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あまたのアユ、復活を 再生の取り組み、支援募る

2021.6.4 9:52 共同通信

 水面から飛び出した銀鱗(ぎんりん)がきらりと輝いた。2011年の紀伊半島豪雨をきっかけに、アユが一時激減した和歌山県の日高川で、遡上(そじょう)が最盛期を迎えた。

 穏やかな日差しが降り注ぐ4月上旬。水温が上がる午後4時ごろになると次から次へと30㌢ほどの落差を魚の群れが乗り越えていく。日高川漁協(同県日高川町)の参事前田豊温(まえだ・とよはる)さん(60)は「40年ほど前は年に1千万匹はさかのぼっていたよ」と懐かしそうに話した。

 年々遡上数が減少していたが、紀伊半島豪雨翌年には27万匹まで激減。枯渇していたアユを呼び戻すのに効果があったのが卵を持つ親魚の放流だ。冬場に和歌山県沖で特別採捕された稚魚を飼育し、成熟した状態の個体を11月に産卵に適した下流に放つ。同県沖で捕獲した稚魚のため「遺伝的にも環境に適した個体が生まれる」と前田さんは話す。

 約1㌧を放流すると遡上数が確実に増加することも分かった。昨年は約410万匹が遡上し、日高川は以前の姿を取り戻しつつある。ただ、稚魚の養育には電気代など多額のコストがかかる。同漁協では、20年からクラウドファンディングにヒントを得て、アユの再生プロジェクトの事業費を募り、支援者に加工品を送る取り組みを進めている。

 1年目は事業費の6割近くがまかなえたが、新型コロナウイルス禍が続き漁協の収入も減少している。あまたのアユ復活を。取り組みは始まったばかりだ。(写真と文 共同通信・伊藤暢希)

*写真・記事の内容は、2021年4月28日までの取材を基にしたものです。