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PR特別企画 一般社団法人日本プロジェクト産業協議会 気候変動に備えよう JAPICが水の利用と制御の両立を目指して議論

 産官学民の英知を集め政府などに幅広く政策提言する一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(東京都中央区、進藤孝生会長、略称JAPIC)は4月11日、内閣府、経済産業省、国土交通省、公益財団法人河川財団の後援のもと東京都内でシンポジウム「激化する気候変動に備える治水対策と水力発電の強化~ダム等の増強と新たな協働事業の展開~」を行った。

 エネルギー、建設などの企業のトップや自治体、関連団体の幹部、学識経験者ら計約40人が会場に集まり、約500人がオンラインで参加した。水の利用(利水)と制御(治水)の両立を目指し、水害を防ぎながら水力発電を増強していく方策を巡り、専門家の講演を聴き、各界の代表が議論した。

治水・水力発電強化の具体化に向け議論を

関克己・公益財団法人河川財団理事長

 冒頭、JAPICの専門グループで水の利活用を研究する「水循環委員会」の関克己委員長(公益財団法人河川財団理事長)があいさつした。

 関委員長は「水循環委員会は昨年6月に、治水と利水を両立しながら温室効果ガスも削減する、水力発電の増強についての提言を行った。その後も水害が頻発し、より持続可能な方策が求められるようになってきている。今日は議論を深め、提言を具体化していくためのきっかけになるようなシンポジウムにしたい」と、活発な議論を求めた。

高度運用で治水利水を ダム再編で脱炭素進む

川﨑正彦・一般財団法人ダム技術センター理事長

 続いて水循環委員会の委員を務める川﨑正彦一般財団法人ダム技術センター理事長が、提言「激化する気候変動に備えた治水対策の強化と水力発電の増強~治水・利水の統合運用と再編に向けたパラダイムシフト~」を説明した。

 川﨑委員はまず最近の雨について「短時間で多く降るようになってきた」と指摘し、その対策として「従来のように下流の堤防で止めることより、遊水池やダムにためる方が有効になっている。雨の集中度や洪水頻度の上昇も予想され、社会の総力戦で水を貯留することが必要だ」と述べた。

 温室ガス削減と発電の関係では「日本では再生可能エネルギーとして太陽光や風力発電が進められているが、海外では9割程度が水力となっている。日本でも水力発電を再評価し、増やしていくべきだ」と説明した。

 水力発電で治水と利水を同時に実現する方法として、平時は水位を上げて発電量を現在より増やしながら、大雨時は事前放流によって洪水調節容量を増す「高度運用」への転換を求めた。

 運用の高度化により「国土交通省や水資源機構の管理ダムでは、平時の発電量は年間で15~20%増やすことができ、洪水調整容量は2倍に増えると試算している」とした。

 水力発電の治水機能を上げる条件として、ダム増強の費用や、運用の高度化などで発生する管理費負担のルール作りがあると指摘。「利水・治水を担う双方がウィンウィン(相互利益)となる仕組みを整えることが最も重要だ」と訴えた。

 発電量の増加と洪水対策の強化の両方が可能になるダムは「全国に約1000基ある」とし、多くの発電専用ダムには、堤体の下部に放流のための常用洪水吐(放流管)を作る必要があるという。

 「放流管整備には1基で80億円程度かかるので、総事業規模は8兆円になる。これは治水側が負担すべきだ」と述べた。
ダムを増強する個所については「地域ごとに地形や河川の状況があり、計画はあるが未着手のダムの新設や他の設備との調整を考えながら、検討すべきだ」と説明した。

 水力発電の強みについては①二酸化炭素排出が少ない②発電単価が低い③負担変動に即応できるーの3点を挙げ「今年3月22日に関東で電力供給ひっ迫警報が出たときも、東京電力が揚水発電によって大規模停電を回避した」と指摘した。

費用、責任にも対応 河川管理者が関与へ

井上智夫・国土交通省水管理・国土保全局長

 次に国土交通省の井上智夫水管理・国土保全局長が「気候変動に備える治水対策の推進(適応)とダムの高度利用によるカーボンニュートラル(緩和)への貢献」とのテーマで講演した。

 井上局長は水力発電所が大雨時などに治水に協力する取り組みは「2年前から始めている」と述べ、事前放流を行うダムは現在、全国で1500基あるとした。

 2021年8月中旬の大雨時には69基が事前放流し、洪水被害を抑えた。大惨事を防いだ例もあったという。

 事前放流の課題では、判断の基となる情報の入手、特に気象予測の精度と、利水の放流設備の能力を挙げた。さらに、高度化を挙げ「精度の高い予測を活用すれば、発電量の増加にもつながる。年間で2~3割発電量を上げられる可能性がある。」と説明した。

 また、今後は、治水利水双方にウィンウィンとなる事業としていくことが重要とし、課題として、治水と利水の責任の区分や費用負担を挙げた。

 井上局長は「責任のあり方については法的なことを含めて河川管理者の方で考えていく」「治水の施設増強や運用高度化の費用を電力会社が負えば、利水・治水がウィンウィンにならない。対応していくことが必要だ」と述べた。

新技術がダムを変える 事前放流の精度上昇

角哲也・京都大学防災研究所教授

 次に、京都大学防災研究所の角哲也教授が「長時間アンサンブル降雨予測で見える世界―ダム操作をどう変えるか?」とのテーマで講演した。

 角教授はまず、アンサンブル予測とは、観測の初期値にばらつきを与えて複数の数値予測を行い、その平均値や予測幅の大きさから大気の状態を予測する方法であると説明した。

 通常の気象庁の降雨予測で判断すると、事前放流は1~3日前からとなるが、長時間アンサンブル予測を使えば、数日から1週間程度前からの放流が可能となり「ダムの治水効果が最大化するとともに、無効な放流を減らして発電効率を高め、利水効果も高められる」という。

 ダムの管理者にとって長時間アンサンブル予測は、①15日先までの予測が得られる、②幅のある予測値から予測の不確実性の把握や最悪のケースの想定ができるーといった利点がある。

 今後予想される気候変動への対応では「国内では降雪が変わっていくとみられ、その水資源としてのダムでの利用を考えたい」としたほか、「一日のうち電力需要が高まる時間帯である夕方向けに、揚水発電所や水系の発電ダムを有効活用する必要がある」と説明した。

 角教授はまとめとして「効用を最大化するダム運用をするためには、最新技術を使っていくべきだ」とし、その際には社会の持続性をつなぐために、「ダムにたまってその容量を減らす堆砂対策、気候変動対策、治水と利水の両立ーといった課題のバランスをとることが必要だ」と述べた。

 シンポジウムの最後に、パネルディスカッションを行った。関克己JAPIC水循環委員会委員長をコーディネーターに、6人がパネリストとして参加した。

 【パネリスト】川﨑正彦・JAPIC水循環委員会委員/一般財団法人ダム技術センター理事長▽迫田英晴・経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力供給室長▽佐藤俊哉・株式会社J-POWERハイテック常務執行役員▽角哲也・京都大学防災研究所教授▽内藤正彦・国土交通省水管理・国土保全局河川環境課長▽吉津洋一・株式会社ニュージェック社長

 各氏の発言骨子は以下の通り。

川﨑正彦氏

費用負担のルール作りを―川﨑正彦氏

 利水側と治水側で兼用協定を結び、互いに納得できる財産や操作の区分をする。平時は利水側が、洪水時は治水側が操作する。そういう事例がある。

 発電事業は、もっとも効率よく発電できる計画から作られており、ダムに治水機能が乗ってくれば計画が変わることになり、費用分担を変えなければならない。

 治水のための管理費や、ダムの容量を確保するための堆砂対策の費用の分担も両者が一緒に考えてルールを作るべきだ。

 いま治水の緊急性は非常に高い。利水側からしても二酸化炭素排出削減は一生懸命やらなければならず、発電ダムへの治水機能追加はやらざるを得ない。とすれば国や都道府県などの河川管理者が動かなければだめだ。

迫田英晴・経済産業省資源エネルギー庁 電力・ガス事業部電力供給室長

安定供給支える水力発電―迫田英晴室長

 現在の第6次エネルギー基本計画は水力発電を、天候に左右されない優れた安定性を持ち、長期活用が可能という重要な位置付けとしている。

 2019年度の水力の発電量は全体の8%弱だが、2030年には11%程度に上げる目標がある。水力を含む再生エネルギー全体では36~38%を担うという野心的な目標も掲げている。

 先日需給がひっ迫した東京・東北エリアでは、水力は2割程度を担っており、安定供給を支えた。

 大規模な水力発電所の開発(設置)は1990年代までに終わっており、その改修や造り替えが課題だ。新設には開発リスクや地域の合意が難しい。

 中小規模のものは初期投資の判断、地元合意が課題。地域の社会課題の解決にもつながる事業とする必要がある。

 水力発電政策の柱は①既存水力エネルギーの総合的な利用②環境や地域に調和した中小発電所の新設③長期的な資金調達や系統対応、水力発電技術者の育成といった制度的な支援ーの3点である。

佐藤俊哉・株式会社J-POWERハイテック常務執行役員

電力のニーズも含めた議論を―佐藤俊哉氏

 水力発電は、流域面積が大きく水量の豊富な地点ほど発電所の稼働率が高く好条件となる。したがって既存ダムを活用して治水と水力発電強化を求める場合は、そのような地点をターゲットとすべきである。逆にダムがあっても水量の少ない地点は発電の事業性が低い。

 また、現状で無効放流の多いダムは発生電力量を増やせる可能性があり、降雨および流入量予測の精度向上は、ダム運用に反映して増電につながるため発電にとっても期待が大きい。そして、無効放流の多い地点も既存ダム活用のターゲットとなる。

 一部の発電ダムは、流入土砂によって有効貯水容量が減少する課題がある。土砂問題と洪水懸念が重なるダム地点が存在するので、治水後乗りで洪水調節と土砂対策設備を追加設置して発電も持続できるダム再生は、治水と発電のWIN-WIN(ウィンウィン)の好事例となる。既存ダムの活用は、治水のニーズだけではなく利水のニーズも含めて議論することが望ましい。

 水力発電は強化していく必要があるので、発電専用ダムに治水機能を持たせる場合、まずは減電を生じさせないことが前提となる。その上で改造費用は治水で負担し、洪水調節は水系全体を管理する河川管理者の責任と考える。このような場合、発電側としてはダムの管理費用や役割を河川管理者と分担することにあるのでメリットの一つとなる。

 これまで河川管理者と発電事業者は規制をする側と事業者ということで少し敵対するような警戒感もあったのだが、今日の講演や議論では、皆さん水力発電のことを考えてくれる状況になってきていると感じ、これはありがたい。

角教授

早められる放流判断―角教授

 事前放流でダムの水位を下げておく場合、発電者側には空振りという懸念がある。しかし大事なのは、長時間アンサンブル予測を用いれば、空振りの判断も早期に行うことが可能であり、発電を最大限使って放流を早期に開始し、先を見通した上で、場合により早期にやめて回復操作に移れるということでもあり、その価値をいい循環に持って行きたい。

 長時間アンサンブル予測はこうした時間的な価値を生むが、空間的な価値もある。多くの地点情報から予測するので、空間的なばらつき、台風のコースや前線の位置を反映する予測となり、流域の安全度を高められる。

 管理しやすい、利水・治水の効果が出しやすいダムを再開発することが重要だ。流入土砂の問題も非常に重要で、地域、ダムごとの状況に合わせて対応すべきである。

 今後台風がたくさん来る年、全然来ない年、どか雪の年、全然降らない年、といった変化が起きてくる可能性がある。とすれば、発電ダムも長い目で見て、容量を確保しておき、備えを強化すべきだ。

内藤正彦・国土交通省 水管理・国土保全局河川環境課長

治水・利水のバランス取る―内藤正彦課長

 1年を通じて考えると、治水優先の時期と、利水を優先できる非常に長い期間がある。例えば、大雨が続かないのであれば、ゆっくり水位を下げる中で利水に有利な運用をして効率化を図るなど、治水・利水のバランスを取っていくのが国土交通省のスタンスだ。

 事前放流にも課題がある。長雨になって、せっかく空けた利水の容量を使い切ってしまえば、一番洪水を調節したいときにうまく使えないときがある。

 容量が100万立方メートルを超えるような大きな利水ダムが300基くらいあるが、その総容量は95%くらいあり、治水で大きな効果を発揮する可能性がある。そうした大きなダム、また小さなダムの負担軽減は考えていかなければならない。

 長時間アンサンブル予測はシームレスな予測で、治水・利水のダム運用の選択肢がさらに広がる新しい技術だ。

 新たな役割分担、費用分担については、いろいろな意見を聞かせていただきたい。都道府県のダムも含め、分担についてもきめ細かく対応していく。

吉津洋一・株式会社ニュージェック代表取締役社長

地域との連携で安全向上を―吉津洋一氏

 20近い水力発電所の建設、管理に携わった経験からすると、発電設備を発電以外に使うこと、減電を伴う治水協力には、漠然としたこだわりがある。

 一方で激甚化する豪雨災害を目の当たりにし、既存インフラの最大限の有効活用は必要と感じており、治水安全度の向上と発電増強の両立を目指す、JAPICの提言に期待している。

 ダムの洪水運用の課題を3点挙げると、まず貯水容量の小さいダムは、洪水ピークが来たときに調整をしようがないという点がある。効果のあるダムに限定して治水協力をすべきだ。

 2点目は、地域の治水安全はダムや堤防などすべての河川管理施設や地域の防災組織などと連携して確保されるもので、個別ダム単独の治水操作では十分な効果は期待できないということだ。事前放流で一定量の治水容量を確保した後は、河川管理者の責任で最も治水効果の上がる洪水調整運転を実施してほしい。

 3点目は、災害リスクに直面すると当然「発電より命が大事」という感情バイアスが働くことだ。治水ダムによる水力発電の増強を実現するには、地域の理解が必須だ。

 治水者、利水者がお互いの使命完遂のために協働することで、地域社会とともに「水防災・脱炭素意識社会」の構築を目指していただきたい。

関委員長

役割増す水力発電―関委員長(コーディネーター)

 JAPICの水循環委員会は、工業用水、農業用水、上下水道の皆さんとも議論した。

 既存の多目的ダムでは、発電量を25~30%増やせるというのは新しい評価であり、全国のダムを見ながら一緒に取り組んだから出てきたものだ。

 シンポジウムのサブタイトルに「新たな協働事業の展開」と入れて、コラボレーション(共働、協力)、コーポレーション(協力、協同)をキーワードにした。議論の中で「プラスの価値を一緒に」とか「警戒感が薄れた」という話も出た。

 気候変動がますます厳しく、水害も厳しい状況になっていき、脱炭素社会の実現も求められる中、治水対策の強化と協働する水力発電の役割は今後大きくなっていく。

丸川裕之 JAPIC専務理事

 最後にJAPICの丸川裕之専務理事があいさつし、「水は日本にある数少ない大切な資源であり、その活用を考えていきたい。JAPICは今後も長期的な視点に立ち、国土のインフラやエネルギー、国土強靱化(きょうじんか)を目指す具体的な提言を作っていく」などと述べた。

日本プロジェクト産業協議会 JAPIC(ジャピック)

日本プロジェクト産業協議会 JAPIC(ジャピック)

立国の根幹にかかわる事項の研究や、政府など関係機関に働きかけを行い、国家的なさまざまな課題解決に寄与し、日本の明るい未来を創生することをビジョンとする。1979年、任意団体として設立、2013年に一般社団法人に移行。会員は37業種、約230の企業、地方自治体、NPOなどで構成。