職場の腰痛予防対策を支援 理学療法士、専門性発揮へ 原因探り改善策を提案

2022年11月29日
共同通信共同通信
 仕事に起因する腰痛に悩む人は多い。職場の腰痛予防にリハビリテーションのプロである理学療法士が専門性を発揮して役割を果たせないか。日本理学療法士協会は、仕事の中での原因を探り、改善策を提案して腰痛予防を支援する事業に乗り出した。医療機関や介護施設の現場で啓発事業を始め、小売業などほかの業態への展開も目指す。取り組みの現状と狙いを聞いた。
朝礼時に腰痛予防体操をする袋井みつかわ病院の職員=静岡県袋井市(同院提供)
朝礼時に腰痛予防体操をする袋井みつかわ病院の職員=静岡県袋井市(同院提供)

 

 ▽成果事例を共有
 「2022 職場における腰痛予防宣言!」と題した今年の取り組みでは、参加する医療・介護の職場でまず啓発ポスターを掲示し、腰痛予防の講習会を開く。協会は参加者に基本的な予防策を紹介する動画やスライドを提供する。
 同協会の佐々木嘉光常務理事によると、ポイントとなるのはその次の段階だ。職場のどんな仕事が、どの程度の腰痛を引き起こすのか。該当する現場作業を洗い出し、リスクを見積もった上で改善策を提案、実行する段取りだ。協会は厚生労働省作成のチェックリストなど必要な資料を提供し、現場では理学療法士を中心に対策を進める。
 2020年の取り組みでは、各施設で講習会を開いたり、予防のためのハンドブックを作成したりして成果を上げた。成功事例は事例集にまとめて協会のウェブサイトでも公開し、他施設への情報共有を図っている。
 ▽毎朝の体操
 静岡県袋井市の袋井みつかわ病院も20年、この取り組みに参加した。萩里由委子看護部長によると「医療、介護の現場では長時間、中腰や前かがみになりがち」で、療養病床を持つ同院では当時、複数の介護職員が腰痛のため病欠し、改善が急務となっていた。
 特に腰への負担になっていたのは、ベッドと車椅子の間の乗り移りと入浴の介助など患者の体を動かし、支える作業だ。
 それまでも同院リハビリテーション科の理学療法士、柿本龍一さんらが中心となって院内で講習会を開催。抱え上げる際の患者との向き合い方や姿勢、体に添える手の使い方、踏ん張るときの介助者と患者の足の位置関係などについて、症状に応じて負担の少ない方法を指導してきた。
 
 

 


 協会の事業に参加して新たに取り組んだのが「腰痛予防体操」。本格的な筋力強化や柔軟体操は現場では難しいため、短時間でも効果が出るよう、体幹を強化するドローインと腰周りのストレッチ、骨盤を押す腰の体操の三つに絞って毎朝の朝礼時に毎日行った。
 その結果、腰痛で休む介護、看護職員が減少し、また「痛みで業務に支障がある」職員も減ったという。
 ▽小売業でも
 厚労省のまとめによると、休業4日以上のけがや病気をした人の数は近年、全体としては横ばいだが、小売業と社会福祉施設では急増し、背景には働く人が高齢化している実態があると指摘されている。
 一方、予防策を指導する専門性を持っている理学療法士は従来、患者を治療する医療現場に集中し、予防に参画することはまれだった。これに対して厚労省の検討会は今年、職場の転倒・腰痛の予防について理学療法士の活用は有用で、国は支援体制を拡充するべきだと提言し、業務範囲の拡大を促した。
 「諸外国では治療の場面だけでなく業務上の腰痛の発症予防、再発予防でも活躍している。日本でも積極的に役割を果たしていきたい」と佐々木さんは話す。既に小売大手の現場でリスクの高い作業の洗い出しに着手。各地の理学療法士協会は給食センターや介護現場などで同様の取り組みを進めている。(共同=由藤庸二郎)