メニュー 閉じる メニュー
DIGITAL HEARTS HLDGS. システムのチェックは“宝探し”だ!あまり知られていない「テストエンジニア」の魅力に迫る

 人工知能(AI)や車の自動運転など進化し続けるIT技術。ネットショッピングやキャッシュレス決済といった、私たちの生活に切り離せない存在になっている分野も少なくない。一方で、システムである以上、故障、不具合がいつ、どんな場面で現れるか常にリスクが潜んでいる。

 システムを開発するエンジニアは、さまざまなリスクを想定してプログラムを作成しているが、完璧な商品・サービスを提供するのは不可能に近い。そんな中で不具合を事前にチェックし、できる限りリスクを回避、品質を向上させるのが「テストエンジニア」という職種だ。開発担当などのシステムエンジニアとどう違うのか。テストエンジニアという仕事の重要性、将来性について、先進的な米国の事情に詳しいIT企業「デジタルハーツホールディングス」(東京都新宿区、玉塚元一社長)の技術部門トップ2人に話を聞いた。

 デジタルハーツホールディングスのCTSO(Chief Testing Solution Officer)である高橋寿一氏は、米IT企業でテストエンジニアとして活躍した経験を持ち、現在は同社の子会社でシステムテストの自動化技術を持つ米「LogiGear(ロジギア)」の日本法人社長も兼任している。また、デジタルハーツホールディングスのCTO(Chief Technology Officer)の石黒邦宏氏は、ソフトウエア開発の第一線エンジニアで、現在も米国を拠点に活動しており、テストエンジニアの重要性を熟知している。

米国の“テストエンジニア”は開発の初期段階から参画

デジタルハーツホールディングス CTO ⽯⿊邦宏⽒

デジタルハーツホールディングス CTO ⽯⿊邦宏⽒

―“テストエンジニア”とはどういう職種ですか?

高橋 テストエンジニアは日本では比較的新しいポジションで、端的にいうとソフトウエアのテストの計画・設計・実行を専門的に行うエンジニアのことです。私は1990年ごろ、米国のマイクロソフトにテストエンジニアとして採用されましたが、その頃の日本はまだメーカーの品質管理部の中にテスト担当がいる程度でした。今でも日本ではあまりなじみのない職種かもしれません。

石黒 私は1999年ごろ米国で働いていましたが、開発エンジニアとテストエンジニアは半々ぐらいの人数でした。その後、6対4ぐらいでテストエンジニアを含むソフトウエアの品質管理担当の方が多くなっていきました。私が携わっていた通信機器分野では、障害が起きると影響が大きいので、品質管理の存在が大きかったと思います。開発を始める最初の段階で、テストエンジニアのOKが出ないと開発が始められないぐらいでした。“テスト”というと製品ができた後にチェックしていくだけと思われがちですが、米国では開発の初期段階からどんなテストを実施するのかなどを想定してプログラムを作成するという開発手法が浸透しているため、開発と並行してテスト計画やテストスクリプト(手順書)の作成などが不可欠になっています。特に最近はシステムが複雑化しているし、アップデートの頻度も高いので、テストエンジニア含め、開発段階からいろいろな人が関わるという米国の手法は、今後日本でも普及していくのではないでしょうか。

テストエンジニアの地位を向上させたい

デジタルハーツホールディングスCTSO 高橋寿一氏

デジタルハーツホールディングスCTSO 高橋寿一氏

高橋 テストエンジニアは、テストを実行する人、どんなテストをするか考える人、さらに開発者と一体となって品質を高めていく人という主に三つの職種があると思います。米国では、最初は開発エンジニアとして会社に入って、その後にテストエンジニアに移る人も多いです。いろいろなケースがありますが、テクノロジーの進化が早いので開発エンジニアはついていくのが大変で、テストエンジニアの方が安定的に仕事ができる部分もあるかと思います。テストはチームで仕事をするので楽しいという人もいます。日本では“新卒のエンジニアが勉強のためにテストを担当”というケースもまだ多く、地位が低く見られがちなのが残念です。もっと米国のように権限を与えてもいいと思っています。

 例えば、昨年発生した新型航空機の事故原因がソフトウエアの欠陥だと言われています。もし、システムテストの段階でもっとしっかりやっていればこのような事故が防げたかもしれない。これからは飛行機だけではなく、自動運転車やお金が絡む金融や小売業などでも今まで以上に品質を確保するためのシステムテストの重要性が増してくるでしょう。その一方、ソフトウエアのサイズは大きくなっていますし、プログラミング言語も多様化しているので、「テスト」と一言にいってもいろいろな知識が必要になっています。そのため、専門的な知見を有するテストエンジニアは今後、より重要な役割を担っていくと思います。

―一方、システムテストの自動化も進んでいます。テストエンジニアは必要なくなってくるのではないですか?

石黒 確かにテストの自動化は進んでいますが、実施作業は任せられるにしても、どんなテストをしなければならないか、商品として使いやすいのかといった部分ではどうしても人間が関与しないとできません。単純作業を自動化することによって、空いた時間をもっとクリエイティブな発想が必要なことに使うことができるので、自動化できる部分はどんどん進めていくことは大事だと思います。

致命的なバグ(不具合)発見の喜び

致命的なバグ(不具合)発見の喜び

―テストエンジニアの仕事の魅力とは?

高橋 やはりバグを見つけることです。日頃、スマホを使っていてバグを見つけられたらうれしかったりする。職業病かもしれませんが(笑)。いろいろ見つかったバグの中から「こうすればもっとバグのない製品ができるのではないか」と提案したりできます。いわば医者みたいなものだと思っています。何が最適な品質かという正解はないのですが、テストエンジニアが最適品質になるようなテスト計画案を考え、それを顧客に提案できるというのが魅力かもしれません。

石黒 開発者の立場から言うと、今はさまざまなテストツールがあるので、ツールからも不具合を指摘されるし、人間からも指摘されます。一緒になってソフトウエアを開発していくという感じです。

―テストエンジニアは、どういう経歴の人が多いですか?資格が必要ですか?

石黒 日本の場合、入り口が開発エンジニアしかないところがあるので、最初は開発に入ってというケースが多いですが、今はいろいろなスキルが必要なので、一番興味がある分野や得意な分野を持った人などさまざまだと思います。

高橋 資格はJSTQB(Japan Software Testing Qualifications Board)という日本におけるソフトウエア技術者資格認定があり、国際的にも通用します。これを持っていれば、一定程度のスキルがあると認められます。デジタルハーツとしても、ゲームのバグを探すテスターの人たちに、JSTQBの資格取得に向けた教育プログラムを実施しており、今は300人を超える資格者がいます。

テストエンジニアには知識だけでは埋められない「適性」がある

テストエンジニアには知識だけでは埋められない「適性」がある

―テストエンジニアに向いている人というのはありますか?

石黒 うまく言えないですけど、明らかに「適性」というのはあると感じています。開発に向いているタイプと、テストに向いているタイプというのもあると思います。

高橋 私がアメリカの大学院にいたとき教授から、あるソフトウエアのバグを見つけなさいという課題を出されたことがあります。その時、20人ぐらいの中で致命的なバグを見つけることができたのはたった3〜4人しかおらず、すごいなあと感じました。やはり才能というのはあると思います。偶然見つけるのではなく、ロジカルに見つけるのが大事です。例えば同じ動作を繰り返すテストを100回行ってなにも出なくても、“101回目にバグが出る”というのを、その前の段階で「感じる」ということがあります。「匂いをかぐ」と言ってもいいかもしれません。察知する能力ということでしょうか。

石黒 テストエンジニアは、プログラムを書けるような開発を知っている人がベストと思いますが、必ずしもそうでなくてもバグを見つけられることもあるので、一概には言えない部分もあります。適性も必要ですが、意欲とかやる気が重要です。また、興味がないと続けられません。収入の面でも、トップクラスのテストエンジニアは、開発エンジニアに引けを取らないと思います。

高橋 性格的には「粘り強さ」「負けず嫌い」という人も合っていると思います。

石黒 バグを見つけるというのは“宝探し”をしている感じなので、それを楽しめる人がいいですね。

ゴールは品質保証

ゴールは品質保証

―最後にデジタルハーツとして、システムテストの分野で目指すものは?

石黒 一言で言うと品質保証ということだと思います。

高橋 ボリュームというのも大事だと思います。デジタルハーツでは今、ベトナムに500人規模のテストエンジニアがいます。彼らは情報処理の大学を卒業し、コンピューターリテラシー(能力)が高く、セキュリティーからテストの自動化、難しいテストから簡単なところまですべてカバーできます。テストという作業はやるべきことは無限大にあります。十分なエンジニアリングリソースをもって、科学的に「ここまでやれば大丈夫です」というサジェストをできるというのが大事であり、それができるのがデジタルハーツの強みだと思います。

 
石黒 邦宏

石黒 邦宏

1967年生まれ。SRAを経て、株式会社デジタル・マジック・ラボでインターネット経路制御運用に関わり、オープンソースウェアで経路制御を実現する GNU 「Zebra」を開発。「Zebra」をベースにした商用ソフトウェアを開発・ 販売するために、 1999年IP Infusion社 (San Jose, CA)を共同設立し、 CTOに就任。2009年Access CTO、2015年株式会社アプリックスCTOを経て、2017年株式会社デジタルハーツホールディングスCTOに就任。

高橋 寿一

高橋 寿一

1964年生まれ。フロリダ工科大学大学院にてソフトウェアテストの権威であるCem Kaner博士らに指導を受けた後、広島市立大学にてソフトウェアテストの博士号を取得。1992年より米Microsoft社、2001年より独SAP社にてソフトウェアテストリーダ業務に従事。2003年ソニー株式会社のソフトウェア品質担当部長を経て、2018年株式会社ロジギアジャパン代表取締役社長に就任。2019年株式会社デジタルハーツホールディングスのCTSO(Chief Testing Solution Officer)に就任。

株式会社デジタルハーツホールディングス

株式会社デジタルハーツホールディングス

デジタルハーツホールディングスは、ソフトウエアの不具合を検出するデバッグ・システムテストサービスを中心に事業を展開しており、ゲームソフトやスマートフォンアプリ、業務システムなど様々なソフトウエアの品質向上を支援しております。デジタルハーツホールディングスでは、豊富なテスト人材やこれまで蓄積してきたテストノウハウに加え、国内最大規模のソフトウエアテスト技術者資格を有するテストエンジニアの育成も進めるなど、精度の高いテストを効率的かつ柔軟に提供できることを最大の強みとしております。また、デバッグ・システムテストサービスと親和性の高い、システム開発やITサポート、セキュリティサービスなど、開発から保守・運用まで幅広いサービスを提供しております。