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第3回 インフラ メンテナンス大賞 表彰レポート

インフラメンテナンス大賞とは?

インフラメンテナンス大賞とは?

講評を述べる山極壽一選考委員会委員長(日本学術会議会長/京都大学総長)

 日本の経済成長や人々の日々の生活を支えるインフラは、その多くが高度成長期に整備されたものである。建設から数十年を経たインフラは、現在、急速に進行する老朽化という事態に直面している。今後も安定的に成長を続け、地域が持続的な発展をしていくためには、あらゆる知恵や技術を総動員してインフラメンテナンスに取り組んでいく必要がある。そのような背景からメンテナンスに従事する事業者および技術にスポットを当て、メンテナンス産業の活性化やインフラメンテナンスの理念の普及を図ることを目的として、「インフラメンテナンス大賞」が設けられた。今回は、その栄えある第3回インフラメンテナンス大賞にて、国土交通大臣賞を受賞した2団体を紹介したい。

鉄道分野におけるIoTの活用

鉄道分野におけるIoTの活用

受賞時に国土交通省赤羽一嘉大臣、日本線路技術および川崎重工業の皆さんと

 東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は、株式会社日本線路技術および川崎重工業株式会社との共同開発による「保線におけるIoT技術の実用化とメンテナンスへの応用」により国土交通大臣賞を受賞した。

 線路は年単位で繰り返し補修を行いながら使用されることを前提に作られているため、高い頻度で点検を行う必要がある。鉄道開業以来、この点検は線路の上を歩いて目視確認する方法が採られてきた。安全確保には重要な点検である一方、技術も人手も必要になるため新たな技術が長年待たれていた。今回はIoTを活用することで点検の効率化と質の向上を図るという斬新な取組であった。

 その手法は実際に運転されている列車に変位センサーと画像センサーを付けてモニタリングするというもので本邦初の技術である。時速130キロで走行する列車から線路の修繕を必要とする状態を精度良く特定したり、画像を取得することは技術が進歩した現在でも容易ではないが、今回はそれらを克服することに成功した。さらに、取得したデータを線路の保守管理といった実務に活用するための工夫も加えられ、すぐにでも他社で活用できるようにパッケージ化したことも評価された。

 プロジェクトを推進したJR東日本の嘉嶋課長によると、「線路の保守管理は鉄道経営の根幹で必要不可欠な技術。一方で、技術者不足は喫緊の課題で今後も技術革新が求められる中、本技術が評価されたことは励みになる。」と受賞の喜びを述べた。また「このモニタリング技術がJR東日本だけではなく、地方鉄道も含めて他社にも普及していくことで、日本の鉄道技術の向上に繋がることを目指したい。」と今後の抱負を語った。

下水道管における腐食調査の効率化

下水道管における腐食調査の効率化

受賞したサービスを紹介するパネル前で

 次に同じく国土交通大臣賞を受賞した株式会社クボタによる「下水道圧送管路における硫酸腐食箇所の効率的な調査技術」を紹介したい。下水道管の劣化調査は、マンホールが存在せず満水状態の区間なども多く、目視できない箇所などでは非常に困難な調査となる。また実際の現場では配管が工事時の図面と異なることも多く、それが視認することができない地中であれば、より困難な調査となる。今回の取組ではクボタが独自に開発した机上スクリーニング技術と、CSカメラを活用することにより、下水管の劣化度を的確に診断可能となった。

 開発段階では、実際の管路を用いて調査を行なったが、実験とは異なり失敗が許されない局面なので、これまでにクボタが蓄積してきた経験値と知見によって、危機察知を行いプロジェクトが推進された。その結果、今回の技術開発に伴い、下水道管の見えにくいレベルまで事前に感知でき危機回避の向上に貢献した。その技術は受賞時の段階でも、導入事例が28と様々な企業に採用されている。

 このプロジェクトでリーダーを務めた景山課長によると「受賞を聞いた際は、まさか!(自分達のプロジェクトが受賞するとは)と言う感じだった。」と語った。受賞後は社内で驚かれただけではなく、外部からのレスポンスも多く問い合わせが増えているとのことだった。また景山課長は「今回の技術が普及することで、道路陥没事故の軽減や、人々が住む街づくりに貢献できれば。」と、今後の抱負を語った。

未来を見据えたインフラメンテナンスを目指して

未来を見据えたインフラメンテナンスを目指して

地域の持続的発展に向け、インフラメンテナンスの取組推進の重要性について語る国土交通省赤羽一嘉大臣

 この様に日本国内のインフラは技術者の弛まぬ努力と取組により、我々の生活が支えられている。それは普段の生活では目に見えにくい分野である。今回の両企業の紹介を踏まえて、私達生活者も我が国のインフラの現状と未来について更に関心を高めるきっかけとなれば幸いである。

インフラメンテナンス国民会議