PR特別企画 一般社団法人日本プロジェクト産業協議会 北海道発展に向け「第2青函」議論 実現目指す道経連が函館でシンポジウム

 北海道の主要企業・団体でつくる北海道経済連合会(札幌市、真弓明彦会長)は5月18日、「津軽海峡経済圏を創る第二青函トンネル構想」をテーマとするシンポジウムを北海道函館市内のホテルで開いた。道内の政財界や自治体の関係者約450人(オンライン約350人、会場約100人)が参加し、北海道―本州間を結ぶ「第2青函トンネル」の実現を訴える有識者の見解や地元市民の意見に耳を傾け、北海道の発展に向けた構想への理解を深めた。

2本目の青函トンネル必要―道経連会長・真弓氏

真弓明彦・北海道経済連合会会長

 シンポは道内の42商工会議所でつくる北海道商工会議所連合会(札幌市、岩田圭剛会頭)と産官学が連携して活動する日本プロジェクト産業協議会(東京都中央区、進藤孝生会長、略称JAPIC)との共催。北海道経済の成長を促す“起爆剤”として期待される第2青函トンネル建設の機運醸成を目的に開催した。

 開会冒頭、北海道経済連合会の真弓明彦会長は「北海道-青森間の輸送コスト高や貨物列車と共用する北海道新幹線の速度制限問題を解決するためには“2本目の青函トンネル”が必要だ。第2青函トンネルの建設意義をご理解いただき、実現に向けて一層のご尽力を賜りたい」と建設機運盛り上げへの協力を訴えた。

丸川裕之・日本プロジェクト産業協議会専務理事

 シンポは講演とパネルディスカッションの2部構成。講演は、JAPIC国土・未来プロジェクト研究会委員の神尾哲也氏(戸田建設常務執行役員)が「JAPIC津軽海峡トンネルプロジェクト」と題し、JAPIC内のプロジェクトチームで検討を重ねた第2青函トンネル(津軽海峡トンネル)の具体的な事業構想を説明した後、北海道大学公共政策大学院客員教授の石井吉春氏(北海道経済連合会青函物流プロジェクトチーム座長)が「青函物流問題の解決に向けて」の演題で、北海道-青森間をつなぐ自動車交通網の重要性を日本の国土軸の現状を踏まえつつ指摘した。

 パネルディスカッションは、北海道建設業協会副会長の栗田悟氏を進行役に、町おこしグループ津軽海峡マグロ女子会で観光PR活動に取り組む、北海道松前町の温泉旅館矢野代表取締役・工藤夏子氏、JAPIC内の津軽海峡トンネルプロジェクトチームメンバーでパシフィックコンサルタンツ経営戦略室チーフプロジェクトマネージャーの石﨑晶子氏、講演した石井氏の3氏が、第2青函トンネルが切り開く津軽海峡経済圏の未来像を議論した。

 閉会にあたりあいさつしたJAPICの丸川裕之専務理事は「地元の経済界、行政、市民の皆さまとの議論を重ね津軽海峡トンネルプロジェクト案の検討は相当進んだ。さらに多くの市民にご理解いただけるよう取り組む」と述べ、今後の活動拡大を約束した。

 講演、パネルディスカッションでの各氏の主な発言は以下の通り。

講演「JAPIC津軽海峡トンネルプロジェクト」
トンネルで“国産国消”拡大を―JAPIC・神尾氏

神尾哲也・日本プロジェクト産業協議会 国土・未来プロジェクト研究会委員/戸田建設株式会社 常務執行役員

 札幌五輪開催の1972年は北海道福島町に住んでいた。前年の71年は世紀のプロジェクト、青函トンネルが本工事に着手した。第2青函トンネル実現には個人的に強い思い入れがある。

 JAPIC構想の第2青函トンネルは全長31キロメートル、概算事業費7200億円(税抜き)。トンネル内に自動運転車専用道路と単線の鉄道貨物線路を作る。実現すれば、ノルウェーのトンネル(24.5キロメートル)を抜き「世界一長い道路トンネル」となる。鉄道貨物線路は北海道新幹線の速度制限を解消するために設ける。新幹線は現在の1本目の青函トンネル内を鉄道貨物と共用するため本来の速度が出せない。鉄道貨物を第2青函トンネルに移せば、現在の1本目の青函トンネルは新幹線専用となるため、新幹線は本来の速度を出すことができる。

 今年2月のロシア軍のウクライナ侵攻はあらためて第2青函トンネルの必要性を痛感させた。侵攻を背景に食料、エネルギー価格は高騰。2000年当時に比べて、小麦価格は約4倍、ガソリン価格は約1.8倍だ。日本の穀物自給率、エネルギー自給率は経済協力開発機構(OECD)の下位だ。日本は食料・エネルギーの大部分を輸入に依存する。低い食料自給率を高めるには“国産国消”の拡大が不可欠で、全国の農業産出額(2017年)の14%を占める“農業王国”の北海道の可能性を最大限活用しなければならない。しかし、日本の食料安全保障を左右する大事な北海道が、道路で本州とつながっていない。

 現在の札幌―東京間の10トントラックの輸送コストは、ほぼ同距離の福岡―東京間に比べ34%割高だ。北海道産出物の輸送コストは高い。このため安く広大な土地があるのに北海道は「6次産業化」が進まない。高い物流コストが北海道の成長を妨げている。北海道―本州間を道路でつなぐ第2青函トンネルは、成長阻害要因を取り除き、北海道の大きな可能性が生かせる「食料安全保障」に資するプロジェクトだ。

第2青函トンネルイメージ

 第2青函トンネルが完成すれば、函館―青森間の所要時間は5時間(フェリー)から2時間30分(自動車)に半減する。北海道―本州間の大型車の物流コスト削減額は年間314億円だ。大消費地への物流コストは下がり、北海道農業は成長する。

 北海道だけでなく、青森にも大きな経済効果がある。試算では北海道、青森の経済効果は合わせて年間878億円。北海道は物流増で年間340億円、交流人口・消費増で393億円の経済効果、青森は交流人口・消費増で年間145億円の経済効果をそれぞれ見込める。

 第2青函トンネルに送電線を整備すればエネルギー自給率も高まる。広大な土地を生かした北海道・東北の風力発電エネルギーを本州の大消費地などに送電できるからだ。

 第2青函トンネルの貨物鉄道線路が開通すれば、青函トンネルは新幹線専用となり、東京―札幌間4時間を目指せる。航空機の約3時間45分と遜色なくなる。

 第2青函トンネルの工事期間は調査設計からアクセス道路整備を含めた完成まで約15年。北海道と青森の両方から毎月300メートル掘り進み約5年で貫通する。事業費は通行料金と鉄道貨物線路のリース料で賄う。投資回収年数はおよそ30年。投資資金は、できれば財政投融資を活用したい。事業は、民間の創意工夫や建設費コスト縮減努力が期待できる、民間資金活用による社会資本整備(PFI)の手法で進める。具体的に言うとトンネルの建設と完成後の運営は民間が担い、所有は公共とする枠組み(BTO方式)でやる。さらに運営は民間の独立採算に任せず、公共が民間に一定額を支払う「サービス購入型」を想定している。

講演「青函物流問題の解決に向けて」
実現可能なJAPIC提言―北海道大学公共政策大学院客員教授・石井氏

石井吉春・北海道経済連合会 青函物流プロジェクトチーム 座長/北海道大学公共政策大学院客員教授

 北海道に来て17、18年になる。当初から北海道の交通面での最大の課題は道路が本州とつながっていないことだと思った。JAPIC提言の「津軽海峡トンネル(第2青函トンネル)プロジェクト構想」の事業費は非常に衝撃的だ。2~3兆円と思い込んでいたが、提言では7200億円。目からうろこだった。この種の大型公共事業の中ではさほど大きな額ではない。非常に実現性の高いプロジェクトだ。

 提言の事業投資の回収期間は30年前後で、一定の期間で投資回収できる優良な公共事業といえる。日本に投資力があるうちに時期を逃さず、早期着工を目指す必要がある。

 日本の国土軸の骨格は自動車交通網であり、中でも札幌―福岡間は最も重要な軸であるべきだ。しかし北海道―本州間は道路がない。この自動車交通の“欠陥”が、物流コストの問題だけでなく、観光業などを含む地域経済、日本経済に負の影響をもたらしている。

 さらに国土軸の観点から見ると、北海道内の高速道路は、全国の道路交通網の「蚊帳の外の高速道路」になっている。他地域の高速道路のように、どこにでも行ける道路交通網の輪の中に入っていない。道内の高速道路の効果を高める意味でも、第2青函トンネルの意義は非常に大きい。

第2青函トンネルイメージ

 第2青函トンネルを造れば、本州との物流量増加や移動時間短縮などさまざまな波及効果が生まれる。地域のみならず、日本全体の経済発展につながる。日本のあるべき国土軸として、日本全体にとっても重要なプロジェクトとして第2青函トンネルを位置付けることが大切だ。

 JAPIC提言は、第2青函トンネル建設に向けたスタートラインだ。実現へのハードルはまだ相当高い。例えば、工事費の大きさや工期が長期にわたることを踏まえると、いまの日本の現状では、すべてのリスクを取って民間が主導的に第2青函事業を進める単純なPFI方式の整備手法では難しいかもしれない。むしろ事業の性格は公共事業そのものだから、骨格的な部分は「官の信用」「官の必要な関与」をうまく事業に組み込んで生かし、トンネル完成後の運営は民間が主導的に進める方式など、官民の役割分担や整備手法の在り方を今後もっと具体的に整理することが重要だ。

 また第2青函トンネルによる、新幹線と鉄道貨物の共用解消と新幹線の高速化の問題解決も、鉄道貨物の海上貨物(フェリー)への転換可能性や「新幹線貨物列車」の導入可能性なども併せてさらにさまざまな角度から検討する必要がある。

 第2青函トンネル構想は現在、道経連を中心に道内経済界が推進する未来構想にとどまっている。今後は地域の産学官が一体となって推進するプロジェクトに位置付け、さらに日本全体の重要プロジェクトとして推進する明確な意味付けをしていかなければならない。青函地域の皆さんが第2青函トンネルの重要性を認識して「本当に必要な事業だ」と意思表示していただければありがたい。

パネルディスカッション―3氏が青函圏の未来語る

栗田悟・北海道建設業協会副会長

栗田 石﨑さん、工藤さん、自己紹介を。

石﨑 青函トンネルが開通した1988年、郷里の岡山では瀬戸大橋が開通した。進学する高校の選択肢が増えるなど、瀬戸大橋の開通で周辺地域の生活圏が融合したことを記憶している。北海道大農学部で学び、青森のねぶた祭りで踊った。青函地域にはそんな思い出がある。2017年からJAPIC内の「津軽海峡トンネル(第2青函トンネル)プロジェクト」の提言チームのメンバーとして作成に参画した。

工藤 北海道松前町で「温泉旅館矢野」という小さな宿を経営している。旅館の創業地は青函トンネルを掘った北海道福島町。青函トンネル開通と同時に、松前町に移った。創業者の曾祖母から歴代娘が継いでいる。津軽海峡を囲む北海道、青森県内18市町村、約80人のメンバーで構成する「津軽海峡マグロ女子会」で、さまざまな町おこしに取り組んでいる。メンバーは旅館の女将やカフェのオーナー、美容師、自治体職員など。「人をつなげて道をつくる」「地元の人から学んで足元に光を当てる」「元気づくり」を目的に、この青函地域を次世代に残すためにも私たちができる身の丈に合った活動をしている。

石﨑氏

石﨑晶子・パシフィックコンサルタンツ株式会社/経営戦略室チーフプロジェクトマネージャー

構想なければ計画・事業なし―石﨑氏

栗田 JAPICの提言作成で苦労した点は。

石﨑 多くの方と議論を重ねて提言を取りまとめる中で、JAPICの中村英夫副会長が唱える「未来の国土を構想せよ」という言葉の重要性を強く感じた。未来は自分たちで構想しなければ、計画にも事業にもならないと実感した。内径15メートルのトンネル内に、道路や鉄道、送電線、避難路、排水路の多機能を盛り込む点は苦労した。設計担当メンバーらの知恵が詰まっている。また民間の投資回収リスクを公共のサービス購入料支払いで低減する手法の検討など民間参画を促進する事業の枠組み作りに知恵を絞った。第2青函トンネルを生かした津軽海峡経済圏の広域周遊観光の振興などさらに深く検討すべき課題もある。

工藤氏

工藤夏子・津軽海峡マグロ女子会 北海道側とりまとめ役/温泉旅館矢野 代表取締役社長兼女将

娘につなぐ将来像見えた—工藤氏

栗田 講演や石﨑さんの話を聞いての感想を。

工藤 第2青函トンネルは夢じゃない、実現できる、との思いを強くした。娘につなぐ一つの将来像が見えた。新型コロナウイルス禍で明日どうしようと思っていた中で、夢をつないだ気がする。旅館は町と一緒に成長する。町がなくなったら旅館もなくなる、旅館がなくなったらきっと町もなくなるという強い気持ちを持っている。石﨑さんが触れた青函圏の広域周遊観光では、津軽海峡マグロ女子会のメンバー一人一人が“パビリオン”となって、松前町や木古内町、江差町、福島町など各地域にある素材を数珠つなぎで紹介する観光誘致活動をしている。小さな自分たちの町を残すために私たちができることを、ひたすらやり続けるしかない。

石井氏

青函地域の一体性構築を―石井氏

栗田 第2青函トンネル実現の課題は。

石井 青森側から北海道を見る目は熱いが、青函地域の一体性意識がまだ弱い。津軽海峡経済圏の実態がない。第2青函トンネル完成の恩恵は北海道側が大きく、青森側は利益を実感しにくい面が確かにある。青函の連携、役割分担をどうするか、もっと議論を積み上げるべきだ。3本の橋ができ、高速道路も整備された四国地域も当初は一体的意識は希薄だった。次第に行き来が増え、意識が変わった。行動の後に意識は変わる。函館側から青森側に一体化、連携を日常的に働きかける動きが出てほしい。そうした行動が、第2青函トンネル実現の大きな支えになる。

石﨑 大きなプロジェクトには官民連携の難しさがある。15年かける7200億円の大事業なので、やっぱり事業リスクの負担など官民の役割分担の議論をオープンにして丁寧にやり、国民の理解を得なければならない。税金の使い道に関わることなので、国民に開かれた議論が必要だ。国民的合意を得るためのリスクマネジメントの視点も含めた新しいコミュニケーションプロセスと意思決定が重要な課題になる。

石井 石﨑さんが指摘した「官民連携」は議論をもっと深めなければならない大きな課題だ。投資回収期間およそ30年と比較的短い期間に回収できると想定しても、第2青函トンネルを「私的な利益のために行う事業」として位置付けるのは、まったくのナンセンス(ばかげたこと)だ。基本は公共事業。イギリスではPFIに「民間がもうけすぎてけしからん」という国民的批判が巻き起こっている。日本は逆に「民間がもうからない」からPFIに人気ない。まったく同じPFIを名乗っても、日本とイギリスでの運用は真逆だ。日本では過度な民間依存をさせない原則を立てないと危ういPFIになってしまう。また工事に時間をかけないことも大きなポイント。15年を10年にするだけでも事業リスクはかなり軽減できる。難しいのは百も承知だが、大事な事業は短期間で完成させる中国のようなやり方もある。現在の日本の経済社会情勢、人口動向からいうと、時間のロスは事業形成や事業投資回収の面でマイナスになる。こうした時間に対する認識を持つことが重要だ。

栗田 最後にまとめを。

工藤 松前町は雨が降ると崖崩れで道路が不通となり、観光客が「行きたくても行けない場所」になることも多い。町の広報を見ると、生まれる子どもより、亡くなるお年寄りらの数の方が多い。町に生活する人がいなくなれば、文化は生まれず、観光地になり得ない。町は本当に生きるか死ぬか、明日町がなくなるかもしれないという事態に直面していることを強調したい。物流問題の以外にも第2青函トンネルが、防災や観光振興、町の存続に果たす役割をもっと知りたい。

石﨑 課題はたくさんあるが、第2青函トンネルは決して夢物語ではないと皆さんが思い始めたことが大切だ。さらにトンネルに期待する地元の声を国に届けるためにも、インフラ整備面だけでなく、固有の文化・歴史や風景の美しさなど各地の優れた地域資源を生かした振興面も、地元の皆さんの知恵を得ながらトンネルプロジェクトの一環として考えていきたい。

石井 第2青函トンネルの実現に向けては、お金の話がどうしても大きなテーマになる。どうお金を捻出するか、地元で考え方を整理しなければならい。また一番の課題になるかもしれないが、脱炭素の大きな潮流にどう対応するかも考えておくべきだ。自動車が電気自動車に変わる中で、物流、人流のあり方や脱炭素、地域づくりとの関係など、第2青函トンネルに関する課題をトータルな視点できちんと整理しておかなければならない。

日本プロジェクト産業協議会 JAPIC(ジャピック)

日本プロジェクト産業協議会 JAPIC(ジャピック)

立国の根幹にかかわる事項の研究や、政府など関係機関に働きかけを行い、国家的なさまざまな課題解決に寄与し、日本の明るい未来を創生することをビジョンとする。1979年、任意団体として設立、2013年に一般社団法人に移行。会員は37業種、約230の企業、地方自治体、NPOなどで構成。