆとり、余裕、アメニティ等「ウェルビーイング」につながる新たな価値を求めて、成熟期の社会資本整備に携わっていくべき。ただし、社会資本整備がこれらにつながっているかどうか、定性的な効果評価をしていかないと受け入れられないし、予算も付かない。

秀島栄三・名古屋工業大学大学院工学研究科教授

水辺再生進むきっかけに―秀島栄三教授(コーディネーター)

 世界中いたるところで起きていることだが、第二次産業が衰退したり工場が移転したりして、結果水運が使われなくなる、またトラックに取って代わられ、もったいない空間が都市部にできる。

 そこで問題が発生すれば、それを解決したいということで再生の努力源、動機になる。

 名古屋三川はどうかというと、問題がある程度はあるが、多くの人は問題と感じていないのではないかと思っている。

 林先生の話にあった「継承可能都市」という考え方が印象に残った。名古屋三川はそれぞれ由来があり、水辺は価値を持つもので、孫の世代に伝え残したいものである。

 日本の水辺再生が進むために、今日の議論がきっかけになれば幸いである。

田中豊・名古屋商工会議所常務理事・事務局長

 最後に名古屋商工会議所の田中豊常務理事・事務局長が閉会あいさつし、「今日は水辺の再生事例を聞かせていただき、名古屋はまだ発展途上にあり、伸び代、可能性があると思った。今後名商は、国や行政、経済界、地元の皆さんと連携して知恵を絞り、さまざまな魅力向上に取り組んでいきたい」と述べた。

日本プロジェクト産業協議会 JAPIC(ジャピック)

日本プロジェクト産業協議会 JAPIC(ジャピック)

立国の根幹にかかわる事項の研究や、政府など関係機関に働きかけを行い、国家的なさまざまな課題解決に寄与し、日本の明るい未来を創生することをビジョンとする。1979年、任意団体として設立、2013年に一般社団法人に移行。会員は37業種、約230の企業、地方自治体、NPOなどで構成。