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CHIeru いま日本の学校教育の現場では ICTは文房具だ!『主体的・対話的で深い学び』の視点でこんな風に学んでいます!

 戦後最大、あるいは明治以来とも言われる大きな教育改革が進んでいる。2020年度から大学入試が大きく変わるのをはじめ、2020年度から2024年度にかけて、小中高には新しい学習指導要領が導入されるのだ。学校は大きな変革を迫られているが、授業スタイルの変化もそのひとつだ。この新しい学習指導要領では、『主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)』の視点から、「何を学ぶか」だけでなく、「どのように学ぶか」も重視して授業を改善することが教育現場に求められている。「どのように学ぶか」を重視した授業とはいったいどんなものなのだろうか。それによって子どもたちは何を得られるのだろうか。それを知るために、一人の先生を訪ねてみた。

プレゼン形式だからこそ表れる生徒の個性

プレゼン形式だからこそ表れる生徒の個性

 訪れたのは、東京都小金井市にある東京学芸大学附属小金井中学校。国立大学法人の付属学校として普通教育、教育実習、教育実践研究の3つの使命が課せられている学校だ。大学の広大なキャンパスと一体化していることもあり、緑豊かな環境が素晴らしい。同校は、教育現場で「アクティブ・ラーニング」が叫ばれるだいぶ以前から、対話的な学び『学び合い』を研究してきた学校でもある。

 出迎えてくれたのは、理科を担当する大西琢也(おおにし・たくや)先生だ。この日はICTを活用した2年生の授業を3クラス分見せて下さるという。先生の授業は教師による講義形式ではなく、プレゼンテーション形式で行われる。先生が前の授業で配ったワークシートに沿って各自が調べてきたことを発表するのだ。聞けば、先生の授業は以前からこのスタイルだという。生徒は1クラス35人。同じ机に座る4人(または3人)がひとつのグループになって、相談したり発表したりするようだ。1つの机には1台のノートパソコンが用意され、1人がそれを使い、残りの3人はそれぞれタブレットPCを使っている。

 この日のテーマは『進化』だ。「進化」「相同器官」「ダーウィン」「用不用説」「自然淘汰説」「突然変異説」「中立進化説」など、先生が設定したキーワードについて、生徒たちがインターネットで調べたり友だちと相談したりしてワークシートを完成させ、プレゼン資料を作っていく。与えられる時間は、前の授業1時間とこの日の冒頭15分ほどだ。

プレゼン形式だからこそ表れる生徒の個性

 発表は質疑応答も含め1人20分程度なので、発表できるのは1時間に1人~2人。大西先生は、頃合いを見計らって「どなたかご発表される方いらっしゃいますか?」と呼び掛ける。発表者が決まると、「では、○○先生、お願いいたします」と仰々しく紹介。大西先生は発表者に対しては常に敬語を使い、まるで学会発表のようだ。発表することの重要性を生徒に示しているのかもしれない。

 発表する生徒は前に出て、自分が作った成果物(プレゼン資料)を前方の大きなスクリーンに映し出し、それを使って調べたことを説明していく。このプレゼンが実に興味深かった。決められたキーワードを元に成果物を作っているため、基本的に同じ内容(知識)になるわけだが、当然ながら生徒によって表現や視点が微妙に違うのだ。ポケモンの“進化”をまずイントロに持ってきて「つかみ」で勝負する生徒や、「人間は神秘的だと思った。進化が良いことなのかどうかは分からない」と詩的な感性でまとめる生徒、写真を多用してビジュアルで攻める生徒、あるいはまるで教科書のように生真面目に知識を整然と並べていく生徒など、要は生徒一人一人の個性が現れてくるわけだ。

 質疑応答では、鋭い質問ありアドバイスありと、活発な会話が交わされる。最も面白かったのは、ある生徒が発表者に「人間がさらに進化するとしたらどうなると思いますか?」と尋ねたときだ。発表した生徒は「個人的な願望も含め背が大きくなる。2m80cmくらいあるといいですね」と答える。すると、質問した生徒は「ライオンなどのようにビタミンCを体内で作れるように進化するほうが良くないですか?」と反論。質問された側は降参かと思いきや、「背が高いと木になるレモンやオレンジを取って食べられるようになるからビタミンCも摂れます」とうまく返したのだ。教室はどっと沸いて、見ているこちらもつい笑ってしまった。

授業をサポートするChromebook とInterCLASS Cloud

授業をサポートするChromebook とInterCLASS Cloud

 授業を通して先生が一方的に知識を生徒に教えるということはほとんどなく、生徒たちは能動的に必要な知識を調べ、生徒同士で教え合ったり話し合ったりしている。先生はあくまでも生徒に語らせ、生徒に質問を促し、質疑応答になれば交通整理に徹している。いわゆる『学び合い』によるアクティブ・ラーニングである。昭和の時代に教育を受けた人間としては、授業スタイルのあまりの違いにただただ驚き感心するしかない。

 大西先生に、どんな狙いがあってこういうスタイルの授業を行っているのか、なぜICTを導入したのか、などをうかがってみた。

――プレゼン形式の授業にされている狙いを教えていただけますか。

大西 今日の授業で言えば、まず『進化』の基本的な知識を主体的につまり効果的に学べるということがベースにありますが、今後求められている力でもある、仲間と一緒に学んでいく姿勢、生徒同士で情報を共有していくということ、その2つを同時に学ぶことができます。さらに人の話をしっかり聞く。そういったトレーニングもこの授業でやってもらおうと思っています。
また、学び合いをするときに特定の友だち同士で話し合うのではなく、あまりしゃべったことのない友だちとも話し合えるようにということで、毎時間、席替えをしています。

授業をサポートするChromebook とInterCLASS Cloud

 大西先生の授業を効率的にサポートしていたのが、クラウド活用による「次世代学校ICT環境」だ。この日、使われていたのはChrome OSを搭載したノートパソコンChromebookと、チエル社のクラウド型授業支援システムInterCLASS Cloudである。InterCLASS Cloudは、先生画面の配信や学習者画面のモニタリング・操作ロックなど必要な機能だけのシンプルな授業ツールだ。グーグルが提供する教育サポートツールGoogle Classroomと1クリックで同期可能で、両者を組み合わせて利用することにより課題管理・クラス管理が効率的に行える。Webベースでフルクラウドのため、専用ソフトをインストールせずにどのコンピュータからでもログインして利用可能という使いやすさもある。

――今日の授業では、Chromebook とInterCLASS Cloudという授業支援システムを使っていらっしゃいましたが、どこに魅力を感じられたのですか?

大西 これまでは、デジタルで情報共有をしようとすると大がかりなパッケージソフトが必要で、その操作も煩雑だったんですね。InterCLASS Cloudの場合は、一般的なパソコンの知識だけで教員も簡単に投影ができるので、使ってみたいなと思いました。

 情報をクラウドで共有できるので、全員の現在進行形の学習状態がすぐに見られるのが良いですね。発表時の成果物だけでなく、それを作るまでのプロセスも簡単に投影ができるのはすごいと思います。

生徒同士で教え合ってICT機器の使い方を習得

生徒同士で教え合ってICTの使い方を習得

――ICT機器を導入したことで生徒たちに変化はありましたか?

大西 まだ導入して実質一カ月程度ですが、生徒たちはだいぶ変わったと思います。今までは自分のワークシートを仕上げて、それで終わりでした。ICT機器を活用するとクラス全員が一人一人のノートを見ることができますから、私が言わなくても、聞き合う、学び合うという姿勢が自然と出てきました。いろんな人のものを見て、自分のものを自分で修正していく力もついてきました。また、「これどうやってやるの?」と聞いたりするきっかけにもなっています。まさに、いま求められている「主体的な学び」、「対話的な学び」が行えているなと感じています。

――他の生徒の成果物を見られるなら、人のものを写すだけになる心配はないですか?

大西 正直な所、最初の頃はただ人のものを写すだけの子もいました。たぶん多くの先生方はそれを心配されると思います。他人のものが見られるようになったら、一番いい出来のものをみんながコピーするんじゃないかと。でも、人間、自分のオリジナリティーを出したいという欲求があるんですかね。最初はまねていた生徒も、絵を入れるなどプラスアルファが入ってきて、だんだん違うものが生まれるようになってきました。あと、みんなが優秀だと思う人でも間違えるんですね。それを写してそのまま発表して間違えることによって、鵜呑みにしちゃダメだなということを学ぶ。いわゆる情報リテラシーのひとつですが、それを実体験できるというのもいいことだと思います。

――子どもたちはICT機器の使い方をどうやって習得していくのですか?

大西 最初の授業で使い方の基本を教えますが、Chromebookは初心者にも使いやすいと思います。何人かパソコンが得意な子がいて、彼らが他の子に教え合うようになっていくんですね。得意な子を囲んで3~4人が教わり、彼らができるようになるとその子たちがまた3~4人に教えていく。気がつくと、どんどん使える子が増えていき、みんな使えるようになっていた・・・そういう形です。苦労したのは最初の1週間だけですね。

 私のほうの工夫としては、休み時間にノートパソコンを開放して、調べ物があれば他の教科でも休み時間に自由に使ってもらっています。趣味のことを調べている生徒もいるかもしれませんが、それもキーを打つひとつの練習だととらえて許可をしています。

生徒同士で教え合ってICTの使い方を習得

 ICT機器を活用した授業を生徒たちはどう受け止めているのだろうか。生徒の声をいくつか紹介してみよう。

Aさん「紙なら絵を描いて説明するところでも、パソコンだと動画を使えたりするのが一番いいところだと思います。でも、こういう授業は準備が大変です」

B君「調べたことをみんなで共有できるということが一番の利点だと思います。まだ使い方がわからないところもあるので、友だちに教えてもらったりしていて、そういうところでもチームワークが出てくるのかなと思います」

C君「パソコンを使った授業は、調べるという作業が必要なので主体性が出てくると思うし、自分の興味に応じて深い内容まで調べることができるのでいいと思います。ただ、集中力がとぎれたりすると、違うことに走ったりもするので、そこが注意しなければいけない点かな」

 先生にインタビューする前に生徒に話を聞いたのだが、生徒たちは先生の意図をしっかり受け止めているようだ。

ICTがなければ絶対に叶えられないこと

ICTがなければ絶対に叶えられないこと

――ICT機器を使っていない先生におすすめしたい点があったら教えて下さい。

大西 情報には正しいものとそうでないものが混ざっていて、それを最後に判断するのは自分だという、情報リテラシーを生徒が学べるというのがまず1点目。

 データを蓄積できるので、過去の成果、現在のもの、来年、再来年と残すことができる。いわば時間の壁が無くなるのは大きいですね。さらに、Google Classroomで使っている画面は学年全員140人が見られるようになるので、空間の壁も無くなります。これまではA組の人はB組の人が何をやっているかは分からなかったんですが、授業中にB組の調べた成果も見られるんです。時間・空間の壁を超えられるというのが2点目です。

 3点目は、今までは提出物を一度提出してしまうと、子どもたちはそれを見返せなかったのが、デジタル化によって子どもたちの手元に残るので、子どもたちの学びを遮断することなく、こちらはデータだけ確認して評価に使うことができるようになった点です。
この3点はICTがなければ絶対に叶えられないし、ものすごく有用だと感じられることです。

ICTがなければ絶対に叶えられないこと

――こちらの学校のICT環境はどのようなものですか?

大西 今日使った理科室は、無線LANが飛んでいる状態になっていて、ChromebookとiPadが接続されている状態です。さらにプリンターとコピー機が各1台、これも無線でつながっています。この部屋に限れば比較的恵まれた環境にあると思います。ただ、Chromebookが10台しかないので、早く一人1台になるように手配していきたいと思っています。私に言わせれば、ノートパソコンはシャープペンシルや消しゴムのような文房具と同じで一人1台が当たり前だと思っています。うちの学校だけでなく、これが全国の学校に広がっていくことを願っているところです。

――最後に、先生が授業で目指していることを教えて下さい。

大西 一言でいうと、生徒に学び方を学んでほしいですね。私にとって理科というのは一つの手段にすぎないと思っています。理科という題材を通じて、学ぶということはどういうことかを学んでほしい。同様にICT機器は文房具のように自然に使いこなす道具だと思っています。これを駆使して先人が蓄積した知識や知的な考えを学び、自分の考えをミックスさせて新しいものを生み出していく、そういった流れを子供たちに身につけてもらって未来を創造していってほしい。それが私の授業の目指すところです。

 文科省が提唱する『主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)』は、授業のあり方を根本的に変える。子どもたちの親の世代やそれより上の年齢の人が現在の学校の授業を見ると、自分たちが受けていた授業とあまりに違うことに驚くはずだ。時代が大きく変わっていくなら、子どもたちが使う道具もそれに対応していくのは当然のことだろう。大西先生がおっしゃったように、ペンやノートを一人一人が持つのが当たり前のごとく、ChromebookとInterCLASS Cloudを生徒一人一人が使えるICT環境が早く当たり前になってほしい。そんなことを思わせるほど、子どもたちのプレゼンは見ていて楽しかった。

チエル株式会社

チエル株式会社

「子供たちの未来のために、世界中の先生の授業を ICT で支える」を企業理念に掲げて設立。シェア NO.1 のフルデジタル CALL システムや、タブレット対応授業支援システム、ユーザー数が延べ300万人を超えるクラウド型教材配信サービスなどの開発・制作を手がける、教育市場に特化した ICT 専業メーカーです。