メニュー 閉じる
CHIeru いま日本の英語教育の現場では 日本人の英語力は変えられる!? ICTを活用した英語教育が秘める大きな可能性

 世界に誇れる点が多い日本だが、数少ない弱点のひとつに挙げられるのが日本人の英語力の低さだ。何しろ、TOEFLの2017年度の平均点がアフガニスタンと並んで71点。アジア29カ国中、後ろから数えて3番目なのだ。インターネット時代を迎え、英語がますますその重要性を増している現在、この結果では将来が心配だという人もいるかもしれない。

 だが、時代はどんどん変化している。日本人の英語力が劇的に向上し、その地位を逆転させる時代がやってこないと誰に言えるだろうか。パソコンやスマートフォンといったデジタル機器、そしてインターネットは我々の生活を劇的に変えた。もちろん変わったのは生活だけではない。テクノロジーの進歩で、学校教育の現場も大きく変わりつつある。最新のICT(Information & Communication Technology)機器をいち早く活用し、新しい英語教育にチャレンジしている学校も続々と登場している。ICTが英語の教育現場でどのような役割を果たし、どんな可能性を秘めているのか、探っていくことにしよう。

充実したCALL教室を備えた青山学院大学

充実したCALL教室を備えた青山学院大学

 訪れたのは、外国語教育に力を入れている青山学院大学の青山キャンパス。イチョウ並木やチャペルが落ち着いた雰囲気を醸し出し、都心とは思えない素晴らしい環境だ。ICTを活用した英語教育の専門家である、同大外国語ラボラトリー所長の小張敬之(おばり・ひろゆき)教授にお話をうかがった。

――青山学院大学の英語教育の方針や特長を教えて下さい。

小張 青山学院の学生は、学部によってTOEICだったりTOEFLだったりIELTSだったりと違うんですが、全員がpreとpost、すなわち入学直後と英語科目履修後の2回、英語力を測るテストを受けるんです。

――教えっぱなしではなく、どれだけ成果があったのか調べるわけですね。

小張 そうです。学部によって、平均するとTOEICで50点から100点ほどは伸びますから、かなり成果が上がっているといえるのではないでしょうか。
また、学生一人ひとりがコンピューター端末を使って授業を受けられるCALL(Computer Assisted Language Learning)教室が充実しているのも本校の特長です。青山キャンパスに13教室、相模原キャンパスに8教室あって、その管理・運営は外国語ラボラトリーが行っています。

さまざまなメリットがあるデジタル教材

さまざまなメリットがあるデジタル教材

――外国語教育にCALLシステムなどのICTを取り入れる意義を教えて下さい。

小張 いま、「モバイル技術の革新」「クラウド環境」「AI/Big data/VR環境」などによって、教育にもパラダイムシフト(常識が覆るような劇的な変化)が起きています。
 21世紀の学習スタイルを行うには紙だけでは無理なんです。学習者も100%スマートフォンを持っているわけですからそれを使わない手はない。スマホやタブレット、アレクサやGoogleスピーカーなどのAI、ありとあらゆるものを使って学習したほうがいい。週に1~2回、教室で学ぶだけでは英語力なんか付くわけないんです。クラスルーム+ユビキタス環境の中で24時間いつでも英語をインプットできるように環境を整えておいて、クラスはあくまでもインタラクション中心、ディスカッション中心、プレゼンテーション中心。そういう授業に切り替えるという意味では、ICTによる教育というのは絶対に必要なんですね。
 私の授業は、もはやCALLシステムがないと成り立ちません。昔は私も紙の教材を使っていましたが、いまはオンライン上のTEDやCoursera(コーセラ)、あるいはMOOCs(ムークス)という「大規模公開オンライン授業」を使っています。世界中のありとあらゆる大学の講義を、アクセスすれば無料で聴けるんです。英語字幕を日本語に切り替えられるものもあります。先生がどこにどんな教材があるか把握しさえすれば、CALL教室のメリットは大きいですね。

――CALL教室の活用法をもう少し詳しく教えていただけますか。

小張 青山学院で使用しているのは、チエル社の『CaLabo EX』というCALLシステムです。大学の授業では学生に課題を出しますが、私の場合は課題は全部デジタルです。デジタル教材のメリットはたくさんあり、音声や動画が使用できること、オンラインにアクセスすれば24時間環境で学習できること、情報のアップデートが常にできること、反復学習がたやすい、などです。
 『CaLabo EX』では、pdfファイルや動画ファイルによる教材や課題を一瞬で配布でき、同様に課題の回収も簡単です。あと、ログ(記録)を取って学習履歴を活用できますし、学生の理解に応じた個別指導も可能です。ほかに音声評定ソフトも導入しているんですけれども、自分が発話して発音やイントネーションが正しいかどうかをソフトウェアが判定してくれます。それに沿って自分で何度も練習すれば、英語らしくなっていくわけです。昔は単語だけでしたが、いまは文章のイントネーションやリズムも判定します。音声合成機能もあるので、自分で作成した文章で発音練習ができます。これなんか先生がいちいち個別にやっていたら大変な時間が必要ですよ。教育には人間にしかできない教育もあれば、コンピューターを使ったほうがいい教育もあります。そういう意味でCALLシステムは非常に重要だと思いますね。

実際に使用している学生たちにも好印象

実際に使用している学生たちにも好印象

 素晴らしい効果と大きな可能性を感じさせるCALLシステム。では、『CaLabo EX』は実際にどう使われ、使用している学生たちはどう思っているのだろうか。CALLシステムを特に活用されているという、文学部英米文学科の田中深雪(たなか・みゆき)教授が指導する「通訳基礎」と「コミュニケーション演習」の授業を見学させていただき、お話をうかがった。英米文学科では2017年度より、一層充実した教育を提供するべく、「英語で学ぶ」および「英語を究める」ための2つの新プログラムをスタートさせた。田中先生はその1つ、「通訳・翻訳プログラム」を担当されている。

――先生は授業の際、どのようにCALLシステムを活用されていますか。

田中 私は通訳・翻訳の授業を担当していますので、シャドーイングや同時通訳の練習では必ずCALLシステムを使っています。
 最初に見ていただいた「通訳基礎」の授業では、同時通訳の練習をしていました。英語音声をヘッドホンで聴きながら自分の同時通訳の声を吹き込んで、スクリプトと照らし合わせながらミスがないかとチェックする作業です。 同時通訳した声は『CaLabo EX』に録音されていますので、一人ひとりの訳をクラスみんなで一緒に聴くことも行いました。
 その次のゼミの授業では、大学のホームページにある歴史紹介映像の日本語音声をグループで聞いて英語字幕を付け、その訳語をみんなで吟味するということをやっていました。
 私の担当するクラスには帰国子女が多く3割以上はいると思います。彼女らは発音がネイティブのようにきれいですから、帰国子女ではない学生も日頃そういう発音を聴いていると自分も頑張ろうと思うようですね。CALLシステムでは、自分の発音も波形で確認できますし。逆に帰国子女の学生は英語から日本語に訳すことはやや苦手。CALLシステムはいずれにしても欠かせないです。だから毎年CALL教室を必ず割り当てて下さいとお願いしています。

――CALLシステムは学生さんにとってどんなメリットがありますか?

田中 自分の声を録音してすぐに聴き直すことができる。保存できる。ネイティブのモデル音声の波形と比べて自分の発音、イントネーション、声の出し方をチェックできる。それがメリットじゃないかと思います。目で見れば違いが一目瞭然です。

――教える側にとって、CALLシステムはどんなメリットがあると思われますか?

田中 20人とか30人とかのクラスですと、いっせいに通訳されるとモニターできないんですが、CALLの場合は、この学生の声を聴いてみようと思えば、そこだけを聴けますし、ほかの学生に聴かせることもできます。
通訳は声を出すのを恥ずかしがっていては仕事になりません。恥ずかしがらないように人に聞いてもらったりコメントをもらったりすることも、CALLシステムがあればやりやすいです。

 授業を終えた学生さんの何人かにもCALLシステムの感想をうかがうことができたので、その声も紹介しておこう。

「ヘッドセットで声を録音するムービーテレコという機能があって、それで自分の訳などを録音して、あとで再生して確認することができるのが、とても便利です。一人のひとの声を教室全体で聴けるのもすごいなって思います」
「同じ音源を全員で一斉に聴いて授業をすすめるのではなく、自分のペースで聴いて、聴きたいところをくり返し聴いたりできるのもいいですね」
「最初は一人ひとりが個別に練習するだけだと思っていたんですが、みんなの前で発表して、と言われたときは驚きました。モデル機能で発表するときは緊張しますが、ある意味、それが力になっているかなとも思います」
「友達の訳を聴いて、みんなうまいなって思います。自分も負けられないなって」
「自分が正しいと思っていても、よりベターな答えがあったりするので、自分の訳をクラス全員に聞いてもらって、お互いにフィードバックできることは素晴らしいと思います」

 皆さんの話をうかがって印象的だったのは、CALLシステムでクラス全員に自分の訳や発音を聴いてもらうことに、一人で黙々と学習する勉強とは違う価値を見出していることだ。
 再び小張教授へのインタビューに戻ろう。

最終目標は英語を使って交流や対話を可能にすること

最終目標は英語を使って交流や対話を可能にすること

――CALLシステムは教室の中に新しい価値を生み出しているような気がします。

小張 パラダイムシフトによって、もはや教室は先生の独壇場ではなくなりました。先生がレクチャーするよりも、学生が主体的に学んだり、他人に教えたりする方が学力が身に付くという研究もあります。CALL教室では学習者がお互いに動画や音声やパワーポイントなどのデジタルファイルをシェアできます。デジタル化によって、グループで共同作業することは、主体的学習やコミュニケーションの活発化など、さまざまなメリットがあります。
 ただ、どんなに時代が進んでも、教育で一番大事なのはダイアログであり、face to faceのコミュニケーションです。人間の思考や価値観は人との交流や対話を通してしか伸びていかないと私は思います。私は年に4回、クラスにネイティブスピーカーを10人連れてきます。学生30人に対して10人ですから、3対1でネイティブに対して発表とディスカッションをさせます。最初はパニックになっていた学生たちも、最後は自分の考えや思いを英語でネイティブスピーカーに伝えられるようになります。そこまで持っていくためのシステム作り、方法論としてICTつまりCALL教室やデジタル教材をフル活用しているわけです。

――最後にICTを活用するにあたって先生が大切だと思われることを教えて下さい

小張 知識を覚えて応用するだけのこれまでの教育から、自分の頭で考えて白紙の状態から何かを作り出すHigher Order Thinking(高次の思考)が求められる時代に変わってきました。ICTを使って行う反転授業やアクティブ・ラーニングもそのための効果的な方法です。そんな時代、教師はメンターでありキュレイターであるべきです。どこに何があるかを理解して、あとはアドバイスをする。
 テクノロジーは最大に使ったらいいと思います。ただし、どういう教育がしたいのかという目標をきちっと押さえた上で、というのが前提です。教師というのは信念を持っていないと学生を正しい方向へ導けません。人間教育というのはトータルなものですから、価値観や世界観、そういうものも含めて学ばせるべきです。
 私がコロンビア大学にいたときの恩師は「本当に上手な教師は何もなくても教えられる」とおっしゃいました。今から30年も前の話ですから、チョークも何もなくても授業を活性化するのがプロフェッショナルの教師だということですね。今なら「何もなくてもきちっと教えられる教師がCALL教室をきちっと使える教師だ」とおっしゃるかもしれませんね。

 ICTを活用した英語教育は、利便性や効率だけでなく教育の質を根幹から変えるほどの大きな可能性を秘めている。CALLシステム、そしてそれを効果的に使う先生に英語を教われる環境があれば、日本人の英語力はぐんぐん上がっていくのかもしれない。

(PR:チエル株式会社)

加藤 美也子

担当者からひと言

チエル株式会社
製品技術部 CS推進課課長

加藤 美也子

青山学院大学さまに『CaLabo EX』を初めて導入していただいたのは2003年で、それ以来バージョンアップを重ね、約16年間ご利用いただいています。システム導入後のフォローアップをきめ細かに行うのがチエルの特長で、担当の私は各キャンパスに週1度、学内に常駐して先生方の授業サポートをしています。先生がデザインされた授業に対して、事前にご相談して効果的に使える機能をご提案したり、授業中に操作の補助をしたりすることで、より創造的な授業の実現を手助けすることが私の役目かなと思っています。また、先生方からいただいたアドバイスや改善点をフィードバックすることによって、先生方のご指導や学生のみなさまの学びに貢献できる製品づくりを続けていきたいと考えています。

チエル株式会社

チエル株式会社

「子供たちの未来のために、世界中の先生の授業を ICT で支える」を企業理念に掲げて設立。シェア NO.1 のフルデジタル CALL システムや、タブレット対応授業支援システム、ユーザー数が延べ300万人を超えるクラウド型教材配信サービスなどの開発・制作を手がける、教育市場に特化した ICT 専業メーカーです。