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CHIeru いま日本の英語教育の現場では 英語4技能の学習支援を教室外でも可能にした MALLシステムとは?

 「いつでも、どこでも」が当たり前のモバイル時代。英語学習だって例外ではない。いや、むしろ「いつでも、どこでも」学ぶくらいでないと身につかないのが英語だ。誰もが持っているスマホやタブレットなどのモバイル端末を活用し、場所を選ばず英語の4技能を効率的に指導できたら・・・。そんな教師の夢を実現した英語学習システムがあるという。授業と同様の学習を教室外でもシームレスに行える、画期的なMALL(モール)システム。それはいったいどういうものなのだろうか?

BYOD環境に最適なクラウド型のサービス

BYOD環境に最適なクラウド型のサービス

 英語教育に関心のある方なら、CALL、すなわち“Computer-Assisted Language Learning” のことはご存じかもしれない。CALLシステムは、コンピューターを活用して外国語スキルの習得を可能にした語学学習システムのことで、語学の授業スタイルを一変させた。さまざまなメリットがあるため、CALL教室は多くの大学で導入されている。

 一方、MALLは “Mobile-Assisted Language Learning”の略で、ノートPCやスマートフォンなど可搬性のあるモバイル端末を利用した言語学習のことだ。言葉自体は以前からあったが、アプリやオンライン講義、動画サイトなどのコンテンツを個人がモバイル端末を使って学習に役立てるというイメージが強かった。それを一歩進め、語学教育・学習支援のためのシステムとして開発したのが、チエル社のMALLシステム『CaLabo MX』(キャラボ・エムエックス)だ。

 それが実際にどう使われているのかを確かめるために向かったのは、茨城県つくば市にある筑波大学。お邪魔したのは、グローバルコミュニケーション教育センター(CEGLOC) 小野雄一教授が担当する、大学1年生の「English Presentation」の授業で、この日の1限目だ。このクラスでは、約1カ月前からCaLabo MXが試験的に使われているという。

 そもそも、CaLabo MXとはどうやって使うものなのか――使用するのはモバイル端末で、このクラスでは学生個人のノートPCを活用している。いわゆるBYOD(Bring Your Own Device)である。筑波大学では、Webブラウザを利用した学習管理システムを導入しているので、ほとんどの学生がノートPCを携帯しているようだ。学生は、Office365のアカウントでログインすることで、クラウド上のCaLabo MXを利用することができるのだ。

豊富なコンテンツをプリセット

豊富なコンテンツをプリセット

 1限目の授業は8時40分に始まるが、8時の時点で一人の女子学生が教室に現れた。おもむろにノートパソコンを広げると画面には英語が。授業前に自主学習を行っているようだ。さすが筑波大生である。
CaLabo MXの大きな特長のひとつは、自己学習の教材として使ったり、課題の素材として使ったりできることだ。なぜなら、英語4技能の学習を支援するための、「時事ニュース英語」「プレゼンテーション用フレーズ集」「スピーキング・ライティングコア表現トレーニング」といった豊富なコンテンツがプリセットされているからだ。

 しばらくすると、三々五々、学生たちが集まり出し、小野先生もいらっしゃった。そして授業の開始時間。ぎりぎりで駆け込んできた学生も数人いたが、どうやら、この日の出席者は24人のようだ。

 大学の授業と言えば、まず行われるのが、出席を取ること。CaLabo MXは出席管理も簡単で、先生が制限時間を設定して、出席を受け付けるモードにすると、学生はクラスコード(4桁の数字)を入力するだけで出席を取ることができる。瞬時に出席を取り終えることも可能なのだ。

 このクラスの入安ディリ(いりやす・でぃり/国際総合学類)さんは、「先生が出席を取りやすいのは、CaLabo MXによる授業の特長です。ほかの授業では、名前を呼ばれて返事をしたり、紙に名前や所属を書いて提出したりという方法だったりするので、非効率的だと思います」と語る。

 授業は、英語のニュース映像を見て、CaLabo MXのさまざまなメニューをこなしていくことで進められた。「Key Word Study」は、ニュースに出てくる重要単語を学ぶための語彙テスト。話題の理解と単語力強化が目的だ。
「Listening Practice」はニュース映像の全体像が理解できているかの小テスト。約3分間で5問の正誤問題である。残り時間がカウントダウンされ、5問解き終えた人数がどんどん表示されていくのもデジタル教材ならではだ。
「Listening Practice2」はディクテーションで、ニュース映像の音声・スクリプトを配布し、空欄を埋めていく。細かな音が聞き取れているかのチェックである。

豊富なコンテンツをプリセット

 「Discussion」では教室が白熱した。ニュース映像で紹介された内容に即し、自分はどちらの立場か(この日のテーマは「自然環境保全」と「商業開発」のどちらを支持するか?)をアンケート投票。そして、その理由を一言、英語で書き込む。さらに、近くの人とペアを組み、共有された理由を踏まえた上で賛成/反対の立場で一対一のディスカッションを行うのだ。もちろん英語を使って。意見が同じだった場合は、じゃんけんで負けた方が逆の立場に宗旨替えして意見を言い合うのが面白い。

 驚いたのは、学生たちが英語で意見を書き込むのが早いことと、ディスカッションの際にすぐに英語で会話をし始めたことだ。後で先生にこの感想を伝えると、「このクラスは能力の高いクラスですし、今日が30週目で1年間の最後の授業の日だったで、あの程度の会話には慣れていますね」とおっしゃる。前出の入安さんに聞くと、「最初はあんな感じじゃなくて、英語で話せって言われても、日本人同士だし照れが勝っちゃって話せなかったのに、先生の多少強引な持って行き方で、2~3週間たつと、先生に言われなくてももうみんな英語で話してました」と笑う。

 授業の最後には、学生を一人選んでプレゼンテーションが行われたが、その際のプレゼン資料の配布、各学生による評価記入、良かった点やアドバイスの入力なども、CaLabo MXで行える。さらには課題として、個々でシャドーイングした音声の録音、ディスカッションした内容に対する賛成/反対の理由をそれぞれ考えた英文を、授業後に提出しなければならないが、それもCaLabo MXで可能なのだ。

 このように、従来はCALL教室でなければできなかったような対面授業の支援機能が、BYOD環境、つまり一般教室で学生のノートPCを用いて行えるようになったことは驚きだ。学生は使い慣れた自分のノートPCを授業に使えるし、学校側にとってもCALL教室を新設するより、導入コスト・運用負荷が抑えられそうだ。環境に依存しないクラウドシステムであるCaLabo MXの利点は、それだけではない。インターネットにつながりさえすれば、自宅やカフェ、どこででも授業の予習復習や深みのある自己学習ができるのだ。

見やすくて使いやすくて効率的

見やすくて使いやすくて効率的

 実際に使ってみた学生たちは、CaLabo MXについてどう思っているのだろう。

 「答案の提出や資料配布がすぐにできるところがいいですね。教室外でも使えるのは、英語がもっとうまくなりたいという意欲のある人にはすごく良いシステムだなと思います」と語るのは、坪田藍(つぼた・あい/生物資源学類)さん。

 古野源也(ふるの・もとや/国際総合学類)さんは「デザインが見やすいというのが第一印象。操作もしやすいですね。語学の学習では、発音などを知るために何らかの電子機器が必要です。授業で配られたリスニング・マテリアルを教室外でも使えることは語学学習において非常に有効だと思います」と、授業素材の音声を教室外でも聴けるのが気に入った様子。

 前出の入安ディリさんは、「みんなの意見がどんどん表示されて画面上で見ることができたり、何人が回答したとか知ることができたりするのがいいですね。一回一回紙で集めて、先生がチェックしてから発表するよりも、みんなで画面を見て確認できるのは効率的だと思います」と授業が効率的になった良さを語ってくれた。

 

大事なのは運用能力と正確な理解・発信力のバランス

大事なのは運用能力と正確な理解・発信力のバランス

 最後に、教師から見てCaLabo MXとはどんなシステムなのだろう。小野雄一先生にもお話をうかがってみた。

——CaLabo MXを使ってみようと思われた理由を教えて下さい。

小野 CaLabo MXの、教室の中でも外でも同じ画面で同じ学習環境が実現できる点に注目しました。教室で使うための授業支援システムはいろいろとありますが、教室で質の高い授業を行うために学生が教室に来るまでの学習を充実させたいと思ったときに、全然違うプラットフォーム、違う画面、違う内容になってしまうと授業の流れが切れてしまうんです。教室での授業と教室の外での学習をシームレスにつなぐシームレスラーニング(Seamless Learning)を実現させるシステムとして、MXを使ってみることにしました。

——実際にCaLabo MXを使われた感想をお聞かせください。

小野 チエル社はCALLシステムに関して実績がある会社なので、インターフェースが使いやすく構築されています。CALLシステムを使ったことのある人だとなじみのある機能が多いので、よりわかりやすく使いやすいと思います。

 気になったのは反応の速度ですね。今日も一部つながりにくい学生が出てしまいましたが、それはネットワーク環境や学生さんのPC環境の問題でしょうね。システム側で改善できる部分もあるのかもしれないのですが、ネットワーク環境という問題に関しては授業を運営する先生も気を遣わなくてはいけないところです。Wi-Fi接続しやすい教室を選び、混雑する時間帯を避けて運用するなど、工夫が必要になってきます。今日は(教室変更のため)あの教室を初めて使ったので、状況が十分に把握できていなかった部分もありました。

——CALLシステムとMALLシステムの違いはどのような点にあるとお考えですか?

小野 教室に固定された有線デスクトップ型のCALLシステムにも利点があって、通信環境としては安定するんですね。ただ、教室外で個別学習もできるという意味ではMALLシステムです。MALLシステムで、Wi-Fiの性能が向上し教室環境整備が進めばいちばん望ましい方向に発展していくことになりますね。これからは高校時代にモバイルを活用して勉強してきた生徒たちが大学に入ってくる時代ですから、我々もその流れに対応した指導感覚を持つべきなのかなと思います。

大事なのは運用能力と正確な理解・発信力のバランス

——CaLabo MXには「学習履歴の一元管理」という特長もあります。学習履歴を学生や教師が一元管理できることについて、どう思われますか?

小野 以前、チエル社の『スーパー英語Academic Express 2』を使用した時の経験ですが、学習時間や学習内容をきれいに見える化した「自分の学習履歴」というデータは、学習者の学習意欲を維持させるのにとても効果的だと思いました。また、教員がそれをクラスの中で共有し、例えば今週頑張った人や今週よく取り組まれた課題などについて触れることで、クラスの学習意欲を促進させるような工夫もできました。教員が個人データを扱う際には注意を要する部分も多分にありますが、可能な範囲で共有して、学習者の自律的な学習に関する支援が授業の中で容易にできるのは、デジタルコンテンツの大きな強みだと思います。

――CaLabo MXに関心のある先生方にメッセージをお願いします。

小野 教室での授業の質を高めるのに、「反転授業」という教室の外と中の学習をオンラインでつなぐことを枠組みとした授業モデルが近年模索されていますが、アクティブで深い学びを実現するためには、教室に来るまでに学習者にどのような準備をやらせるかということが非常に重要になります。この新しいシステムを導入することで、よりアクティブで深く学ぶための授業デザインについて、根本的に考える良い機会になるのではないかと思います。すきま時間を利用したインフォーマルラーニング環境や自宅学習環境をどのように充実させるのかという視点で授業デザインを考えたときに、このモバイルをベースにしたオンラインプラットフォームは非常に有効です。

 また、CaLabo MXにはいろいろなコンテンツがあらかじめ入っていますので、それらの素材を課題にしたり授業の教材にしたりすれば、先生方の日常的な負担も減るのではないでしょうか。

——最後に、先生が英語教育で重視されていることをお聞かせください。

小野 いまは、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能の習得、とりわけコミュニケーションを行うための技術・技能の習得に関心が集まっていますが、そもそも何を伝えるのかという「中身」の部分、いわゆるリテラシーの部分も非常に重要なのです。近年は流暢に英会話ができる学生が増えてきているように見えますが、論理的な文章が書けない、なんとなくの表面的な意味はわかるけれど行間の意味や書いている人の深い意図などが読み取れていない、そんな印象を最近の学生から受けることがあります。

 特に筑波大学は、研究を目的とした大学という位置付けがあるので、難解な学術的文章の調べものをしながら注意深く丁寧かつ正確に読み取る、新しい知識を蓄積して発信する際には正確な英語で発信する、というのが2年次以降、専攻に進んでからの学習において一番大事なんですね。英語の運用能力の向上と、深く考えて正確な知識を理解するための教育。そのバランスが取れた授業を実現するのが肝要なのであるということを忘れることなく、日本の大学英語教育が進歩していって欲しいと願っています。

 ICTとモバイル・ラーニングを統合したCaLabo MXは、学生の学習機会を増やし、なおかつ深い学びにも利用できる、画期的な語学学習システムだ。専用アプリを入れれば、スマホでの利用すらも可能になる。まるで、どこでもドアならぬ、どこでも教室である。これがあれば、あとは学生たちが教室外でもどれだけ自主的に学習に使うか、教師がどれだけそれを促せるか。それにかかってくる。

芦澤 雅樹

担当者からひと言

チエル株式会社
製品開発部 開発グループ
開発スペシャリスト
 芦澤 雅樹

CaLabo MXはクラウド型のサービスですので、自宅でも簡単に利用できるというメリットがあります。先生が課題や反転学習のための教材を登録しておくことで、学生たちは家であらかじめ学習しておくこともできますし、授業後も自宅などで復習に利用することもできますので、事前学習と復習を教室外で行うことで、授業と授業外の学習がシームレスに結びつくような製品だと思います。今回初めて、実際に授業で使用されている様子を見学させていただきましたが、先生の方で準備していただいた教材などを一斉に学生に配布する場面もあり、スムーズに授業が進められていたことに感動しました。今後は使っていただいた上でのご意見などを吸収して、製品のバージョンアップに向けて改善をしていきたいと思っています。

チエル株式会社

チエル株式会社

「子供たちの未来のために、世界中の先生の授業を ICT で支える」を企業理念に掲げて設立。シェア NO.1 のフルデジタル CALL システムや、タブレット対応授業支援システム、ユーザー数が延べ300万人を超えるクラウド型教材配信サービスなどの開発・制作を手がける、教育市場に特化した ICT 専業メーカーです。