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サンゴの危機 温暖化で変わる海に潜る (2回続き) (下)環境の変化伝えるサンゴ 高知、水温急変で一部壊滅 

2021.7.8 15:38 共同通信

 自ら動けないサンゴは各地の環境変化を伝える指標だ。黒潮の運ぶ暖流が当たる高知県沿岸では140種ものサンゴが確認されているが、近年、水温急変で一部が壊滅的な状態になった。

 同県の海岸線は約700キロ。その全域でサンゴの分布を調査する黒潮生物研究所(同県大月町)の目崎拓真所長(42)らと5月、変わりゆく海を巡った。

 土佐湾北部の手結岬(高知県香南市)では、海水温上昇などで1990年代から海藻林が消失。2000年代以降に従来の温帯性のサンゴから、南方系のテーブルサンゴを中心とした生態系に変化した。

 だが17年夏、水温が30度を超す日が続き、サンゴの多くが衰弱した。冬に黒潮が離れると、水温は11度台まで急低下。寒波も襲い、浅瀬のサンゴは一気に死滅した。

 水温急変前の16年に巨大なテーブルサンゴが密生していた場所に潜ると、多くのサンゴは姿を消し、岩肌を覆う扇形の海藻ウミウチワばかりが目立った。海藻の間には手のひらほどの幼いサンゴが根付き始めていたが、目崎さんは「サンゴの海に戻るには10年から20年ほどかかる。このままでは多様な生物が育たない」と顔を曇らせた。

 西部の四万十町の海では、朽ちたサンゴが広がり、廃虚のようだった。魚や貝を育む海藻やサンゴの姿が見えない「海の砂漠化」(目崎さん)が進む。イセエビ漁に関わる地元の海士(あま)は、稚エビのすみかとなってきた藻場やサンゴの代用に、「杉やヒノキの枝を束ねて海に入れるんだ」と嘆く。

 砂漠化の主な原因はサンゴの天敵、オニヒトデだ。目崎さんは「小さなサンゴが根付いても食べられる。生態系のバランスが崩れて戻らない」と話す。オニヒトデは04年ごろ、土佐湾西部の足摺岬で大発生し、分布を広げたという。

 沖合の岩陰では、体が柔らかくオニヒトデは常食しないはずのソフトコーラルを食べている姿も見かけた。「本来好まないが、食べるサンゴもなくなったのだろう」。研究員がハンマーでつぶす。地元のダイビング店と協力し、駆除するダイバーを育てる計画だという。

 一年を通じて水温が安定する南西端の柏島(同県大月町)まで来ると、健全なサンゴが茂っていた。十数年前、サンゴを食べる貝の繁殖と台風でテーブルサンゴが壊滅したが、ダイバーが貝を駆除した効果もあって奇跡的に復活、熱帯系の魚が泳ぎ回っていた。同町西泊では、枝が大きく伸びたサンゴ「スギノキミドリイシ」が段々畑のように100メートル以上も続く。近くの内湾にはシコロサンゴが広範囲に群生していた。

 「気候変動に適応して生き残る種は変わっている。異変は場所ごとに違う。個々の原因を探り、まだ再生できる自然の力があるうちに助けたい」。目崎さんは熱を込めた。(写真と文、共同通信、京極恒太、金子卓渡)

海水温上昇とサンゴの変化

 気象庁によると、世界の海水温は2020年までの100年間に平均0・56度上昇したが、四国・東海沖ではその2倍以上の1・24度高くなり、特に1~3月の冬場は1・46度上昇した。黒潮生物研究所によると、高知県香南市では海水温上昇に伴い南方系のサンゴが確認されるようになり、種類も1931年の16種から78~93年は45種、02年~12年には63種まで増えた。ただその後の高水温や寒波に伴い、スゲミドリイシやサオトメシコロサンゴなど南方系のサンゴは死滅した。

*写真・記事の内容は、2021年5月31日までの取材を基にしたものです。