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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4600】写楽 純米吟醸 剣愛山 生酒(しゃらく)【福島県】

2021.7.16 17:23
福島県会津若松市 宮泉銘醸
福島県会津若松市 宮泉銘醸

【Z料理店にて 全6回の⑥完】

 近所のZ料理店に顔を出す。「うちは居酒屋じゃないんだからね。居酒屋みたいにいっぱいの種類の酒を置いてないんだからね」と言いながらも、予約すると、わたくしが飲んだことがないだろうお酒を数種類さりげなく用意してくれる。その心意気がうれしく、月に1回のペースで暖簾をくぐっている。今回も「本当に本当に居酒屋じゃないんだからね、あんたのために酒を入れているんじゃないからねっ!」と半ば恫喝的に先制パンチを繰り出したが、むろん演技に決まっている。

「サビ猫ロック」「山本」「雄東正宗」「寒菊」「黒牛」と飲み進め、最後6番目にいただいたのは「写楽 純米吟醸 剣愛山 生酒」だった。「写楽」は飲む機会が多いうえ、わたくしの口に非常に合うお酒。当連載でこれまで、16種類を取り上げている。まず、ハズレの無い銘柄。安心して飲める。今回のお酒はどうか。いただいてみる。

「あっ、旨い!」。おもわず声に出た。旨みと酸が非常に良く出ている。この2つが、この酒の味の重要要素。甘みも感じられる。含み香は、セメダイン香(酢酸エチル香)やバナナ香に似たような香り。余韻の苦みが強い。大人の苦み。「写楽」はこの苦みに特長がある、と個人的に常日ごろおもっている。フルーティー&ジューシー。いかにも「写楽」という味わい。文句なく好きだ。モダンタイプのミディアムボディに属する酒質か。

 裏ラベルには、例によって蔵元さんの「米を愛し、酒を愛し、人を愛す。みなさまに愛される酒を目指します。  宮森義弘」という口上が載せられ、以下のスペックが表示されている。「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、原料米 徳島県産 剣愛山100%、精米歩合50%、アルコール分16度、製造年月03.01」。さりげなく「原料米 徳島県産 剣愛山100%」と書いているが、「剣愛山」は検索しても出てこない。

 ネット情報によると「写楽のためだけに作った剣愛山だそうです」とのこと。すなわち想像するに、蔵元さんが、徳島県のコメ農家に酒造好適米の「愛山」を契約栽培してもらい、徳島県の名山「剣山」にちなみ「剣愛山」と名付けたのではないだろうか。

「愛山」は、兵庫県立明石農業改良実験所が1941年、母「愛船117」と父「山雄67」を交配。太平洋戦争を経て1949年に品種を固定した。母方の父は雄町系、父方は雄町と山田錦の子という、全身に山田錦と雄町の“血”がたっぷり入っている、酒米界のサラブレッド的出自を誇る。玄米が大粒で、山田錦と同等かそれ以上の、米粒の重さと、米糠割合の少なさのため、酒造効率が良く、酒造に非常に適している、という評価が高かった幻の品種。現在は、兵庫県のごく一部の生産者だけが栽培している。

 剣山は標高1955mで西日本では2番目の高さ。徳島県の最高峰である。日本百名山の一つに選定され、徳島県では県のシンボルとされている。高い山ではあるが、4月下旬~11月末に運行している「剣山観光登山リフト」を使えば、起点の見ノ越駅(標高1420m)から山頂近くの西島駅(標高1750m)まで楽々移動できる。さまざまな登山コースが整備されており、体力に合った登山が楽しめる山だ。

 そして酒名「写楽」の由来について、ウェブサイト「地酒.COM佐野吾郎の酒蔵訪問記」が説明している。「写楽」はもともとは、この蔵のブランドではなかったのだ。この記事は長いので、以下に要約する。

「宮泉銘醸株式会社は昭和29年に宮森啓治氏が創業した現在で4代続く酒蔵です。創業者の宮森啓治氏は、かつて会津で一番の規模を誇る老舗蔵『花春』の家に生まれますが長男では無かったため分家として独立されました。第二次大戦の企業整備令によって統廃合され使わなくなっていた酒蔵を買い取り、現在の場所で酒造業を始めたというのが創業の経緯です。寫楽(しゃらく)は、廃業した東山酒造という酒蔵が持っていた商標を引き継ぐ形で、平成17年に宮泉銘醸で造りはじめた銘柄。東山酒造も花春から分家した蔵で、商標を引き継ぐなら同じ家の出が良いという事で寫楽を引き継がれたとのことです」

酒蛙

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