メニュー 閉じる メニュー
写真

写真

海藻消え、サンゴ繁殖 変貌する東京湾南の海

2020.8.6 0:00 共同通信

  辺りが北限域という温帯性の枝サンゴは今も生きていたが、かつての豊かな海藻林はもうない。6月中旬、12年前と同じ東京湾南部の千葉県鋸南町沖に再び潜った。温暖化で風景は一変。新たに南方系のテーブルサンゴ、エンタクミドリイシの幼い株が幾つも根付き、共生するサンゴガニの姿も。  

 もともと九州西方の暖かな海に住む南方系のサンゴが暖流に運ばれ、年々北上。移った先の海も暖かくなり生息域が広がっている。入れ替わるように各地で藻場が消えた。変化は速まっている。  

 気象庁によれば、2019年、世界の海面水温は過去最高を記録。日本近海でもこの数年、高い傾向が続く。鋸南沖は深い海底谷が迫り、2年前から続く黒潮大蛇行が水温を押し上げてきた。      

 「近ごろは冬でも15度を切らない」。鋸南で長年、水中案内をしてきたダイバー魚地司郎(うおち・じろう)さん(64)が海藻林の急激な消失を意識したのは15年夏。以前は減っても秋冬に芽が出て回復したが、近年は消えたままだ。

 「海藻が無くなり特産の大きなアワビが死んだ。旬の魚も読めない」と平島孝一郎(ひらしま・こういちろう)(71)同町勝山漁協組合長が嘆く。本来、水温の低い2月が旬のカタクチイワシ、春のサクラダイは今や幻だ。

 海藻が広範囲に消える磯焼けの原因は、28度を超える高水温、さらに秋冬も水温が下がらず食欲が活発になるアイゴやブダイ、ウニのガンガゼによる食害などとされる。

 南方系のサンゴは07年に房総半島では初めて鋸南より南の館山で確認された。魚地さんが鋸南で点在する姿に気付いたのは2、3年前。「成長が早く数も増えた。いつか沖縄や高知のような大群落になるのかな」と危惧する。ただ和歌山・田辺など黒潮離岸で冷水塊が入り、サンゴが減った場所もあり事態は複雑だ。

 サンゴと海藻の分布に詳しい国立環境研究所の熊谷直喜(くまがい・なおき)研究員(44)によれば、エンタクミドリイシは1979年に三重県の紀伊半島で確認された。93年頃に伊豆半島、07年に館山と、約30年かけ350キロ離れた海域まで黒潮が幼生を運び定着。鋸南まで分布域を広げた。

 一方、胞子で増える海藻はあまり移動できず「気候変動の速さに合わせ、生存に適した場所へ移ることができていない」と熊谷さんは分析する。

 最近の全国的な藻場消失は、13年夏の高水温が引き金になったという。福岡、山口で立ち枯れ、弱った海藻を魚が食べ尽くす食害は三浦半島まで及んだ。熊谷さんは藻場からサンゴ群落へ置き換わる原因の7割が魚による食害とみる。「生態系を守るため、海藻を食べてしまう魚は漁獲して食卓に」と気候変動の影響に適応する必要性を訴える。(共同通信写真部・京極恒太、西沢幸恵)

▼ズーム

房総半島の藻場消失 千葉県が2019年3月にまとめた報告では、08年頃まで内房総沿岸部の市町で岩礁一面にアラメ、カジメなど大型海藻類が茂っていた。その後、長期にわたり藻場が消失。17年度の調査では岩礁に対する藻場の割合が、富津市98%、鋸南町34%、南房総市11%、館山市43%と減少。岩礁面積1034ヘクタールに対し藻場面積は448ヘクタールと43%まで半減していた。

*写真・記事の内容は、2020年7月3日までの取材を基にしたものです。