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PR特別企画 一般社団法人日本プロジェクト産業協議会 流域一体の総合対策作りをJAPICが豪雨災害で緊急提言・シンポジウム

 産官学民の英知を集め、政府への政策提言などに取り組む一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(東京都中央区、進藤孝生会長、略称JAPIC)は9月16日、東京都内の鉄鋼会館で「JAPIC国土・未来プロジェクト研究会 豪雨災害に関する緊急提言シンポジウム」を開催した。産業界などの関係者が参加し、2020年末に赤羽一嘉国土交通相(当時)に手交した同研究会による緊急提言「治水対策のパラダイムシフトに向けて」をあらためて説明。加藤孝明東大教授と井上智夫国土交通省水管理・国土保全局長の2氏による講演を聴いた上で、パネルディスカッションを行った。

水害多発で緊急提言

藤本貴也・JAPIC国土・未来プロジェクト研究会委員長

 冒頭、JAPIC国土・未来プロジェクト研究会の藤本貴也委員長があいさつし、緊急提言の意義とシンポジウム開催の狙いを説明した。

 藤本氏は、「JAPIC国土・未来プロジェクト研究会は2015年に設立し、現在は12のプロジェクトを特に推進・深掘りして取り組んでいる」と説明。12のプロジェクトには津軽海峡トンネル(第2青函トンネル)、本州・九州連絡道路、四国新幹線などがあり、そのうち豪雨対策については「昨年7月の豪雨で九州を中心に大きな被害があり、調査の取りまとめを急ぐべきだということになった」と経緯を述べた。

 さらに「日本の国土は狭いが、世界の自然災害被害の14%が日本で発生ししている。気候変動で水害は広域化、長期化、深刻化しており、緊急提言の発表とシンポジウムの開催に至った」と指摘した。

自助・共助・公助で総力戦を

越智繁雄・JAPIC豪雨災害に関する緊急提言ワーキング長代理

 続いて、JAPICの「豪雨再開に関する緊急提言ワーキング長代理」で、大成建設執行役員の越智繁雄氏が、緊急提言「治水対策のパラダイムシフトに向けて」について詳しく説明した。

 越智氏は、「水害など災害リスクについて、科学的な解明を進めると同時に、その結果を国民に発信して理解・同意を得ることが重要になっている」との認識を示した上で、「豪雨対策は個人・地域・民間・行政の連携・協力体制を構築して進めることがポイントとなる。つまり自助・共助・公助による総力戦を展開するということだ」と、対応の枠組みについて話した。

 具体的な政策では、洪水のピークカットを前提に、流域全体で水を貯める重要性や、水があふれても被害が発生しない街づくりの必要性を強調し、「施策展開は重層かつ大胆にすべきであり、そうした姿勢が対策のパラダイムシフト(革新的・劇的転換)につながる」と述べた。

 緊急提言「治水対策のパラダイムシフトに向けて」のポイントは以下の通り。

 【総論】気候変動により水害が広域化、長期化、深刻化している。気象・水害のリスクを科学的に解明して広く情報発信しながら、「自助・共助・公助による総力戦」の態勢を取り、「重層かつ大胆な」施策を展開する必要がある。

 【個人や地域、行政による協力態勢の構築】防災のための公的施設整備に民間活動や民間資金が投入される環境を整備すること、公的な水の貯留施設と民間の貯留施設の双方が機能する仕組みを構築すべきである。

 【災害後の復旧】河川を横断する鉄道橋の早期の運行(利用)再開を妨げている制度を変更すべきである。「公共災害復旧事業」と「復興事業」を一体的に実施するための制度創設が必要だ。

 【流域全体で水害対策】自治体の枠を超えた「流域・地域防災計画」の作成を制度設計することや、流域内でのリスク分担に基づく「流域安全確保基金」の設置、脱炭素税と同様の仕組みで地域の対応策を支援する制度を創設すべきである。

 【貯水のための具体策】過去に計画の中止や休止、優先順位を落としたダムや遊水地、放水路の再評価・再検討を行うべきである。耕作放棄地に関しては、貯留効果を確保すための仕組みづくりが必要だ。

 【安全な街づくり策】高規格堤防の整備促進、1階の一部もしくは全部を吹きさらしにする高床式の「ピロティ建築物」の整備や、大規模広域盛土による街の高台化促進を進めるべきである。

 【情報共有や社会意識向上を防災につなげる策】ハザード・リスク情報の公開促進や、ハザードマップの精緻化・完全化の推進が重要となる。水害保険への政府支援強化や、孤立集落回避のための避難路(命の道)整備を進めるべきである。

水害リスクと共生を

加藤孝明・JAPIC豪雨災害に関する緊急提言ワーキング委員

 次にJAPICの豪雨災害に関する緊急提言ワーキング委員で、東京大学生産技術研究所教授・社会科学研究所特任教授の加藤孝明氏が、「気候変動に社会はどう適用すべきか」とのテーマで講演した。

 加藤教授はまず、昨年7月の豪雨を受け「流域治水への転換の必要性が高まった」と述べ、豪雨の被害を受ける地域(流域)全体が「一定のリスクの存在を認識しておき、実際に起きる一定のリスクを許容し、努力のシェア、我慢のシェアをしていくことが、豪雨対策のパラダイムシフトの肝になっている」と指摘した。

 さらに「貯める、流す、逃げるの三本柱だった豪雨対策に、『受け流してやる』を加える。なるべくあふれさせないように流す中で、避難する。浸水して被害を受けても大丈夫な状況を作っていく。防災という言葉を使っているが、減災の方が重要、という考え方だ」と述べた。

 防災地域作りの点では「全国には多様な地域特性があって、流域によっても川の特性によっても事情が違い、多様なソリューションがあり得る」と指摘。具体例として、南海トラフ巨大地震に備える徳島県美波町伊座利集落や、観光防災まちづくりを進める静岡県伊豆市土肥地区の例を挙げ、完全な防災と発展的な街づくりを両立させるソリューションはないが「浸水(被害)対応型の街づくりに取り組む。浸水しても(被害があっても)逃げられる、取り残されても生き延びられる、被災しても容易に復旧できるような街を今から作っていくべきだ」と強調した。

 豪雨対策は「30年以上の長期スパンで考えることが重要」だが、「当面は今のストックを利用してまず避難空間を確保する。その後は『浸水対応型拠点建築物外区』というものを作って、それをその地域の拠点にして活動していく。この復興拠点から、『安全のおすそ分け』をしていくという考え方だ」と提案した。

 加藤教授は、東京都市白書から「水害リスクと賢く共生する親水都市へ」という言葉を引用し「全国の多くの場所で、浸水と親水がキーワードになる。治水を通じ地区の魅力を高めることで、浸水対応も進んでいくと思っている」と述べた。

中小河川対応急ぐ

井上智夫・国土交通省水管理・国土保全局長

 次に井上智夫・国土交通省水管理・国土保全局長が「流域治水の推進について」とのテーマで講演した。

 井上局長はまず、流域治水に関連し今年5月、「関連法が成立し制度的なバックグラウンドができた」と述べた。財政面でも昨年12月、「防災・減災・国土強靱化のための5カ年過疎化対策というのが閣議決定され、今後5年は推進できるようになった」と説明し「後はやはり技術とアイデアが重要になる」と指摘した。

 局長は「事前防災」の重要性を強調しつつ、この点では財政対応でインフラ整備の公共投資が進んでいることを指摘し、「インフラを強化すれば災害の防止、復旧が進むのは事実。今年8月の豪雨では、実際に被害が減ったとの数字が出ている」と指摘した。

 気候変動が激しくなっているため、それに対応するために基本的な河川整備を「できるだけ短時間にやるということになってきている」との認識を示した。「過疎化対策の中で、大きな河川の中心部は、堤防やダムの整備で安全度が上がってくるが、小河川、中小河川となると、スピードが追いつかない部分がある」と述べた。

 流域治水の基本的なスタンスとして、科学的なリスク情報の開示の必要性をあらためて指摘。具体的にはハザードマップの活用のほか、新しい試みとして、浸水の可能性がある建物などに付ける「浸水センサー」を開発していると明らかにした。センサーは硬貨大の電波発信機で、1個500円以下で作れるため、大量に設置することが可能で、水深による被害の程度の早期把握や、素早い保険対応にもつながるとした。

 高規格堤防(スーパー堤防)に関しては、「30年くらい進めてきて、いろいろ言われる時期があったが、もう一回、これを作ってほしいという声も上がってきている」と指摘。「高台がなく、堤防を作るしかない場所もあるなど地域によって事情が違う。街づくりはやはり地域の人が考えて、公共・行政が支えていくというスタイルがいい。デベロッパーとか産業界の方とも一緒に取り組んでいく、そういう枠組みに広げていきたい」と述べた。

 シンポジウムの最後にパネルディスカッションを行い、豪雨対策について意見交換した。コーディネーターは緊急提言のワーキング長を務めた関克己・公益財団法人河川財団理事長が務めた。パネリスト(5氏)は▽加藤孝明東大教授▽井上智夫国交省局長▽内田要・一般社団法人不動産協会副会長・専務理事▽角田光男・元東京都都市大講師、地域防災ジャーナリスト(JAPIC豪雨災害に関する緊急提言ワーキング委員)▽越智繁雄・同提言ワーキング長代理

 関氏と5氏と発言骨子は以下の通り。

地域は役割分担を 加藤氏

 水害のリスクは住民が自分で背負うものではなく、河川管理者に任せようというのが定着してしまった。この点について、ステップを経ながらシェアしていくように変えていくことが重要だ。治水の際は、調整池を観光施設にするような仕掛けを絡ます工夫も大事にしたい。流域対応ではそれぞれの地域が役割を分担し、それを住民が理解、合意していることが理想になる。大きな流域では難しい課題になるが、チャレンジは必要だ。

重要な情報発信 井上氏

 リスクマップのように、基盤としての情報を整備し発信していくことは、行政の役割と思っている。多角的に示したデータが、いろいろな見方をしてもらい、住民同士の話や、企業と自治体の話にも使われるといいと考えている。行政による説明や情報発信が、利害が絡む政策調整を進めることの第一歩と考え、地道に取り組みたい。

内田要・一般社団法人不動産協会 副会長・専務理事

協議を重ねることが近道

 治水は河川管理者を中心に行うという時代から、わたくしども不動産協会のような民間の土地開発事業者も、重要な関係者になるようになった。2019年の10月に川崎市のタワーマンションで、多摩川の水が下水道管を逆流し、地下の電気室が浸水したため、電気やガスが止まるという事案があったが、今回の緊急提言や流域治水の論点は、ほとんどが含まれているように思う。民や官の連携、その前提となる科学的な解明と国民への発信は重要だ。マンションやビルでは関係主体が多く関係も複雑だが、豪雨対策のような課題ではきめ細かく協議を重ねていくことが、遠回りのようで結局は近道ではないか。

角田光男・JAPIC豪雨災害に関する緊急提言ワーキング委員

コミュニケーションが重要

 荒川放水路は100年ちょっと前に着工し、20年かけて完成したが、堤防ができたことで東京の下町は、大水の濁流に飲み込まれるようなことを防ぐことができた。今は100年に一度のような激しい気候変動が起きていて、安全な街づくりを急ぐ必要があり、高台街づくりやピロティを付けた建物が重要になっている。地域のリーダーが高い意識を持ち、官の力を借りながら進めていくことが大事だ。地域にとっては耳が痛いような話も持って行って、その話に耳を傾けてもらうようなコミュニケーションをすべきだ。

枠割とリスクを分担 越智氏

 科学技術をもって豪雨対策を解明していくことは、次の世代、次の次の世代につないでいく私たちの責務ではないかと思っている。「総力戦」をやるには、分かりやすさと伝えやすさと、マーケット化は重要と考える。データの提供、共有ができて初めて、金融とか保険も含めた幅広い取り組みができる。民間資金、新技術も活用した産官学民の総力戦のために、役割とリスクの分担ができればいい。

関克己・JAPIC豪雨災害に関する緊急提言ワーキング長

業界を越え議論

 このJAPICのワーキンググループは豪雨災害の深刻さを受けて緊急に集まり、横断的な分野・業界が一緒になって議論した。防災や水害対策では「共通の言語」がなく、最初は「通訳」が必要だった。資金投入では、民間投資と公的なものでは期間が違い、一緒にやるのは難しいという議論もした。そうした中で、情報の共有をきっかけに議論を進め、共通認識を持っていろいろな提案を作ることができたと考えている。

丸川裕之・JAPIC専務理事

次の豪雨対策議論に役立てば

 閉会のあいさつでJAPIC専務理事の丸川裕之氏は「今回の提言が産官学、あるいは一般の市民の次の議論の展開に役立てばいいと感じます」と話した。

日本プロジェクト産業協議会 JAPIC(ジャピック)

日本プロジェクト産業協議会 JAPIC(ジャピック)

立国の根幹にかかわる事項の研究や、政府など関係機関に働きかけを行い、国家的なさまざまな課題解決に寄与し、日本の明るい未来を創生することをビジョンとする。1979年、任意団体として設立、2013年に一般社団法人に移行。会員は37業種、約230の企業、地方自治体、NPOなどで構成。