治療薬増えた膿疱性乾癬 全身症状繰り返すことも  つらさ、周囲も理解して

2023年03月25日
共同通信共同通信
 皮膚に盛り上がった赤い発疹ができ、その表面から白いフケのようなものが落ちる「尋常性乾癬=かんせん」は、見た目から他人にうつる病気だと誤解されやすい。一方、皮膚だけでなく全身に症状が起きるさらに厄介な乾癬もある。全身に細かい水ぶくれができる「膿疱(のうほう)性乾癬」は、進展が急な場合がある上、症状がたびたびぶり返す深刻な病気だ。患者ごとに症状の現れ方も異なるが、薬剤の進歩により治療の選択肢が増えている。専門家は「患者の苦境を周囲も理解してほしい」と訴える。
 
 

 

 ▽うつらない病気
 尋常性乾癬の患者では症状のほとんどが皮膚に現れるのに対し、膿疱性乾癬は全身に多様な症状が起きるのが特徴だ。
 この病気に詳しい帝京大の多田弥生主任教授(皮膚科学)によると、急性の進行をたどる膿疱性乾癬のうち全身に症状がある「汎発型」の患者では、全身のほてりとともに赤い発疹から細かい膿疱(水ぶくれ)がたくさん現れ、高熱が出たり、寒けを感じたりする。むくみ、関節の痛み、強いだるさなどを伴うケースも多い。一度良くなっても繰り返すことがある。
 その症状から、他人にうつる感染性の病気ではないかと誤解されやすいのは尋常性乾癬と同じだ。多田さんは「乾癬の患部には細菌はいないので、いずれも他人にはうつらないことがもっと知られてほしい」と強調した。
 ▽難病指定
 尋常性の国内での推定患者数は40万~60万人との報告がある一方、膿疱性乾癬は乾癬患者全体の1%程度と推定されている極めてまれな病気だ。
 汎発型膿疱性乾癬で、一定以上の症状がある場合は国の難病指定を受け医療費が助成されるが、助成対象は2020年度末で2千人余り。患者の全体像はまだ十分には分かっていない。
 発症する年齢層は幅広く、患者は女性の方がやや多いとされている。
 発症には体の免疫作用が関わっているが、発症のきっかけは患者ごとにさまざまだ。生まれついての体質に加えて、感染症や妊娠、服薬、ストレスなどを機に発症したり、悪化したりすることがある。糖尿病や肥満、高脂血症などの体の要因も影響するとみられる。
乾癬への社会の理解を訴える帝京大の多田弥生主任教授
乾癬への社会の理解を訴える帝京大の多田弥生主任教授

 


 ▽粘り強い対処を
 診断のためにはまず、患部の皮膚組織を採取して特徴を見極めるほか、血液検査で合併症の有無や炎症の強さを調べる。感染性のほかの病気でないことの確認も必須だ。
 症状の現れ方や進行には個人差が大きく、幾つかの医療機関を受診してから見つかることがある一方、高熱や強いだるさなどで動けなくなり、救急車で搬送され入院する例も珍しくないという。
 薬物療法としては、それぞれの症状を改善する内服薬がある。急性期の症状が落ち着けば、皮膚症状を抑える塗り薬や、患部に紫外線を当てて免疫による炎症を抑える光線療法なども施される。
 近年、進歩が急なのが患者に注射で投与され、免疫のメカニズムに直接働く「生物学的製剤」だ。日本では複数の生物学的製剤が尋常性乾癬だけでなく膿疱性乾癬にも保険適用されている。
 昨年、膿疱性乾癬の急性症状の改善に特化した「スペソリマブ」(製品名スペビゴ)も承認された。免疫に関わるタンパク質で膿疱性乾癬と関係が深い「インターロイキン36」の働きに作用して炎症を抑える生物学的製剤だ。
 治療の選択肢は増えたが、実際の治療では症状のコントロールが難しいケースもあり、粘り強い対処が必要となる。
 多田さんは「時間はかかっても症状に合う治療法がきっと見つかる。それを医師と共に探っていくことが大切。社会の理解も深まってほしい」と話した。(共同=由藤庸二郎)